アスクル株式会社(2678)(以下「同社」という)が、2023年5月期連結決算(対象期間:2022年5月21日~2023年5月20日)を発表した。前期比で増収・増益となり、売上高・各段階利益ともに過去最高額を更新した。

具体的数値は、売上高4467億1300万円(前期比+4.2%)、営業利益146億2000万円(前期比+2.2%)、経常利益144億4800万円(前期比+1.3%)、親会社株主に帰属する当期純利益97億8700万円(前期比+6.3%)となった。

同社は「eコマース事業」が売上高の98%を占めるため、セグメント別の分析は行わず、「eコマース事業」のみ記載する。

1. アスクルのeコマース事業

売上高は4371億2000万円(前期比+4.4%)、売上総利益は1066億5000万円(前年同期比+2.2%)となった。同社が2大目標としていた「B to Bの成長カーブを変える」「LOHACOの通期黒字化」がともに達成された。以下、B to BとB to Cに分けて記載する。

1.1 B to B

前期比で258億4300万円増収(前期比+7.4%)となった。
新型コロナウイルス感染症が感染症法上の5類移行となり、抗原検査キット等の新型コロナウイルス感染症関連商材の反動減があった。しかし、生活用品や袋・梱包資材の伸長、OA・PC、文具等の消耗品需要が回復し大幅な増収となった。

1.2 B to C

前期比で74億2100万円減収(前期比▲10.5%)となった。
「LOHACO」については、Yahoo!ショッピングで大幅なキャンペーン変更等があり、売上高については減収となった。一方、販促手法の見直し等により、一箱あたりの売上高(同社は物流費削減のために「一箱あたりの売上高」を指標としている)が増加し、売上総利益率は上昇した。結果として、「LOHACO」は当初目標の黒字化を実現した。

2. アスクルの株主への配当金

同社は、「剰余金の配当に関するお知らせ」も併せて公表し、株主への期末配当金も前期比+2円の18円(以下すべて1株あたり金額とする)と決定した。当該金額は、2023年3月15日に発表した配当予想である16円を上回る。結果、既に実施された中期配当16円との合計で、通期は計34円の配当となる。

出所:アスクル株式会社2023年5月期決算短信〔日本基準〕(連結)

3. アスクルの連結財務諸表分析

出所:アスクル株式会社資料より著者作成

同社の連結財務諸表を、前期比で見ると、「リース」金額の増大が目を引く。
具体的には、連結貸借対照表(連結B/S)でリース資産が前期比+42.9%、リース債務(短期債務+長期債務)が前期比+58.8%となっている。
連結キャッシュ・フロー計算書(連結C/S)では、リース債務の返済による支出は前期比+19.3%であるが、セール・アンド・リースバックによる収入は前期比+772.7%と大幅増となっている。
今後、リース会計については会計基準改正が予定されていることから、注視する必要がある。

参考資料

石川 貴康