2023年5月25日に発表された、アドソル日進株式会社 新・中期経営計画(2023年4月~2026年3月)説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:アドソル日進株式会社 代表取締役会長 兼 CEO 上田富三 氏
アドソル日進株式会社 代表取締役社長 兼 COO 篠﨑俊明 氏

新・中期経営計画(2023年4月~2026年3月)説明会

上田富三氏(以下、上田):アドソル日進株式会社、代表取締役会長兼CEOの上田富三でございます。本日発表いたしました、新・中期経営計画の説明会にご参加を賜り、誠にありがとうございます。

この3年間、当社の事業活動はコロナ禍の影響を受けましたが、この間に中長期的な事業拡大に向けた戦略をしっかりと議論してまいりました。本日は新・中期経営計画として、当社が描く新しい姿を、社長の篠﨑よりご説明します。

篠﨑俊明氏(以下、篠﨑):アドソル日進株式会社、代表取締役社長の篠﨑俊明でございます。初めに「前・中期経営計画」を振り返り、続いて新・中期経営計画についてご説明します。

「前・中期経営計画」の振り返り( 業績・配当 )

「前・中期経営計画」の業績・配当の状況です。業績については、「前・中期経営計画」の初年度である2022年3月期は、コロナ禍に伴う緊急事態宣言などにより、お客さまが予定されていたICT投資の実施判断に、非常に大きな影響が生じました。この影響は、2023年3月期の上期まで継続しました。

一方で、投資、プロジェクト再開の動きも進み、下期以降は回復基調に転じました。その結果、前期の実績は増収増益に転換しました。この流れは今期も継続しています。

配当については、2010年3月期から13期連続で増配を達成することができました。また、前期の期末配当は、コロナ禍においてご支援いただいた株主のみなさまに応えるため、期初計画から1円増配して年間で38円、前期比で2円増配とし、6月の株主総会決議後に実施したいと考えています。

「前・中期経営計画」の振り返り(外部環境・顧客動向と成果)

外部環境や成果、課題認識についてです。繰り返しになりますが、この3年間はコロナ禍により、予定した案件の延期や遅延が発生し、当社の事業も大きな影響を受けました。

一方で、コロナ禍の後を見据えた地盤固めに取り組み、グローバル企業とのアライアンスに加え、エネルギービジネス、ソリューション、産学連携などにおいて、今後につながる成果を出せたと認識しています。

「前・中期経営計画」の振り返り(外部評価等)

その成果の一例として、当社ブランドの向上につながる、社外からの評価も得られました。当社独自のソリューションを起点に、国内プラットフォーマー大手のインターネットイニシアティブ社より「ビジネスイノベーションアワード」をいただきました。

また、エネルギーやオートメーション事業をグローバルに展開するフランスのシュナイダーエレクトリック社からは、サステナビリティへの貢献を評価いただき、世界400社のパートナー企業の中からGlobal Winnerとして認定、表彰されました。

また、DX認定など、サステナビリティにつながる評価もいただいています。

「次なる成長」に向けてのポイント

このように、今後につながる成果を出せた反面、コロナ禍を契機として、一気に進んだDX・デジタル化や「ChatGPT」など、急速に進展する最新テクノロジーへの対応が必要となっています。

また、人的資本などの経営基盤の強化や、企業価値、株主価値のさらなる向上など、今後のさらなる飛躍と持続的な成長を果たすためのポイントや課題も明らかになりました。

市場トレンドやお客さまの動向など、事業環境・経営環境の急速な変化と、このような課題への対応を織り込み、今回、新たな中期経営計画を作成しました。

新・中期経営計画「New Canvas 2026」

新・中期経営計画の「New Canvas 2026」についてご説明します。この新・中期経営計画のポイントは大きく4つあります。まず、業績計画です。この3年間、最高売上、最高利益、最高利益率を毎期更新し、最終年度となる2026年3月期には、売上高150億円、営業利益15億円以上、営業利益率は10パーセント以上を目指します。

次に、株主のみなさまへの還元です。連続増配を堅持し、16期連続の増配を目指します。配当性向は、従来の35パーセントから40パーセントに引き上げます。

そして、2030年を見据えた事業成長ドライバーを「次世代エネルギー」「スマートインフラ/スマートライフ」とし、安定成長を支えるベースロードビジネスとして「エンタープライズ DX/モダナイゼーション」の対応を強化します。

加えて、企業価値・株主価値の向上につながる経営高度化戦略として、投資や人的資本に関する施策に一層取り組んでいきます。

中期事業戦略 フレームワーク(ビジネス領域の進化・拡大、DXソリューションの拡充・強化)

2030年を見据えた当社の中長期的な事業戦略、ポートフォリオについてご説明します。今回の中期計画では、2030年を視野に、サステナブルな社会の実現や人々の暮らしの発展に向け、当社が培ってきた技術や強みをどの領域で、どのように活かし、進化させながら貢献していくかを議論しました。

それをまとめたものが、スライドに記載している戦略フレームワークです。既存のビジネスから、進化・発展させた「エンタープライズ DX/モダナイゼーション」をベースロードに、「次世代エネルギー」「スマートインフラ/スマートライフ」の2つの事業で成長を牽引していきます。

これらの取り組みを通じて、2030年、2050年に向け、官民を挙げて進められているグリーン戦略、デジタル戦略を支え、その先にあるカーボンニュートラルやスマートシティ、そしてサステナブルな社会の実現に貢献していきます。

また、これらの成長事業やベースロードにGIS(地理情報システム)など、当社独自のソリューションや、宇宙・衛星データなどのデジタルデータの利活用の対応を融合させ、ビジネス・レバレッジを高め、成長を加速させていきます。

成長事業①:「次世代エネルギー」 への取り組み

成長事業とベースロードビジネスのポイントをご説明します。まず、次世代エネルギーへの取り組みについてです。エネルギー・インフラ・システムは、発電などの作る領域から始まります。そのエネルギーを送り、売り、そして企業や家庭などで使うという流れで構築・運用されており、当社はこのすべての局面を担っています。

2016年の電力自由化を契機に、電力取引所やメガソーラー、EVなど、新たな電源の活用を加えた「新エネルギーインフラ」が誕生し、「次世代エネルギー・バリューチェーン」が形成されました。それによって、スマートメーターのデータを活用した新たなビジネスの創出や、スマートグリッドなどの中長期にわたる大きな投資テーマが登場しています。

創業以来、エネルギーシステムに取り組む当社だからこそ、これからさらに進化していく「次世代エネルギー領域」でのICTニーズに応え、貢献できると確信しています。

なお、従来型のエネルギーインフラも、システムの更新やDX・デジタル化などをテーマとした投資が継続する見込みです。こちらは、ベースロードとしてしっかりと取り組んでいきます。

成長事業②:「スマートインフラ/ライフ」への取り組み

成長事業の2つ目である「スマートインフラ/スマートライフ」の取り組みについてご説明します。当社は社会インフラ事業において、道路、鉄道、航空、宇宙、防災、そして通信などの社会インフラシステムを、いわゆるB2Bでの提供を通じて、安心・安全な社会の実現に貢献してきました。

一方、先進インダストリー領域では、日本企業が展開する決済・クレジットカード、メディカル・ヘルスケアなど、生活に密接なサービス、システムを提供しています。

社会インフラシステムと生活を豊かにするサービスという、2つの領域で培ったノウハウを融合することで、これからは公共領域を中心としたセーフティタウンや、MaaSなどのスマート交通、都市のレジリエンスや、生活インフラサービスなどのB2B2Cの領域で、「スマートインフラ/スマートライフ」、そしてその先にある「スマートシティ」の実現に貢献していきます。

ベースロード:「エンタープライズDX/モダナイゼーション」への取り組み

次に、成長事業の基盤となるベースロード事業である「エンタープライズ DX/モダナイゼーション」についてご説明します。ポイントはデータです。

事業活動で日々生み出されるさまざまなデータを収集、分析し、経営課題の解決やビジネス変革に活用したいという、お客さまのニーズが非常に多くあります。一方、データ収集や可視化の面で、まだ多くの課題もあります。

当社は創業以来、IoTによるデータ収集から、可視化・分析まで、ワンストップで対応する技術力とノウハウを培ってきました。これに、当社オリジナルソリューションやAIなどの最新テクノロジー、そしてアライアンスによるシナジーを加え、一歩先を行く高付加価値のDXシステムを提供します。

また、より効果的なDXを実現するためには、コンサルティングやシステムの上流設計が重要となってきます。この対応と併せて、デジタルデータの利活用とモダナイゼーションの両面から、お客さまのDXに貢献していきます。

エリア戦略(中部地区 新展開)

エリア戦略をご説明します。この数年、中部地区への対応の強化を進めてきました。この取り組みを加速させるため、2023年4月に名古屋オフィスを開設しました。東京、関西、九州、仙台に名古屋が加わったことで、国内の主要領域をカバーする体制を確立しました。今後はこの全国5拠点体制でビジネスを進めていきます。

中部地区は当社の主力領域であるエネルギー企業や、グローバル展開する製造業の拠点が多い地域です。このようなお客さまを中心に、営業活動とシステム対応を推進し、中部地区における当社のブランド力を高めていきます。

中期的な私の心づもりとしては、2026年3月期には成長原動力の1つとして、関西支社や九州支社と並ぶビジネスボリュームを作る拠点へと進化させていきたいと考えています。

「グローバル・アライアンス」による、新たな価値の共創

アライアンス戦略についてです。今までにご説明した、次世代エネルギー、スマートインフラ/ライフ、エンタープライズ DX/モダナイゼーションという3つの事業と、中部地区を加えたエリア戦略を効果的に推進していくためには、さまざまな企業とのアライアンス・連携によるレバレッジを活かしたビジネス展開が欠かせません。

当社は、グローバル海外展開を進める大手企業や業界をリードするさまざまな企業とのアライアンスにより、新たな価値の創出とお客さまへの提案に取り組んでいます。中期となる3ヶ年でこの動きをさらに加速させ、お客さまのビジネスの変革やイノベーションにつながる、最先端テクノロジーやソリューションの提供を進めていきます。

また、エネルギーをはじめ、拡大するICTシステムのニーズにもしっかりと応えるための開発体制も、国内外で強化していきます。

2026年3月期 業績目標

ここまでお話ししてきた事業戦略に基づく、業績計画をご説明します。2024年3月期は、売上高136億円、営業利益13億円、営業利益率9.6パーセントと、最高売上・最高利益・最高利益率の更新を目指します。

さらに、この記録を毎年連続更新し、2026年3月期は売上高150億円、営業利益15億円以上、営業利益率10パーセント以上に向けて、事業活動を進めていきます。

一方で、この3ヶ年は2030年以降の持続的な成長を見据え、戦略投資や人材採用・人材育成、リスキリング、ビジネスポートフォリオの最適化などの進化・変革に向けた基盤づくり、経営の高度化に向けた取り組みを強化していきます。こちらは次のスライド以降で、詳しくご説明します。

経営高度化戦略:サステナビリティ経営の推進

事業戦略の基盤となり、後押しともなる経営高度化戦略について、ご覧の項目に沿ってご説明します。

ビジネス構造改革:「利益成長型企業」を見据えた投資強化

この3年間は、先ほどご説明したビジネス領域の進化に加え、利益成長型企業へのさらなる進化を図るため、5つのポイントで投資を推進します。共通するのは人財です。

優秀な人財の獲得と育成、リスキリング、エンゲージメントの強化を通じて、ICTシステム開発やコンサルティングなどの対応力を強化していきます。これらは利益成長型企業への進化をさらに推し進めるためには不可欠であるため、重点的な投資を推進していきます。

また、この投資の成果となる開発力・技術力を基盤に、プロダクトやソリューション、高度エンジニアリングを融合させた高収益サービスを創出します。

さらに、ソリューション営業やコンサルティング営業でお客さまと対話しながら、高付加価値を創出するビジネスフレームワークの確立につなげ、利益成長型企業への進化を図っていきます。

投資・M&A:「アドソル・グループ」の成長に向けて

投資とM&Aについてです。当社グループの成長を確実なものとするための施策や投資を、今後も継続していきます。

新・中期経営計画の先にある2030年を見据え、先ほどご説明した利益成長型企業への進化に向け、DX・デジタル化、人材獲得、技術力強化などへ投資し、経営基盤や事業基盤の強化に取り組みます。また、アライアンスによる価値共創など、企業の成長をさらに加速させるための提携やM&Aも推進する方針です。

ビジネスの革新と新事業の創出につなげることで、企業価値の最大化を図っていきます。

「人的資本・エンゲージメント」の向上

人的資本やエンゲージメントの向上を図るための、主な取り組みについてです。当社の最大の財産は社員であり、社員エンゲージメントの向上が最優先の経営課題であると認識しています。

利益成長型企業への進化に向け、成長事業、ベースロードビジネスをリードする優秀な人材の採用や育成、リスキリングに加え、誰もが働きやすい社内環境の整備や、働きがいにつながる処遇制度の改善を継続的に進めます。

会社の成長と社員の成長が相互に作用する好循環モデルの確立に向け、積極的に取り組んでいきます。

アジア戦略(ベトナム):ICT開発体制の強化や人材育成の推進

アジア地域におけるグローバル戦略についてご説明します。国内のICT市場は今後も堅調に拡大する見込みです。高度なIT人材を中心に、人材不足への対応が懸念されています。このような状況を踏まえ、ベトナムでのビジネス展開をこれまで以上に推進していきます。

当社はグローバルデリバリーの観点で、日本の大学を卒業したベトナム人留学生を多数採用し、ベトナムでのオフショア開発において、ブリッジSEとして活躍してもらうというスタイルを、10年以上にわたって確立してきました。

近年はこのような社員が当社から独立し、ベトナムで起業するというネットワークも生まれています。そのため、ハノイ、ダナン、ホーチミンの3拠点で、オフショア開発体制や基盤整備といったハード面と合わせ、人材面の強化を図ります。

人材育成では、独自開発した教育ソリューションの「StudyArts」を活用し、ベトナム国内におけるICT技術者の育成に貢献していきます。また、このような取り組みを継続・発展させることで、中長期的には人材不足という社会課題の解決に貢献したいと考えています。

研究開発:競争優位の発揮と、事業の成長加速に向けて

研究開発とR&Dについてです。お客さまからも高い評価いただいている当社の技術力は、長年取り組んできた研究開発がベースとなっています。当社と同規模でここまで研究開発に注力している企業は、他に存在しないと認識しています。この優位性を高め、さらに強化していくために、今後も研究開発、産学連携は継続していきます。

当社の研究開発のポイントは4つあります。1つ目は、米国のサンノゼR&Dセンタにおける、セキュリティをはじめとした最先端テクノロジーの研究です。

2つ目はAI研究所における「ChatGPT」などのAIを中核とした研究活動、3つ目は東京大学での宇宙衛星データを活用した産学連携活動です。そして4つ目は、技術力の証として取り組んでいる特許の取得です。

この4つのポイントで技術力の強化とビジネス相乗効果を発揮し、当社ブランドの向上へつなげていきます。

株主還元

株主還元です。株主のみなさまへの利益還元は、重要な経営課題の1つだと考えています。今回、配当性向の方針を変更し、従来の35パーセントから40パーセントへと引き上げました。また、連続増配にも継続して取り組む方針です。

まずは、2026年3月期に16期連続の増配を果たすべく、安定収益を創出する事業運営を図っていきます。今後も持続的成長と企業価値の向上を持続させるため、積極的な戦略投資と業績に裏付けられた成果配分を両立していきます。

サステナビリティ:持続可能な社会に貢献するESGやSDGsの取り組み

サステナビリティについての取り組みです。当社の強みを活かした事業活動や、経営高度化戦略で進化する企業活動により、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

また、ESG情報の開示の充実化を図ることで、今まで以上に多くの投資家のみなさまに注目していただける企業へと進化していきます。

新・中期経営計画「New Canvas 2026」

以上が、新・中期経営計画「New Canvas 2026」のご説明となります。

当社ならではの、当社だからこそ成し得る「次世代エネルギー」「スマートインフラ/スマートライフ」「エンタープライズ DX/モダナイゼーション」の取り組みを通じ、スマートシティやカーボンニュートラルの実現、そして持続可能な社会の実現につながる事業活動に取り組んでいきます。

また、業績面においても、最高売上、最高利益、最高利益率の更新を毎年達成し、さらには連続増配によって株主のみなさまのご支援に応える経営を推進します。

今後も株主・投資家のみなさまにはご指導ご鞭撻をいただきますよう、どうぞよろしくお願いします。本日はご参加いただきまして、誠にありがとうございました。

質疑応答:受注の大幅な増加に向けての体制構築について

司会者:「今後予想される受注の大幅増加に対し、対応できる体制になっているのでしょうか?」というご質問です。

篠﨑:当社はIT企業であるため、ご指摘のとおり、技術者の確保や動員力は非常に重要です。現在、受注残はこれからピークを迎えるか、あるいはそれ以上に増えていくと想定しています。この数年、コロナ禍の間もいろいろなパートナー企業との提携を進めており、体制も構築してきました。

また、先ほどご説明したように、アジア戦略においては、特にベトナムの3拠点を中心に、技術力の強化も進めています。これまでのパートナー網に加えて、体制をさらに強化し、しっかりとビジネスを推進していきたいと思っています。

質疑応答:シュナイダーエレクトリック社との提携に伴う業績予想について

司会者:「シュナイダーエレクトリック社との提携による、事業創出の規模や売上高について、累計または今後の数年間でどの程度を見込んでいますか?」というご質問です。

篠﨑:当社はフランスのシュナイダーエレクトリック社と、日本初かつ唯一のSIパートナーとして連携しており、特に3つの領域で事業を順調に拡大しています。製造業のDX、VPPやマイクログリッド、エネルギーマネジメントシステムで共創しながら順調に活動しています。

そして、世界で6社のみのGlobal Winnerとしても表彰され、「サステナビリティインパクトアワード」という賞をいただきました。このように、シュナイダーエレクトリック社との共創やビジネスの拡大を進めている状況です。

今後、アライアンス領域をさらに拡大し、年間で2桁億円を創出するビジネスを推進したいと思います。

上田:私からも少し補足します。社長の篠﨑がご説明したように、2021年にシュナイダーエレクトリック社と提携しました。ご存じのように、ドイツのシーメンス社、フランスのシュナイダーエレクトリック社はヨーロッパでトップワン、トップツーのエンジニアリング企業です。

そのシュナイダーエレクトリック社より、日本で最初のSIコアパートナーとして認定していただき、協業ビジネスをスタートしています。特に当社が長年お付き合いのある全国の電力会社やガス会社といったエネルギー企業向けに、シュナイダーエレクトリック社のいろいろなソリューションを展開しながら、日本での協業を行っています。

その結果、当社の技術力やユーザー、特にエネルギー企業からの創業以来の高い信頼を、シュナイダーエレクトリック社に大変高く評価いただいています。今後も、両社での取り組みをしっかりと推進していきたいと思います。

そのような中で、2022年にはシュナイダーエレクトリック社の400社のパートナー、コアパートナーの中で、当社がグローバルなアワードをいただきました。これは非常に名誉なことです。

東アジアの日本の市場でシュナイダーエレクトリック社と提携した当社のビジネスは、今後もますます伸びていく見込みで、私自身も非常に楽しみにしています。

質疑応答:お客さまに求められている技術について

司会者:「足元の引き合いのある案件のうち、従来とは異なる御社ならではの技術が求められるものはありますか?」というご質問です。

篠﨑:当社のいろいろなビジネスの中で、従来はデータの利活用に対するニーズが大きくありました。しかし、昨今は「AIを使ってデータを分析したい」というお話をいただいています。特にチャットボットや「ChatGPT」の活用です。現在、大企業からも導入に向けた引き合いが来ています。

当社はAI研究所という組織を持っており、AIの技術的な要素を含めて研究しています。特にAI自体の品質をテーマにした活動も多くなってきており、これからはAIの品質が不可欠な要素になると思っています。

データ利活用にAIビジネスが加わるため、AI自体の品質に携わることが今後、当社のビジネスを支えていくことになると思います。

質疑応答:人材不足への対応と現時点での成果について

司会者:「人的資本についてです。人材不足にどのように対応し、その成果がどこまで出ているのか、可能な範囲で具体的に教えてください」というご質問です。

篠﨑:先ほどご説明しましたが、当社の財産は社員です。昨今、高度なIT技術者や上流工程の人材不足が叫ばれています。IT技術者に限らず、人材の獲得は非常に厳しくなると思いますが、当社では社員の働きがいや働きやすさの向上などの施策に取り組んでいます。

例えば、処遇の改善や新たな人事制度の導入、優秀な人材の採用に向けたアルムナイ制度を活用し、人材不足への対応を実施しています。このような施策の効果がすぐに出てくるかというと難しいところですが、働き方に対する環境の整備や処遇制度の改善に取り組んでいきます。

また、先ほどお話ししたアジア戦略の中のベトナムの活用にも取り組みながら、推進していきます。人的資本については、引き続き重要な課題だと思っています。

質疑応答:2023年3月期の前期決算の総括と今期の見通しについて

司会者:「新・中期経営計画の前提となる2023年3月期前期の決算の総括と、今期の見通しについて教えてください」というご質問です。

篠﨑:2023年3月期の業績について、売上高は128億円、営業利益が12.1億円で増収増益となりました。この要因としては、コロナ禍に控えられていた投資が回復し、DX案件が増加したため、業績が回復してきたことが挙げられます。

この勢いは今期に入っても継続中で、今までにない受注残もあります。2022年度の期末の受注残は26億1,100万円となりました。この勢いに乗って、新たな成長事業をさらに加速させていきたいと思います。

質疑応答:新・中期経営計画の目標値の設定理由とM&Aについて

司会者:「新・中期経営計画では、3年後に売上高150億円、営業利益率10パーセント以上が示されています。しかし、成長事業の今後のポテンシャルを考えると、非常に保守的な印象を受けました。このような業績目標値を設定された理由や背景を教えてください。また、M&Aによる事業成長は、計画に織り込まれていないのでしょうか?」というご質問です。

篠﨑:当社ではこの3年間を、ビジネス領域の進化と利益成長型企業への進化を図る3年と捉え、基盤を作っていきます。つまり、次の3年目となる2030年に向けた期間だと考えています。また、当社の構造改革にはまだ課題もあるため、施策を打って対応し、次の期間に向けて調整していく予定です。

そのため、システム開発も新しいかたちに変わっていきます。具体的には、ソリューションと高度エンジニアリングの高収益サービスの創出や、コンサルティング営業の強化に取り組んでいきます。

加えて、年間数億円規模の投資も予定しています。投資先としては、人材育成や開発体制といった次につながるものを盛り込んでいます。また、M&Aのお話もあります。今回、M&Aに関しては業績の数値に盛り込んでいないものの、投資戦略の1つとして今後も検討していきたいと考えています。

上田:M&Aに関して少し補足します。社長の篠﨑が熱く語っていますが、当社は創業以来「技術のアドソル」として業界で評価されています。また、この評価のとおり、技術に強みを持つ会社だと認識しています。

今後もDX化など強みとなる技術力を一層強化し、市場、社会インフラ、デジタル化を含めて、ビジネスを拡大していくため、M&Aにも積極的に取り組んでいきたいと考えています。

当社の強みをさらに伸ばす、あるいは強みを補完できる企業があれば、1足す1で2、あるいは3になります。そのように、双方がより成長できる連携を実現させていきたいと思います。

これは同業者のみならず異業種であっても同様です。当社のコンセプトに合い、コラボレーションすることで双方にメリットがある企業であれば、大企業や中堅企業、中小企業に関わらず、幅広くM&Aを検討していきたいと考えています。

質疑応答:次世代エネルギーについて

司会者:「次世代エネルギーは非常に有望な事業だと思いますが、発注元となるエネルギー企業の業績などに起因し、投資抑制がなされるリスクはないのでしょうか?」というご質問です。

篠﨑:電力会社では新しいテーマのビジネスが続々とスタートしています。これは国の法的な整備や制度によるものです。2025年に向けた制度や、2030年までに計画されている法的整備などがこれから始まっていきます。

さらに、これから暑くなる夏場、そして冬場のエネルギー確保や安定供給に対し、IT投資が待ったなしの状況であるため、設備投資を含めて、電力系ビジネスの機会をしっかりと捉えたいと思います。そして、お客さまのニーズに応えて、次世代のエネルギーにつなげていきたいと思っています。

上田氏と篠﨑氏からのご挨拶

篠﨑:本日はお忙しい中、新・中期経営計画の説明会にご参加いただきまして、誠にありがとうございました。社会経済活動が平準化に向かう中、今後は新たな気持ちで「New Canvas」に成長軌道を描いていきます。

今回策定した計画は2026年ではなく、2030年に向けた事業拡大の第1歩となります。当社が飛躍し、みなさまのご期待にお応えするために、本日ご説明したさまざまな課題を1つずつ、1日も早く解決し、さらなる成長に向けた戦略へ落とし込み、実行に移していきます。今後もご指導、ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

上田:本日はお忙しい中ご参加いただき、誠にありがとうございました。コロナ禍を経て事業環境やお客さまの動向、トレンドなどが大きく変化しています。

当社が2030年やその先の未来に向かって何をすべきか、豊かな社会の発展にどのように貢献するのか、私たちの根本の存在意義というべきものが新・中期経営計画の策定を経て、経営幹部や社員に再認識されました。

私としては、これらの今後の成長への貢献を非常に楽しみにしています。みなさまのご期待にお応えすべく、経営陣が一丸となり、取り組んでいきたいと考えています。投資家のみなさまの温かいご支援、ご指導のほど、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。本日はご参加いただき、誠にありがとうございました。

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