1. 「川崎重工業(7012)の株価」はSVB(シリコンバレーバンク)破綻などによる欧米の金融不安が波及か
2023年年初来、おおむね落ち着いていた川崎重工業の株価は、3月の金融不安が波及する形で下落したと思われます。川崎重工業には、この時期目立った個別の材料はありませんでした。
2023年3月にはシリコンバレーバンクの破綻やクレディ・スイスの買収が発生しました。シリコンバレーバンクは業績不振を背景に、2023年3月、米連邦預金保険公社(FDIC)がSVBの預金や銀行資産を管理すると発表し、実質的な破綻と見なされました。
また、クレディ・スイスは、アルケゴスの取引において巨額の損失を発生させて以降、業績不振に陥っていましたが、これをUBSが救済に乗り出す形で買収しました。
こうしたヘッドラインを受けて、金融セクターを中心に株が急落。しかし、日経平均も約5.9%下がったように、金融以外のセクターにも幅広く波及しました。川崎重工業についても、市場全体に連れ安する形で下落したと思われます。
2. 「川崎重工業の株価」好業績、増配、円安と複数の好材料で株は急反発か
市場下落の影響が一巡したのちは、川崎重工業の業績や市況に注目が移り、株価は反発したと思われます。
2023年5月10日には2022年度決算が発表されました。受注高・売上収益・当期利益で前期比増収・増益、かつ過去最高を記録するなど、好業績となりました。
セグメント別の業績を見ると、旅客需要の回復が下支えとなった「航空・宇宙システム」や、アウトドア需要に支えられたPS&E(パワースポーツ&エンジン。バイクなどの生産)の業績が顕著に回復。
また2023年度の業績予想では、航空宇宙システムや車両事業の採算改善などが追い風となり、為替の影響を除いたベースではさらなる増益を見込んでいます。
為替ですが、川崎重工業は海外での事業も積極的に展開していることから、円安が業績のプラス要因となります。2023年は4月以降から円安傾向にあることも、同社の株価の下支え材料となっていると考えられます。
加えて、同社は2023年5月10日に好業績と株主への利益還元を理由として増配を発表しました。
元々は1株あたり70円の見通しを示していたところ、2022年度の年間配当を90円に引き上げ。前年実績対比で50円の引き上げとなっています。この増配も株主には好感され、以降の株価上昇の原動力になったと考えられます。