3.【厚生年金】「15万円」あれば老後は安泰なのか?

仮に、男女全体の平均受給額である月額14万3965円、約15万円の年金を受け取れるとしても、安泰・安心とはいえません。

少子高齢化の日本。公的年金の受給額が大幅に引き上げられることは考えづらい状況です。加えて、税や保険料などの負担増、物価高騰など、収入は増えないけれど出費はとてつもないスピードで増えていきます。

公的年金は一つの大切な収入源として考えつつ、貯蓄や私的年金などで別途老後の収入を確保しておく必要があるでしょう。

そのためには、まず、将来もらえる年金額を把握しなければいけません。10年後、20年後、30年後、自分がだいたいどれくらい年金をもらえるのかをベースに、資産形成のプランを立てる必要があるからです。

毎年の誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」や、インターネットで手軽に確認できる「ねんきんネット」などで、将来の年金額をざっくりとイメージしておきましょう。ただし、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できる年金額はあくまで「額面」です。

この額面から税金や保険料などが天引きされ、実際にもらえる金額は減ってしまうのです。

4.【厚生年金】年金から天引きされるもの

天引きされる項目は、受給開始後、毎年6月に郵送される「年金振込通知書」で確認することができます。

出所:日本年金機構「年金振込通知書」

天引きされる金額は居住地や所得によって異なります。ここでは具体例として、東京都八王子市に住む女性(76歳)の例を挙げて何がどれくらい天引きされるのかを見ていきましょう。

4.1【年金からの天引き】その1:「税金」

給与と同じように、年金の場合も、年金額から公的年金等控除や基礎控除、社会保険料などが差し引かれた後の金額に対して税金がかかります。今回の事例では、厚生年金が月額15万円、年間収入は180万円です。各種控除を差し引き計算した結果、年間で所得税4623円、住民税1万6500円が天引きされます。

4.2【年金からの天引き】その2:「介護保険料」

年金年額が18万円以上の場合には、年金から介護保険が強制的に天引きされます。八王子市を例に挙げると、年金収入が180万円の方の介護保険料は年額7万9400円となります。

4.3【年金からの天引き】その3:「健康保険料」

健康保険は、75歳未満は「国民健康保険」、75歳以上は「後期高齢者医療制度」と75歳を堺に変わります。今回の事例の女性は76歳なので、後期高齢者医療制度の保険料が天引きされます。

東京都後期高齢者医療広域連合の所得割率と均等割額を用いて計算すると、保険料は年間約4万8800円です。

5.【厚生年金】額面15万円の場合の手取り額はいくらになるのか

天引きされる税金や保険料を合計すると、年間で約15万円。

180万円-15万円=165万円。額面は15万円だとしても、毎月、税金や保険料で1万2500円が天引きされ、手取り月額は13万8000円となります。

※天引きされる金額は年度途中に決定するため、あくまで概算であり、1年を通して同じ手取り金額になるとは限りません。

6. 年金だけに頼らない資産づくりを目指そう!

厚生年金は手厚いなどといわれていたこともありますが、今回、いまのシニア世代の平均受給額を見てそのように感じた方は少ないでしょう。

厚生年金の年金額は、現役世代の稼ぎと年金加入期間によって決まりますので、「現役世代には関係のない話」ではありません。想像しているより遥かに少ないという方が多いと考えられますので、まずは「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で老後に受け取れる年金額について確認しておきましょう。

また、意外な落とし穴となるのが「天引き」です。年金から税金や保険料が差し引かれることを知らない、あるいはすっかり頭から抜け落ちていたとなれば、老後に手取額が少なく慌てることになるかもしれません。

年金収入だけでは厳しい昨今。年金だけに頼らない資産づくりを、早いうちから取り組んでいきましょう。

参考資料

足立 祐一