明暗が分かれたカラオケ4社

カラオケは”日本の文化”とも言われるほど広く社会に普及した娯楽ですが、最近のカラオケ関連企業の決算を見ると、大きな業績格差があることに驚かされます。

好調組の筆頭は「まねきねこ」で有名なコシダカホールディングス(2157)です。

同社が7月5日に発表した2017年8月期第3四半期累計決算(2016年9月~2017年5月)は、売上高が前年同期比+10%増、営業利益が同+34%増と、大幅な増収増益となる好決算でした。また、同社は決算発表と同時に、カラオケ事業の好調を理由に2017年8月期通期業績の上方修正を発表しています。

業務用通信カラオケ「DAM」で業界首位を確保し、「ビッグエコー」のブランド名で直営店を展開する第一興商(7458)も好調です。8月7日に発表した2018年3月期第1四半期決算(4~6月期)も、売上高が同+1%増、営業利益が同+26%増と、増収増益を確保していました。

一方、2016年にカラオケ店の大量閉店を行ったシダックス(4837)は、厳しい状態が続いています。8月4日に発表した2018年3月期第1四半期決算は、売上高が同▲4%減、営業利益は▲6億円の赤字(前年同期は▲5億円の赤字)で、赤字継続となっていました。

なお、同社は外食産業、学校給食や企業食堂の給食などを展開する多角化企業ですが、カラオケ事業が含まれる「レストランカラオケ事業」に限ってみても、売上高は同▲21%減、セグメント損失は▲7億円の赤字(前年同期は▲6億円の赤字)と苦戦しています。

また、首都圏で「カラオケの鉄人」を運営している鉄人化計画(2404)も苦戦中です。7月14日に発表した2017年8月期第3四半期累計決算(2016年9月~2017年5月)は、売上高が同▲3%減、営業利益が▲4,000万円の赤字(前年同期は1.4億円の黒字)と赤字転落になりました。ちなみに、同社は8月3日に業績悪化を受けて社長交代を発表しています。

株価パフォーマンスにも大きな開きが

このように、各社の業績には相当な格差がありますが、株価パフォーマンスにも大きな違いが見られます。2017年9月27日終値から見た過去1年間の騰落率は以下の通りです。

  • コシダカホールディングス:+93%上昇
  • 第一興商:+26%上昇
  • シダックス:+5%上昇
  • 鉄人化計画:▲5%下落

日本のカラオケ市場はどうなっている?

ところで、日本のカラオケ市場全体はどのようになっているのでしょうか。

まず、カラオケを利用する人数の推移ですが、全国カラオケ事業者協会(JKA)の『カラオケ白書』によると、20年前の1997年の5,630万人に対して、2016年は4,720万人と大きく減少しています。ただし、ボトムは2011年の4,640万人で、その後は増加に転じ2013年からは4,700万人台を維持しています。

同様に、カラオケルーム数も1997年の16.1万室に対して、2016年は13.3万室まで減少していますが、2011年の12.8万室をボトムに底打ちに転じ、2012年以降は13万室台で推移しています。

このように、大量の店舗閉鎖などのニュースから、さぞかし市場は大きく衰退していると見られがちですが、実際には過去5年間のカラオケ市場は意外に堅調であったということになります。

今後の注目点

通信カラオケの普及でカラオケボックスが大きく成長した90年代には「国民的娯楽」と言われたカラオケ市場も、現在は高成長とは言えず、いわゆる成熟市場となっています。とはいえ、カラオケボックスの市場規模はおよそ4,000億円と言われており、決して小さな市場ではありません。

また、コシダカホールディングスのように、ひとりカラオケ専門店 「ワンカラ」や、高校生にフォーカスした室料0円の「ZEROカラ」、シニアを中心とした室料30分10円の「朝うた」など、特定の顧客層や時間帯に照準をあてた独自のカラオケ事業を展開することで好業績を確保している企業もあります。

つまり、「カラオケは飲み会の2次会」という固定観念を捨て、新しいアイデアを取り込むことができれば、なお成長の余地がある市場ということになります。このため、現在苦戦中の企業も含め、カラオケ各社の取り組みには今後も注目していきたいと思います。

LIMO編集部