今後の医療保険制度改革の方向

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高齢者増加による保険給付費の増加や、出産育児一時金の増額(2023年4月から50万円)などで、健康保険の財政は厳しくなることが予想されます。

各健保組合では従業員の健康管理を徹底したり、ジェネリック医薬品の利用を推奨したりして保険給付の削減に取り組んでいますが、健康保険の財政を維持するには国の「医療保険制度改革」が必要です。

主な制度見直しの方向は次の通りです。

  • 後期高齢者医療制度が出産育児一時金の費用の一部を負担(現在は負担なし)
  • 後期高齢者医療における高齢者の保険料負担割合見直し(高齢者の保険料アップ)
  • 前期高齢者納付金の負担見直し

前期高齢者納付金の負担見直しとは、報酬水準の高い健保組合の負担を増やし、報酬水準の低い健保組合の負担を軽減するものです。

財政状況によっては保険料率の引き上げや健保組合の解散も

医療保険制度改革や各健保組合の取り組みによって健保組合の財政改善を行っても、経常赤字が続いたり赤字幅が大きくなれば、保険料率の引き上げは避けられません。

従業員の健康保険料がアップするとともに、企業の負担も増えます。

また、主に大企業が加入する健保組合と中小企業が加入する「協会けんぽ」の保険料率を比較すると、健保組合の方が低いのが一般的です。

しかし、健保組合の保険料率が高くなり協会けんぽを上回るようになると、健保組合を解散して協会けんぽに加入する企業もあるでしょう。

今後の健康保険

健保組合の約8割は赤字で、2023年度は健保組合全体で▲5623億円と過去最大の赤字となる見通しです。

赤字が増えた主な原因は、高齢者医療への財政支援が増えたことです。

財政支援額は健保組合の支出の4割を占め、今後とも大きな負担が見込まれます。

国の医療保険制度改革や各健保組合の取り組みによる健保組合の財政改善が期待されますが、状況次第で健康保険料がアップしたり健保組合が解散になる可能性もあります。

参考資料

西岡 秀泰