100年の歴史を誇る編集部の伝統芸
投稿主の小学館『小学一年生』編集部に取材を申し込んだところ、表紙を担当する編集者の方が「緻密すぎる下書き」の意図とそこに込められた思いを教えてくれました。
担当者の方によると、「子ども向けの雑誌は要素が多いので、立体感が重要です。何が手前にきて、何が奥にあるのか、どこまで隠れていいのか。そうしたことをデザイナーにしっかり伝えるため、毎号細かく作り込んでいます」とのこと。
どこまで緻密にするかのレベルは人によって差があるものの、細部までこだわった詳細な下書きは『小学一年生』をはじめ小学館の学習雑誌に共通する編集部の伝統芸で、代々受け継がれているものだそうです。
ちなみに今回の下書き作成には4~5時間程度かかっているとのこと。おおよそのイメージを固めて、撮影したモデルや付録の配置を決定。そこからトレーシングスコープを使いながら他の細かい要素を書き込んでいくそうです。
下書きは「デザイナーへのお手紙」
デジタルではなく、あえてアナログにしているのにも理由があります。
「デジタルにすると写真を安易な配置に逃げてしまって、重なりをうまく表現できません。下書きは完成形ではなく、あくまでデザイナーの方に対する『お手紙』です。よく見ていただくと枠からはみ出している部分などもあるのですが、これは『大きく見せたい!』というメッセージ。手書きだからこその伝え方です」
気合の入った下書きはデザイナーの方にも刺激になって、「それならこれでどうだ」とより良いものが出てくるそうです。こうした熱量の高いやりとりにとって、100年の歴史を誇る『小学一年生』の表紙が出来上がるというのは、胸にぐっとくるものがありますね。
小学館『小学一年生』編集部のアカウントでは、今年度の下書きと表紙をまとめた動画もアップしているので、気になる方はぜひチェックしてみてください。なお、『小学一年生』の8月号はすでに発売されている(紙:1200円、電子:880円)ので、現物と比較してみるのもおもしろいかもしれません。
参考資料
大蔵 大輔