3. 「繰下げ受給」デメリットは3つ

繰下げ受給には「受給額を上げられる」メリットがあるものの、デメリットも存在します。

厚生労働省の「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、実際に繰下げ受給を選択した人はここ数年1%台しかいません。

制度が知られていないため、普及されない繰下げ受給。しっかり理解できるようここでは繰下げ受給の「デメリット」を3つご紹介します。

3.1 税金や保険料もあがる

年金にも所得税や住民税、健康保険料、介護保険料などがかかります。非課税ラインだった方が課税対象になることも十分に考えられます。

場合によっては額面が増えても手取りがあまり増えないことも起こりえます。税金は老後においても意外な落とし穴となるケースがあるので注意が必要です。

3.2 年金受取までは収入確保が必須に

年金の受給を遅らせるのであれば、その間が無収入になってしまいます。貯蓄を切り崩すだけの生活を強いられるのであれば、逆に非効率と言えるでしょう。年金額を増やしても貯蓄が減るのであれば、あまり意味をなしません。

繰下げ受給を選択するには、受給開始まで働くことができる、もしくは不動産収入などの不労所得を得るなど何かしらの収入がある必要があるでしょう。

健康面や家族の介護などにより、働きたくても働けない可能性はゼロではないので、慎重に選択しましょう。

3.3 加給年金が受け取れない

繰下げ受給を選択すると、加給年金が受け取れなくなります。

加給年金とは年金の扶養手当にあたるもので、条件を満たす配偶者や子どもがいる場合に上乗せされる年金のことです。

家族環境によって、加給年金で得られる金額も様々です。この辺りもしっかり検討して選択したほうが良いでしょう。

4. 「年金」以外にも考えておきたい老後のお金

繰下げ受給は年金を増額できるメリットがあるものの、「75歳まで働き続ける」にはさまざまな制約があります。

健康面はもとより、家族環境や就業環境などの制約で必ず希望通りにいくとは限らないでしょう。

老後の備えでは、年金受給額だけでなく「貯蓄」という視点も必要となります。一般的には年金受給額だけで生活していくのは難しいとされています。

「老後2000万円問題」も記憶に新しいと思いますが、老後も30年と言われる時代ですから計画的な準備が必要でしょう。

人によって準備しなければならない金額は様々です。いくら必要になるのかについて、シミュレーションなどを活用して一度じっくり考えておきたいものです。

5. まとめにかえて

今回は年金受給額を上げる方法として「繰下げ受給」を紹介してきました。しかし、繰下げ受給にも色々と制約はありそうです。

また、年金保険料は毎月支払っているものの、残念ながら「年金だけで生活できる」とは言えません。老後対策は「貯蓄」というのがほとんどの人に当てはまる答えかもしれません。

老後を目前に、資産を増やそうと思うとリスクも同等に大きくなってしまいます。老後まで余裕を持って効率よく準備を始めていくよう心がけましょう。

参考資料