最近、自宅のインターネットが遅いと感じたことはありませんか?その原因、実は安価なWi-Fiルーターかもしれません。現在は家庭内で使用するデバイスが増えてきており、従来のルーターでは性能が足りなくなってきている可能性があります。

筆者は自宅の通信デバイスが増加したことを受けて、ルーターを「Orbi WiFi 6E」に変えたところ、速度や通信状態が劇的に改善しました。良質な接続に必要な最低限の投資はいくらか、これまでに検証を重ねてきたプロの視点から考察してみます。

【Wi-Fiルーターの新常識】安いルーターは同時接続デバイス数が不足

電波の種類やスペックも重要ですが、最大の問題は同時接続できるデバイス数です。7000円~1万円のルーターでは、おおよそ10台前後しか接続できません。「一人暮らしであれば、10台接続できれば十分だろう」と思うかもしれませんが、それは大きな誤解です。

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現在、タブレットやプリンター、スマート家電など、あらゆるデバイスがインターネットに接続し始めています。その結果、10台程度の接続では余裕をもった通信ができないんです。接続可能なデバイス数を超えてしまうと、使用していないデバイスから接続が切れるなど、通信が不安定になります。

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【Wi-Fiルーターの新常識】信頼性が高いのはNETGEARとNEC

BUFFALO、IO DATA、TP-Link、エレコム、ASUSなどさまざまなメーカーのルーターを試してきましたが、個人的に「数年にわたって安定して高速な通信をしてくれる」というイメージをもったのが、NETGEARとNECのルーターです。

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NETGEAR製はやや業務用寄りで、NECは一般家庭寄りですが、ともにハイスペックなものも用意されています。

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筆者の試した範囲では、他のメーカーは1年を超えると通信が不安定になってくるなど、耐久性に疑問がありました。ルーターは常に通電して電波を発しながら大量のデータを処理するので、耐久性は重要な要素です。通信機器が少なかった時代の「ルーターには1万円程度かければ良い」という常識は覆ったように思います。

現在では一般家庭で3~5万円、機器が多めな戸建てやSOHO兼用住宅では10~20万円程度ルーターに投資するのが「同時接続台数など通信スペック」と「長期間安定して使える耐久性」そして「今後の高速化に対応できる」という3点から見て最適だと言えそうです。

【Wi-Fiルーターの新常識】Orbi WiFi 6Eにした結果、最大4倍高速に

筆者の自宅は常に50台以上のデバイスが接続され、かつ自宅がコンクリートや鏡に囲まれているという特殊環境だったのでNETGEARのハイエンド機種に入れ替えました。

筆者撮影

親機とサテライトの3台セットで27万5400円とかなり高額ですが、前述した通り環境によってはこのくらいの投資が必要だと意識を改める必要があります。ルーターは1万円程度、という常識は過去のものです。

以前もNETGEAR製のルーター(4万円程度)を使っていましたが、コンクリートや鏡が多いと電波が飛ばない場所ができてしまいます。一方、今回導入した機器はメッシュWi-Fiなので安定性がダントツ。中継機での拡張と違い、近くの電波を自動で拾ってくれるので常に強い電波で通信できます。死角があった自宅環境も満遍なく通信ができるようになりました。

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速度改善もめざましいものでした。宅内の通信は約2.7倍になり、数百ギガの動画ファイルを無線で安定して保存できるようになりました。また、Orbi WiFi 6Eは10Gインターネットに対応しているので、これを機にフレッツ光クロス10Gに契約も変更。こちらは今までのなんと4倍程度高速になりました。

筆者撮影

筆者撮影

さらにOrbi WiFi 6Eはこれまでの2.4GHz、5GHzとは違う6GHz帯の通信にも対応しています。高速通信が可能な5GHz帯ですが、実は航空/気象レーダー波を感知すると干渉を回避する仕組みが働き、不安定になっていました。6GHz帯なら完全にインターネット用に確保された帯域なので干渉を避けられると同時に帯域幅も広く高速通信ができます。

iPhoneやMac、そのほかの機器では今後のアップデートでこの6GHz帯が使えるようになるので、さらなる高速・安定通信が期待できます。こうしたスペック的余裕も考慮してルーターを選ぶと投資しただけのリターンを長く得られるのでおすすめです。

【Wi-Fiルーターの新常識】最低でも3万円程度のルーターを

10Gインターネットや6GHz帯に対応している1万円台のルーターもたしかに存在します。ただ、これらは同時接続台数が足りなかったり、部品強度が十分でなかったりするケースが多いです。

価格が安いということは、どこかでコストを削っているわけで、こうした影響はアンテナなど部品の品質に出てきます。同じWi-Fi 6E対応のルーターでもアンテナの品質が悪ければ当然速度が出なかったり不安定になったりするのでおすすめできません。

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当たり前に20台程度のデバイスが常時ネット接続されるようになった現在、一般家庭でも3万円程度、同時接続台数30台以上のものを選ぶのが長く快適な通信を期待できる新常識になりつつあります。恩恵がわかりづらいだけに高額投資しづらいとは思いますが、通信は血液のようなもの。スペックだけに惑わされずに品質に投資したいものです。

参考資料

木村 ヒデノリ