先週の20日に経済協力開発機構(OECD)が最新の世界経済見通しを発表しました。そこで今回は、最近の見通しを参考にしながら、投資対象として魅力的な国や投資する際のリスク要因などを探ってみました。
世界経済は騰勢を拡大、ユーロ圏がけん引
OECDが9月20日に公表した最新の「世界経済見通し」によると、世界経済の成長率予想は2017年が3.5%と前回6月の見通しから据え置き、2018年は3.7%と0.1ポイント上方修正されました。
2016年の3.1%から大きく上昇し、来年はさらに成長が加速する見通しとなっています。OECDは世界経済の拡大は勢いを増しており、全世界が同じ方向に向かいつつあると指摘しています。
中でも予想外の好調さ見せているのがユーロ圏経済です。中心国ドイツのGDP成長率は2017年が2.2%で0.3ポイント、2018年が2.1%で0.1ポイントそれぞれ上方修正されており、2017年の成長率は米国をしのぐ勢いです。
また、フランスは2017年が1.7%で0.4ポイント、2018年が1.6%で0.1ポイントの上方修正、イタリアは2017年が1.4%、2018年が1.2%でともに0.4ポイント上方修正されています。
ユーロ圏全体では2017年が2.1%、2018年は1.9%の成長が見込まれており、1%程度と考えられている潜在成長率に比べ、ほぼ2倍のスピードで景気が拡大しています。
仏大統領選挙、独総選挙を通過したことで政治リスクも後退しており、倍速で拡大を続けているユーロ圏は現在最も魅力的な投資先と言えそうです。
ただ、欧州中央銀行(ECB)が10月の理事会でテーパリング(量的緩和の縮小)を決定し、来年1月から実施される見通しで、この動きを先取りしてユーロ高が進行していることが懸念されています。
米国は先行きに不透明感、日本は選挙リスクを警戒
その他の先進国に目を移すと、米国の2017年のGDP成長率は2.1%と、さえない数字が見込まれています。
2018年は2.4%とまずまずの数字となっていますが、OECDは拡張的な財政政策や規制緩和がどの程度成長を押し上げるのかは不明としており、先行きに対する不透明感は否めない模様です。
日本の成長率見通しは2017年が1.6%、2018年が1.2%で、ともに0.2ポイントずつ上方修正されていますので、相対的な投資魅力は高いと言えそうです。
ただし、10月に総選挙を控えており、選挙結果が出るまでは投資は手控えたほうが無難かもしれません。今回の選挙では消費税の引き上げが争点となる可能性があり、増税凍結の可否を問う展開となった場合には与党には厳しい戦いとなりそうです。
EU離脱の影響が懸念されている英国は2017年が1.6%、2018年が1.0%と低空飛行からさらに減速する見通しとなっており、投資魅力は乏しいでしょう。
カナダは2017年が3.2%、2018年は2.3%と底堅い成長が見込まれていますが、景気の過熱を防ぐ目的で既に利上げモードに突入していること、また米国から北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しを迫られていることがリスクとなりそうです。
新興国ではブラジルに妙味、インドはGSTで混乱中
新興国に目を向けると、中国の成長率予想は2017年が6.8%、2018年が6.6%と、ともに0.2ポイント上方修正されています。成長鈍化が見込まれていた中で、やや予想外の健闘をみせています。
ただし、10月に党大会を控えて、高成長が演出されている可能性も否めないところです。
また、政治サイクル的な循環により、年後半から来年にかけて一時的に成長が鈍化する恐れがありますので、政治イベントの通過を待ってその後の状況を確認する必要があるのかもしれません。
インドは2017年が6.7%で0.6ポイント、2018年が7.2%で0.5ポイントの下方修正となっています。財・サービス税(GST)導入による混乱で消費が落ち込んでいることが背景にあります。
OECDはGSTの導入は長期的には経済成長を高めると指摘していますので、混乱の収拾を待って投資機会をうかがうのが得策となりそうです。
ブラジルは2017年が0.6%と0.1ポイントの下方修正、2018年は1.6%で据え置きとなっています。地味な回復となっていますが、3年ぶりにプラス成長を回復し、長いトンネルから抜け出したばかりですので、今後に期待したいとこです。
インフレ率の低下が金融緩和を可能にし、消費意欲の回復を後押ししていることが明るい材料です。一方、OECDは中長期的な景気拡大には年金改革を含む構造改革により財政の持続性を確保することが肝要と指摘しています。
LIMO編集部