会社員や公務員などの方は老後に厚生年金を受給することになりますが、どのくらいの金額が受給できるのか気になるのではないでしょうか。
厚生労働省の「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和3年度における厚生年金の平均受給額は約14万4000円です。
また、総務省の「家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要」によると、65歳以上のひとり世帯の生活費は平均14万3000円かかるとされています。
これらの調査結果から、「ひとりで月15万円以上もらえるかどうか」がひとつの目安になるといえるでしょう。
では、厚生年金をひとりで月15万円以上もらっている方は、厚生年金受給者の何割くらいいるのでしょうか。年金クイズとあわせて詳しく解説します。
1. 【年金クイズ】厚生年金「ひとりで月15万円以上」受給しているのは50%以上?◯か✕か
ではさっそく、年金クイズを出題します。
「厚生年金をひとりで月15万円以上受給しているのは厚生年金受給者の50%以上である。〇か×どちらでしょうか。」
クイズの答えを先に申し上げると、正解は「✕」です。厚生年金をひとりで50%以上受給しているのは46%でした。
では詳しい内容を、厚生労働省の「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」 を元に解説していきます。
厚生年金受給額の金額ごとの受給者の人数と割合を下表にまとめましたのでご覧ください。
上表より、厚生年金を月15万円以上もらっている方の割合は46.07%で、過半数に満たないことがわかります。月15万円以上もらうことは簡単なことではないようです。
なお、最も多い受給額は「10万円以上15万円未満」で30.76%、「15万円以上20万円未満」が次に多く30.61%となっています。厚生年金の平均受給額が14万4000円なので、だいたい一致していますね。
2. 厚生年金の受給額を増やす方法
厚生年金を増やす方法として、まずは「スキルアップして収入を増やすこと」や「退職後も働くこと」があります。
厚生年金の受給額は、現役時代の年収や厚生年金保険への加入期間などによって決まり、一般的に年収が高いほど、また加入期間が長いほど受給額が高額になります。
そのため、資格を取得したり、より給与の高い仕事に転職したり、定年退職後も仕事を続けたりすることで厚生年金受給額アップを目指せます。
しかし、現在の年齢によってはこういった対策をとるのが間に合わないという方もいるでしょう。そのような場合は、厚生年金の「繰下げ受給」をして厚生年金額を増やす方法もあります。
3.【老齢年金】繰下げ受給で月15万以上もらえる?
ではここで、厚生年金の繰下げ受給について詳しく見ていきましょう。
2023年度現在、厚生年金や国民年金の受給開始年齢は原則として65歳からですが、65歳で受給開始せずに66歳以降75歳までの間に繰下げて受給開始することができます。
なお、繰下げ受給は国民年金と厚生年金とで別々に選べるので、たとえば国民年金は65歳から受給開始して厚生年金を70歳から受給開始にすることも可能です。
厚生年金を繰下げ受給すると、1ヵ月繰下げるごとに0.7%が増額され、75歳まで繰下げた場合、最大84%が増額されます。増額された金額は一生涯変わらないというメリットもあります。
この仕組みを活用すれば、厚生年金を月15万円以上もらうことも可能になるでしょう。
【厚生年金の繰下げ受給のシミュレーション】
厚生年金の予定受給額が12万円の方が15万円以上もらえるようにするには、どのくらい繰下げれば良いのでしょうか。
厚生年金が月12万円ということは、年額にすると144万円です。また、月15万円は年額180万円なので、年間36万円(180万円-144万円)を増やせれば月15万円の受給が可能になります。
受給開始年齢を3年(36ヵ月)繰下げると、受給額は25.2%(36ヵ月×0.7%)上乗せされるので、年額は約180万3000円(144万円×1.252)となり月15万円以上を受給できる計算です。
このように、繰下げ受給を利用すると年金の受取開始は遅くなりますが、受給額を増やすことが可能になります。
4. 6月は年金支給月。年金について考えよう
厚生年金を月15万円以上もらっている方の割合は、厚生年金受給者の約46%です。厚生年金の平均受給額が約14万4000円ということもあり、15万円を超えるかどうかはひとつの区切りといえるでしょう。
まだ年金額を増やすための対策がとれる期間が十分にある方は、年収アップや定年後も働き続けることなどで年金額を増やすことが可能です。
一方、受給開始年齢に近くなっている方は、繰下げ受給を選ぶことで受給額を増やすことが可能です。
年金は老後の生活費を支える大切なものなので、受給額を増やせる方法を検討してみるといいでしょう。
年金支給月の6月に年金について考えてみてくださいね。
参考資料
木内 菜穂子