3. 厚生年金から天引きされるもの4つ
厚生年金の平均受給額を見てきましたが、税金や社会保険料などの天引き前、つまり額面となる点にご留意ください。
意外と見落としがちな年金からの天引き。老後の年金にまで税金や社会保険料がかかるなんて…と驚く方も少なくないようです。
老後生活の資金計画は、額面ではなく手取り額をベースに考える必要があります。どのようなものが天引きされるかを理解して、有効なマネープランを立てましょう。
3.1 天引き①:所得税
年金に所得税がかかるときは、年金から天引きされます。
年金の所得税は「雑所得」となります。
公的年金の収入額から社会保険料や、公的年金等控除、基礎控除、その他配偶者控除など該当する控除額を差し引いて課税所得金額を算出します。
たとえば、65歳以上の方で年金受給額が158万円以下であれば、公的年金等控除110万円と基礎控除48万円により、課税所得金額が0円となるため所得税はかかりません。
3.2 天引き②:住民税
65歳以上の方のうち、老齢もしくは退職を理由として受給している年金で、年間の年金額が18万円以上の人が、年金から引かれるものとして住民税が引かれます。
住民税は、所得金額から社会保険料、各種控除額を差し引いた額に、各市町村で定められた住民税の税率をかけて、さらに調整控除額を引きます。そして一律の均等割りを加えて計算します。
3.3 天引き③:介護保険料
40歳から支払っている介護保険料は、老齢年金からも天引きされます。
所得額ごとに段階があり、該当する割合を基準額に乗じて保険料が決定するのですが、所得段階の数や基準額に乗じる割合、その他条件などは市町村ごとに異なります。
お住まいの自治体のホームページや窓口などでご確認ください。
3.4 天引き④:国民健康保険料または後期高齢者医療制度の保険料
65歳以上75歳未満の方は「国民健康保険料」、75歳以上の方は「後期高齢者医療制度の保険料」が天引きされます。
いずれも、老齢、退職、障害または死亡を理由として受給している年金で、年間の年金額が18万円以上の人です。
4. 老後に向けて今からできる準備を
今回は、「厚生年金」の受給額と年金から天引きされるものについて見ていきました。
年金受給額は個人差が大きいことがお分かりいただけたと思います。平均受給額は参考程度に見ていただき、自分の場合はどのくらいの年金を受け取れるのかを把握しましょう。
将来の年金見込額は、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認できます。年金見込額から、どれくらい税金や社会保険料が天引きされるのかを計算して、おおよその手取り額を算出しておきましょう。
いまの生活水準から老後の生活費を想定して、年金収入だけでやりくりできない分は貯蓄や私的年金などで準備しましょう。
また、生活費の不足分だけでなく、突発的にまとまった資金が必要となった時に対応できるようゆとりをもった備えが必要です。
経済面での不安を少しでも減らして、老後を迎えたいものですね。
参考資料
大庭 新太朗