1.2【厚生年金と国民年金】 繰下げ受給は75歳まで。年金額は増額

一方で、年金受給年齢を66歳以後75歳までの間に繰下げることもできます。

繰下げ受給を選択すると1ヵ月繰下げるごとに0.7%が増額され、最大で84%も増額することが可能です(※)。増額された年金額は、一生涯変わることはありません。

出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」

年金の増額率は、以下の計算式で求めます。

増額率=0.7%×65歳に達した月から繰下げ月の前月までの月数(※)
※昭和27年4月1日以前生まれの方、または平成29年3月31日以前に年金受給権が発生している方は上限年齢が70歳まで

なお、厚生年金の繰下げは国民年金と別々に選択することができます

2. 【年金の受給開始】60歳・65歳・70歳・75歳の何歳からがお得?

前章で解説したように、年金の繰上げ受給をすると5年早く受給開始できる反面、受給額が減額されます。また、年金の繰下げ受給をすると年金額は増額されますが、そもそもの受給開始年齢が遅くなります。

では、どちらがより年金を多く受け取ることができるのでしょうか。さらには、60歳・65歳・70歳・75歳の何歳から受給開始するのがお得なのでしょうか。

もちろん、生活状況や寿命などによって最適な選択は異なりますが、ひとつの目安として、それぞれの年齢で受給開始した場合の年金受取額の合計をシミュレーションしてみましょう。

厚生労働省の「e-ヘルスネット 平均寿命と健康寿命」によると、日本人男性の平均寿命は81.41歳です。そこで、82歳まで生存した場合の年金受給額をシミュレーションしていきます。

また、厚生労働省の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の平均受給額は14万5665円なので、シミュレーションでは14万6000円を受給額として考えます。

2.1【シミュレーション条件】

  • 男性
  • 予定寿命:82歳
  • 年金受給額:月額14万6000円

2.2 5年繰り上げて60歳から受給開始する場合

シミュレーションの男性が60歳から厚生年金を受給開始する場合、5年間(60ヵ月)繰上げ受給をすることになり、減額率は計算式に当てはめると24%となります。

65歳から受け取れる予定の金額から24%が減額となるため、3万5000円が減額され、受給できる金額は月額11万1000円となります。

月額11万1000円なので年額では133万2000円。82歳までの22年間受給すると、合計で2930万4000円受給できる予定です。

2.3 65歳から原則通り年金を受給開始する場合

原則通り65歳から厚生年金を受給開始する場合は、減額も増額もないため月額14万6000円を元に計算します。

月額14万6000円なので年額は175万2000円。82歳までの17年間受給する場合、生涯で受け取る年金の合計額は2978万4000円の予定です。