10月2日は「豆腐の日」
10月2日は「豆腐の日」です。これは、日本豆腐協会が1993年に制定したものですが、お察しの通り、「とう(10)ふ(2)」の語呂合せに由来しています。現在、豆腐の日にちなんだ大々的なキャンペーン等は行われていないようですが、代表的な健康食である豆腐を見直してもらおうという意図があると考えられます。
豆腐は大豆を食べやすくした生鮮加工食品
豆腐は、原料である大豆を加水しながら磨砕し、加熱沸騰後に分離した豆乳に凝固剤を入れ、それを固めてつくられるものです。なお、凝固剤にはいくつか種類がありますが、最も知られているのが、海水からとれる塩化マグネシウムを主成分とする食品添加物である「にがり」でしょう。
また、最近では、腸内でビフィズス菌を増やす作用のある有機酸で「特定保健用食品に関与する成分」として登録されているグルコン酸を用いたグルコン酸凝固も広く浸透してきました。いずれにせよ、豆腐を簡単に言うと、豆乳を固めた生鮮加工食品、あるいは、大豆を食べやすくした生鮮加工食品となります。
「もめん豆腐」と「きぬごし豆腐」
また、豆腐にもいくつかの種類がありますが、最も知られているのが「もめん豆腐」と「きぬごし豆腐」です。作り方の違いは省略しますが、前述したように凝固剤を入れて固めるという原理は同じです。
ただ、きぬごし豆腐のほうが濃厚な豆乳を用い、なおかつ、水分を多く含んでいるため、若干ですが水溶性の栄養分(ビタミンB1やB2など)が多いようです。その一方で、もめん豆腐に比べてたんぱく質の割合は低くなっています。
豆腐は日本を代表する健康食品、特に女性には必要不可欠?
豆腐は、日本が世界に誇る代表的な健康食品です。豆腐は植物性たんぱく質や植物性脂肪を多く有し、消化吸収率が高いため胃腸への負担が小さいという特徴があります。また、豆腐が持つ効能は、コレステロールを低下させるため成人病の予防や治療にも適しています。
さらに、女性の美容にも効果的であることが知られており、とりわけ最近は豆腐がもつイソフラボンにより、女性ホルモンが低下した更年期の女性の骨粗しょう症を予防する効果があることも判明しています。
参考:日本豆腐協会「豆腐と健康」
海外移籍したサッカー選手もコンディション維持に食する
先日、テレビのスポーツ番組において、ドイツのブンデスリーガに移籍した著名サッカー選手の日常生活が放映されていました。一般的にドイツは肉料理が中心です。そのサッカー選手はほぼ毎日、市内の日本食レストランで食事をするようですが、必ず食べるのが冷奴や湯豆腐などの豆腐料理ということでした。
“豆腐を食べているおかげでコンディションを維持できる。日本にいる時は意識していなかった”というような話をしていたのが印象的でした。
このように、豆腐はニーズの高い健康食品ですから、豆腐業界も好調のような印象があります。しかし、実際は少し様相が違うようです。
増加する豆腐の消費量の一方で、大幅減少が続く支出金額
総務省が公表する「家計調査(注:二人以上世帯)」によると、年間の豆腐の消費量は2001年から2015年までの15年間で約+10%強増加しています。しかし、消費支出(金額ベース、単身世帯含む)は2000年から2016年までの17年間で▲26%の大幅減となっているのです。
調査対象が一致しないため一概に単純比較できませんが、豆腐の販売価格が大きく低下していることが見て取れます。実際、二人以上世帯のみを対象とした豆腐の単価は、2001年から2015年までに最大▲30%弱の下落となっているのです。
豆腐価格下落の最大要因は、輸入大豆に対する高い依存度
この最大の要因は、原料である大豆の約88%を輸入に頼っていることです。まず、この約20年の間、8割以上を占める北米産大豆(米国とカナダ)が豊作でした。また、円高の時期が長く続いたため、輸入価格が下落したことも見逃せません。さらに、徐々にではありますが、安価な中国産大豆の比率が高まってきたことも一因と見られます。
それでも、原材料である大豆価格が下がるのは、豆腐業界にとっても恩恵が大きいはずです。
米国の遺伝子組換え大豆の生産急増で、原料価格高騰が始まった
しかし、この大豆価格が上昇する可能性が高まっており、一部は既に上昇していると見られます。その最大の理由は、米国の大豆生産が「遺伝子組換え大豆」にシフトしていることです。
現在、日本が輸入する大豆は全て「非遺伝子組換え大豆」ですが、この非遺伝子大豆の生産比率は10%程度に低下していると言われており、その結果、非遺伝子組換え大豆の価格が高騰している模様です。
既に、豆腐の小売価格には上昇の兆候が表れています。日本の消費者の多くは、遺伝子組換え食品に大きな懸念を持っていると見られ、広く受け入れられるには相当長い時間を要するでしょう。
今後は豆腐の小売価格も高騰する可能性も
いくら健康効果抜群の豆腐とはいえ、小売価格を値上げするのには限界があるでしょう。スーパーなどで買い物をする主婦の視線は厳しく、一度下がった価格を元に戻すのは難しいのが現状です。
この影響を大きく受けているのが、昔の商店街には必ず1店はあった“豆腐屋さん”です。もちろん、スーパーマーケットの進出による影響もありますが、豆腐商店の経営はかなり厳しく、実際、全国の豆腐業者が10年間で3分の2に減ったという報道もあるくらいです。
「豆腐の日」に、豆腐の健康効果だけでなく、こうした豆腐業界の現状について考えてみるのもいいのではないでしょうか。
LIMO編集部