9月21日、東京・大手町で「ICOによる資金調達の可能性と課題」と題したイベントが開催された(主催:FINOLAB)。仮想通貨取引所を運営するテックビューロ代表取締役の朝山貴生氏がICOの概要と同社の仮想通貨を使った資金調達用ICOソリューション「COMSA(コムサ)」の概要について講演した。

ICOとは何か?

ICO(Initial Coin Offering)とは、企業などが「電子トークン」を発行し、売り出すことで資金を調達するための手法だ。ただし株式と違って企業から販売と引き換えに購入者に譲渡するものはない。そのため、資金調達というよりは購入型クラウドファンディングの概念に近いともいえる。

ちなみにテックビューロの「COMSA」は、このトークンの発行から、同社が運営する仮想通貨取引所「Zaif」での上場、プライベート・ブロックチェーン環境構築ソフトウェア「mijin」による内部勘定の構築までをワンストップで利用できる仕組みだ。

ICOを取り巻く環境とは

講演の冒頭、朝山氏は「あまり議論されていないが、ICOはブロックチェーン技術により管理されるデジタルアセット(トークン)の特徴である『希少性、信頼性』という点を抜きには話ができない」と説明。仮想通貨だけではなく、既存の金融では実現できなかった新しい価値による経済圏が作られていく可能性と、ICOはそこで成長している新しい資金調達の手法であることを解説した。

ICOに際し発行されるトークンの購入に使われるのはビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨だ。2008年に仮想通貨が登場して以来、その時価総額は、長らく非常に緩やかな上昇カーブを描いてきた。潮目が変わったのは、この数カ月のことだ。8年かけて時価総額3兆円に到達した時価総額は今春以降、わずかな期間で一気に数倍まで膨らんだ。

「これは単に仮想通貨の人気だけではない」。朝山氏が注目するのはICOの広がりだ。

「金融商品寄りの物だけでなく、土地・建物やエネルギーなどをデジタルアセットに変換し、自由流通させる文化がすでに始まっている。一般的な投機目的の人から見たときには、それが単に仮想通貨に映り、世界中の取引所で取引されているということだ」(朝山氏)。

実際にICOによる資金調達額は2016年に100億円程度だったものが2017年の現時点ですでに2,000億円を超えているという。

世界から期待を集めるICOの「ジャパンクオリティ」

一方、ICOはその名称から「IPO(新規株式公開)の仮想通貨バージョン」、「誰でも簡単に資金調達できる」といったことも言われがちだが、これを朝山氏は明確に否定する。

「ICOはIPOと同じ目線で扱われがちだが、まったく違う。IPOは自社の株式と引き換えて資本として計上するものであり、上場するとなると厳しいコンプライアンスに従ってやっていくことになる。それに対して、ICOはトークンを販売して売上として計上する方式だ。(比較対象としては)販売型のクラウドファンディングに近い。

簡単にお金になる、誰でもできるなど、非常に敷居が低いように甘く見られている面もあるが、ICOには向くビジネスと向かないビジネスがある。ベンチャーや中小企業にも向かない」(朝山氏)。

また、一部に詐欺的な案件もあることからICOは「色物」としても見られがちでもある。ただし、これについても朝山氏は解決の糸口を見出している。そのひとつがコミュニティの組成だ。COMSAでも重点を置いているという。「コミュニティの育成なしにはICOの成功はない」(朝山氏)。

「我々のソリューションはトークンを設計し、場を与え、不整合や不正もなく、実用化までのステップをすべて請け負うものだ。ICOの8割はコミュニティが左右する。当社は4か国語で時差を利用して24時間毎日ICOのIR活動を行っている。COMSAの肝だ。これがなければ炎上、誤解、ネガティブキャンペーン、詐欺などで食いつぶされてしまう」(朝山氏)。

なお、ICOにふさわしい案件かどうかをコミュニティ自体が判断する「投票機能」もCOMSAには搭載するということだ。

COMSA自体のICOにも注目が集まる

そのCOMSAにおけるICO第1号案件は、ほかならぬCOMSAが行う。10月2日からトークンセールスを開始するが、2017年9月21日までに世界から17.6万人の購入希望者があったという。これまでにない規模だ。「このコミュニティがそのまま我々の引受するICOのトークン購入口にもなる」と朝山氏。朝山氏はここまでの広がりを見せた理由の一つは世界的にもジャパンクオリティが求められているからだとし「実経済に根差しており、信用できる案件のみを請け負うことにしている」と述べた。

LIMO編集部