自転車もシェアする時代に

最近、1台の自転車を共同で利用するシェア自転車に関するニュースを目にする機会が増えています。

2017年8月9日、中国の「ofo(オッフォ)」がソフトバンク コマース&サービスと協業し、シェア自転車事業を日本で展開することに基本合意したと発表しました。また、8月23日には、オッフォの競合である中国の「モバイク」が札幌で事業を開始したことが報じられています。

一方、中国勢の日本進出の動きに対抗するように、9月7日にメルカリが2018年初頭のサービス開始を目指し、オンデマンドシェアサイクル事業「メルチャリ」の検討を開始したこと発表。その翌日の8日には、DMM.comが「DMM sharebike(仮)」の検討を始めたと発表しています。

民泊の「Airbnb」、ライドシェアの「Uber」など、インターネットを使うことで所有する個人によってだけ使われていた資産(部屋、自動車など)が多くの人に共有(シェア)され、活用されるシェアリングエコノミー関連のサービスが増えていますが、この動きが自転車にも及んできたというわけです。

東京では赤い自転車の「自転車シェアリング広域実験」が展開中

ここにきて急速に注目を集めているシェア自転車ですが、日本でも自治体が中心となり、NTTドコモの子会社であるドコモ・バイクシェアのシステムとブリヂストン製の電動アシスト自転車を使い、2010年ごろから「コミュニティサイクル」、「シェアサイクル」といった名称で展開が始まっています。

東京都内では、2016年から東京都内7区(千代田、中央、港、新宿、文京、江東、渋谷)が連携した自転車シェアリングの広域実験が行われており、区をまたいで利用できる利便性が評価され人気が高まっています。

ちなみに、このサービスを使うための要領は以下の通りです。

  • ブラウザを立ち上げ、自転車シェアリングのホームページを開き、事前に登録したIDとパスワードを入力してログイン。
  • 現在、自分がいる「区」と「置き場」を選び、利用する予定の自転車と同じ番号をタッチする。
  • 「貸出手続き完了」というメールがスマホに届き、そこにある4桁のパスコードをシェア自転車に備わっているテンキーに入力すると自転車が解錠される。

この間は約1分程度であり、個人差はあるかもしれませんが、それほど手間のかかる作業には感じられません。

また、余談ですが、この自転車に搭載されている電子錠、GPSや通信機能等からなる「端末機(サイクル シェア アタッチメント)」の製造メーカーはOKI(6703)です。

このため、この実験が成功し、さらに大規模に事業が展開されることになれば、システムを提供するNTTドコモ(9437)や電動自転車を製造するブリヂストン(5108)ともに、OKIも恩恵を受けられると期待されます。

外来種は利用者にとって脅威なのか

今年の夏には、ヒアリという外来種の日本への上陸が話題となりました。生物の世界とは異なりますが、上述の中国大手の参入が、今後、日本のシェア自転車の”生態系”にどのような影響を及ぼすのかが気になるところです。

周知の通り、モバイクの大株主は中国ネット大手のテンセントやシャープの買収でも有名なホンハイです。モバイクはこうした大企業の資金力や、車体にあるQRコードを読み取って開錠するだけで利用できるなどの手軽さを背景に、急速に事業を拡大しています。

既に中国本土での会員は1億人を超え、日本以外にも、シンガポール、英国、イタリアなどで運用を開始。日本でのサービス開始からはまだ間がないので、モバイクがどれだけの脅威となるのか、また、それに続くオッフォがどの程度、競争力のあるサービスを提供してくるか、現時点で正確に予測することは困難です。

ただ、これから実験を終え商用化段階に向かおうとしているドコモ・バイクシェアのシステムをベースとした国内のサービス事業者との競争が激化していくことは想定されます。

また、こうしたサービスがあまりにも急速に普及してしまうと、新車の自転車が売れなくなる、マナー違反の利用者が増えるといった、シェアリングエコノミーの負の側面が表れてくるかもしれません。

とはいえ、参入企業の増加は、利用者にとっては選択の余地が広まることになります。また、競争が促されることによりサービス事業者が顧客満足のために切磋琢磨することが期待されるため、当面は大いに歓迎すべき動きと考えてよいのではないでしょうか。少なくとも、ヒアリのような招かれざる客ではないことだけは確かだと思います。

LIMO編集部