人手が足りているか、足りていないかの重要指標となる有効求人倍率。厚生労働省が発表した9月の有効求人倍率(季節調整値)が前月に引き続き1.5倍を超えるなど、相変わらず人手が足りていないという実感を持たれる人も多いのではないでしょうか。

今回は、求職者を転職先に紹介するヘッドハンターや転職支援会社はどういった報酬体制になっているのかについて見ていきましょう。

ヘッドハンターやコンサルは何をしているのか

ヘッドハンターや転職コンサルという職業を聞いたことがある人は多いでしょう。どのような仕事をしているかといえば、人材を探している会社から「必要としている人材の特徴」と「支払える給与」を提示してもらい、その内容に沿ってふさわしい人物をその企業に紹介するというものです。欲しい人材を採用できたときに、企業はヘッドハンターや転職支援会社に成功報酬を支払います。

では、ヘッドハンターが転職支援で成功した場合、どのくらいの報酬を得られるのでしょうか。2000年代初頭、外資系金融機関に転職した経験のあるA氏は当時の会話を明かします。

「転職の際採用してくれた上司に『ヘッドハンターにいくら払ったの?』と聞いたら、お前の年収の3割だ、と言われました。あの作業で数百万円ももらえるなら割の良い仕事だなと思ったものです」

外資系金融マンが転職するとヘッドハンターはいくらもらえるのか

A氏の感想に対して、ヘッドハンターの業務のある側面しか見ていない、という指摘も当然あるでしょう。一方で、おそらく正しい部分もあるのでしょう。

仮にA氏の当時の上司が言ったように、報酬が3割だとすれば、年収1,500万円の外資系金融マンの転職支援に成功した場合、ヘッドハンターには450万円が支払われることになります。ヘッドハンターが自分のネットワークをもとに数人で転職支援会社を運営しているとすれば、一人当たり年間数人を動かすことができれば十分に食べていけるといえるかもしれません。

とはいえ、そうした案件が頻繁にあるわけでもなく、また採用に関しては、採用したい企業側の予算も景況感に左右されるため、そう容易に強固なビジネスモデルを構築できそうな産業には見えません。そもそも労働集約的でスケールメリットを効かせるのは難しい産業だと言えます。

転職支援会社のビジネスモデルとは

では、実際に転職支援会社がどの程度の成功報酬を手にしているか上場企業の決算をもとに見ていきましょう。

ジェイエイシーリクルートメント(JAC)の2017年12月期第2四半期(4-6月期)の会社資料によれば、1件当たりの平均単価(成約手数料)は217万円とされています。第1四半期(1-3月期)が210万円ですので、順調に拡大していると言えます。

成約単価とともに「成約平均年収が700万」であることも合わせて指摘されています。つまり前出のA氏のコメントのように、同社の場合、転職者の年収の約30%が転職支援会社に支払われていることになるようです。

加えて、同社のコンサルタント一人当たりの月の生産性は、第2四半期が205万円であることも示されています。先ほどの数値をもとに考えれば、コンサルタントは年収700万円程度の人材を月に一人程度転職させているということになります。

労働集約的業界にテクノロジーの波

この状況を「ヘッドハンターやコンサルタントは忙しい」と見るのか、それとも「月に1人程度なのか」と見るのかはそれぞれ考えがあることでしょう。

前出のA氏は「あくまでも個人の意見ですが」と言いつつ、こう話します。

「転職する際のヘッドハンターはいい人でしたが、私の転職を成功させて当時私が就職した会社から数百万円がもらえる仕事かといわれれば、競争がもっとあってもよいと思いますね」

こうした人海戦術的な業界にテクノロジーを持ち込もうとするプレーヤーもいるはずです。最近ではHR-Tech(エイチアールテック)という言葉も生まれ、テクノロジーを上手に活用し、効率的な人事を行いたいという企業も出てきています。

今後、こうした転職支援業界にも人が関わる作業を減らすことでより効率的にしたいと考える人が出てくるかもしれません。

テクノロジー業界に詳しい証券アナリストは次のように言います。

「テクノロジーが狙っているのは高収入人材の転職市場というよりもパートやアルバイトなどといった高頻度の市場ではないでしょうか。市場規模も大きいですし」

人材市場は活況ということもありますが、今後はテクノロジーによる主要プレーヤーの入れ替えもありそうです。引き続き注目の産業と言えそうです。

LIMO編集部