近年、女子学生の多くが正社員やスキルを取得できる職を希望している傾向にあると見受けられるでしょう。
たとえば、昭和女子大学の2022年度の就職実績を見てみると、総合職が33%、システムエンジニアが18%となっています。
その一方で、一般事務は17%と全体の2割以下です。
女子大を卒業した女性は企業に一般職の枠に入社することが主流な時代もありましたが、近年では女子大を出た多くの女性が総合職やそれに準ずる雇用形態を求めています。
また、文系の女子大であってもシステムエンジニアなど、長期的に働くことを想定してなのかスキルを取得できる職業が人気です。
とはいえ、現状では正社員でも男女で年収に差があり、女性は男性に比べて年収が低い傾向にあります。
そうした中で、女性が平均以上の年収を見込める職業の一つとして、看護師と薬剤師が挙げられます。
これらの職業は株式会社クラレが2023年4月に小学校に入学する子どもとその親(子ども4000名(男女各2000名)、その親4000名)に行った「将来就きたい職業」「就かせたい職業」で、女の子に就かせたい職業として「1位看護師」と5位「薬剤師」がランクインしています。
本記事では男女における正社員の年収事情などを確認した上で、看護師と薬剤師の平均年収について見ていきましょう。
正社員でも男女で年収差「181万円」
国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査」によると、日本の平均年収は443万円です。
また、同調査によると正社員の平均年収は508万円である一方、正社員(正職員)以外の平均年収は198万円と半分以下となっています。
そして、年収は雇用形態のみならず、性別によっても差があります。
正社員
全体:3588万人・508万円
- 男性:2368万人・570万円
- 女性:1220万人・ 389万円
正社員であれば男女同程度の年収になるとイメージされる方も少なくないと考えられますが、現状としては男女で約180万円の年収差があります。
正社員(正職員)以外
全体:1271万人・198万円
- 男性:429万人・ 267万円
- 女性:843万人・ 162万円
正社員(正職員)以外で働く女性の中には、家事や育児・介護などの合間に短時間働かれている方も含まれます。
そのため、女性が男性よりも平均年収が低いことを一概に問題視することはできません。
中小企業「女性社員」の活躍・定着への約3割に
前述のように正社員であっても男女の平均年収に約181万円もの差が生じている要因として、女性が企業で活躍しにくい、キャリアアップしにくい状況に置かれていることも関係すると考えられます。
エン・ジャパン株式会社が415社の企業の人事担当者を対象に行った調査「400社に聞いた「企業の女性活躍推進」実態調査2021―『人事のミカタ』アンケート―」によると、従業員数301名以上の企業では女性社員の活躍・定着に7割以上が取り組んでいる一方、従業員数301名以下の企業では3割程度の企業しかこの問題に取り組んでいないという結果になりました。
あわせて、企業が女性社員の活躍・定着について課題に感じていることは何か、同調査の結果から見ると企業が女性社員の活躍・定着においてもっとも課題として感じている項目は「社内に女性のロールモデルがいない(少ない)」で43%です。
多くの企業において、女性管理職の割合アップや女性の総合職枠での採用数が増えているのも比較的最近のことでしょう。
そのため、経営層や管理職が自社での女性の飛躍的な活躍を具体的イメージできなかったり、何を手本としてこの問題に取り組めばよいのか分からなかったりという問題もあります。
前述のような事情があれば、女性正社員の平均年収は仕事一筋で働く男性やキャリアアップの機会を優先的に与えられる男性に比べると低くなるのも妥当とも考えられます。
「看護師」と「薬剤師」の平均年収はいくら?
前述のように、一般企業ではまだ女性が男性と対等にキャリアを形成していくことが難しい側面もあります。
一方で、資格職である看護師や薬剤師は、職場において男女の役割分担が基本的に少ないだけでなく、女性も男性正社員の平均年収以上の年収を得ることを期待できます。
以下、厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」より、看護師と薬剤師の平均年収や平均年齢、勤続年数を規模別に確認していきます。
看護師の平均年収・平均年齢・勤続年数
- 10人以上:508万1300円・40.7歳(9.1年)
- 1000人以上:556万100円・36.7歳(9.7年)
- 100-999人:485万2700円・41.9歳(9.0年)
- 10-99人:460万4300円・47.2歳(8.1年)
※年収=「きまって支給する現金給与額」×12+年間賞与その他特別給与額にて算出
看護師の平均年収は400万円台後半から500万円台半ばとなっています。
看護師は女性が多い職業であるため、女性で管理職として働く方も珍しくありません。女性であることが主な理由となって、キャリアアップしにくいといったことは考えにくいでしょう。
ただし、看護師はクリニックや一部の病院を除いて夜勤が必須条件となることを忘れてはなりません。
夜勤のない職場に勤めるのであれば、看護師の平均年収よりも年収は低くなる可能性もあると考えておく必要があります。
薬剤師の平均年収・平均年齢・勤続年数
- 10人以上:583万3900円・41.1歳(9.1年)
- 1000人以上:585万7200円・37.8歳(8.1年)
- 100-999人:581万5600円・44.1歳(10.4年)
- 10-99人:579万3600円・45.8歳(9.9年)
※年収=「きまって支給する現金給与額」×12+年間賞与その他特別給与額にて算出
薬剤師の平均年収は500万円台後半となっており、正社員男性の平均年収を超えています。
薬剤師として働くことができれば、女性でも安定的な収入を得ることが可能です。
また、薬剤師の資格を保有していればパート勤務でも一般的に2000円前後の時給を期待できるため、ライフステージに合わせた働き方も実現しやすいでしょう。
まとめにかえて
勤め先によっては正社員であっても男女で年収の差が出ます。
その理由としては女性管理職の少なさに加えて、男性は女性よりも優先的に昇進につながる業務を任せてもらえる傾向にある場合もあることなどが挙げられるでしょう。
結婚や出産を望んでおらず、仕事一筋で考えている女性であっても、企業文化や企業の慣習などによっては、自分が思い描いているように働けないといった状況に置かれることもないとは言い切れません。
一方で、看護師や薬剤師は女性であっても男性正社員の平均年収程度、もしくはそれ以上の年収を見込みやすいだけではなく、女性であることが職場でネックになることは基本的にないでしょう。
また、夫の転勤などを理由に引っ越しをした場合でも、資格を活かして新しい土地で働くこともできます。
ただし、これらの職業は一つ一つの業務において責任が重大であることはもちろん、資格を得るまでにかなりの勉強時間や高額な学費などが必要になります。
また、職業に関しては適性ややりがいといった部分も関係してくるでしょう。総合的にみて、自身に合った職業選択をすることが大切です。
参考資料
- 昭和女子大学「就職・進学」
- PRTIMES「2023年版 新小学1年生の「将来就きたい職業」、親の「就かせたい職業」 総合1位は「ケーキ屋・パン屋」、2位「警察官」がトップに迫る 」
- 国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査」
- エン・ジャパン株式会社「400社に聞いた「企業の女性活躍推進」実態調査2021―『人事のミカタ』アンケート―」
- 厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」
西田 梨紗