2023年5月27日にログミーFinance主催で行われた、第55回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナーの第2部・株式会社シイエヌエスの講演の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社シイエヌエス 代表取締役社長 関根政英 氏
元・ファンドマネージャー/元・ディーラー 坂本慎太郎(Bコミ) 氏
経済アナリスト/経営コンサルタント 増井麻里子 氏
会社概要
関根政英氏(以下、関根):株式会社シイエヌエス代表取締役社長の関根でございます。本日は株式会社シイエヌエスについてご説明させていただきます。
まずは、会社および事業の概要についてお話しします。設立は1985年で、当社は5月決算のため、38期目がまもなく終わるところです。従業員数は単体で188人、札幌にあるグループ会社のシイエヌエス北海道を合わせると連結で220人となっています。
当社は最先端技術を活用したシステムコンサルティング、およびビッグデータ分析などを行っている企業です。
企業理念/Mission/Vision/Value
関根:企業理念ならびにMission、Vision、Valueについてです。企業理念にも記載のとおり、我々は情報技術の先進的な活用、新しい技術の活用により社会の発展に貢献していくという理念を掲げています。
Mission、Vision、Valueについては、中期経営計画の中のMVVにあたる内容となっています。Missionに「人を想う力で、社会を前進させる新価値を、生み出す」とあるとおり、社会にいるみなさま、お客さまのことを本気で考え、よりよいシステムを提供して社会を変えていく、新たな価値を生み出すということを掲げています。
当社のあゆみ~創業から現在まで~
関根:当社のあゆみです。スライド左から右にかけて時系列が進んでいきますが、設立当初は、大型汎用機と言われたメインフレームが主流の時代において、Microsoft社のWindowsと似たようなユーザーインターフェースを持つオペレーティングシステムのUNIX技術を活用したビジネスをスタートしました。
その後、システムを大きな機器から小さな機器へと置き換えていくという、いわゆるダウンサイジングの波が訪れた時期に、金融機関などをはじめとして、小型機器で動作するUNIXが採用されるケースが非常に増えていきました。
このような背景により1990年代以降、UNIX技術をベースに金融業務へ参入しています。金融業務では、特に当時の都市銀行などにおける市場リスク、信用リスクといったリスク系の業務を得意としていました。もともと金融業務の知識を持った人材がいる訳ではありませんでしたが、学びながら力をつけていきました。
このような金融業務を大きな基盤とする一方で、インターネットが普及した2000年以降には食品偽装などの社会問題が起きました。消費者の安心と信頼獲得のために、農林水産省と、「追跡可能な」という意味の造語であるトレーサビリティの実証実験を行い、農産物がどこから、どのようなルートを通ってお店に来たのかを追跡できるトレーサビリティシステムの開発などを行いました。
子会社のシイエヌエス北海道のお客さまである、生活協同組合コープさっぽろという北海道の生協さまも、このトレーサビリティシステムの開発を機にお付き合いするようになりました。
2000年代は当社の歴史の中でも特に伸びた時代です。インターネットが普及した背景もありますが、実はビッグデータという言葉自体がまだ存在していない2000年代から当社はビッグデータ業務に着手しています。また、システム基盤に関しても、今ではクラウドが一般的になっていますが、クラウドが誕生した当時より着手しています。
現在は、さまざまな技術を背景に、DX(デジタルトランスフォーメーション)の時代に入りました。当社は特に、米国企業によるクラウドサービス「ServiceNow」を活用して、お客さまのDXを支援するビジネスが拡大してきています。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):スライド上で「ダウンサイジング」という言葉が使われていますが、こちらについて詳しくご説明いただくと、視聴者の方もイメージが湧きやすいと思いますのでよろしくお願いします。
関根:スライド一番左の枠に記している「メインフレーム(汎用機)」は、非常に大きなコンピュータシステムで、当時は特に銀行などで使われていました。メインフレームは運用コストなどが大きくかかるため、システムが小型コンピュータへと置き換わっていきました。つまり、システムを大きいものから小さいものへと置き換えるという意味で、ダウンサイジングと言われています。
坂本:非常によくわかりました。
当社技術の変遷
関根:当社技術の変遷です。先ほどご説明したとおり、我々は各時代のトレンドとなるような技術をビジネスに取り込むことで、大きく成長してきています。
UNIX技術からスタートし、金融業務へ参入して、その後トレーサビリティを活用して小売・流通業界へ進出しています。さらに、インターネットの普及とともにEC、つまりインターネットで買い物ができる時代に変化したことを背景に、小売・流通分野における案件数が拡大していきました。
あらゆる新技術に取り組む我々の姿勢がお客さまに評価された結果、チャレンジとして「シイエヌエスさんでビッグデータ分析を行ってほしい」と依頼され、分析技術(モデリング)や、特に通信業界のマーケティングを得意としていることで得られた通信業務知識を活かし、ビッグデータ分析事業として新しい分野に進出しています。
基盤構築技術に関しても1999年あたりから着手し、こちらのインフラ技術、基盤技術が、現在のクラウドへと進化し、2008年にシステム基盤事業を開始しています。SaaS技術における「ServiceNow」というデジタル革新推進事業についても、2018年から力を入れて進めてきています。
このように、それぞれ時代背景がある中でも、主流になる技術を早期に、また先取性を持って取り組むことで、事業をここまで拡大することができています。
今後の取組み
関根:今後の取り組みとして、短期的には、デジタル変革ビジネスへの早期参入により、お客さまの業務変革をさらに進めていきます。いわゆるコンサルティングに近いものとなりますが、ビジネス変革デザインサービスを提供していこうと思っています。
先日ニュースリリースしましたが、「U-Way」はクラウドをより簡単に、より速く、低価格で構築できるサービスであり、こちらをさらに広げていくことを計画しています。
中長期的には、サステナビリティや人材育成をベースとした施策にしっかりと取り組み、永続的な事業を展開していけるように、また、お客さまにもそのようなサービスを提供していくかたちで進めていこうと考えています。
サステナビリティの取組みに係る社外からの評価
関根:サステナビリティの取り組みに係る社外からの評価についてです。ご覧のとおり「第3回TOKYOテレワークアワード推進賞」「EcoVadisブロンズメダル受賞」など、上場以来いろいろな準備を行った結果、評価・認定いただいています。
シイエヌエス北海道に関しては「健康経営優良法人2023認定」において、認定を頂戴している状況です。そのほかに、ニュースリリースも出していますが当社グループとして2030年度までに温室効果ガス総排出量の46%を削減する目標を設定し、SBT認定を取得しました。
坂本:2016年に設立したシイエヌエス北海道は、御社と同じような業務を行っているのでしょうか? または、何かに特化した業務を行っているのか教えていただければと思います。
関根:受託系システム開発等を行っているため、仕組みとしては同じになります。ロゴを色で分けてお示ししていますが、緑色は、北海道の大自然をイメージしており、シイエヌエス北海道は「北海道に貢献していく」ところに重きをおいています。
事業領域 DXの中核技術を用いて新しいビジネスを推進すると同時に、顧客の事業基盤の強化を支援
関根:我々の事業領域については大きく4つあります。まず1つ目はシステム基盤事業です。こちらはパブリッククラウドの導入、ハードウェア、物理的に存在する基盤システムの構築などを行っています。数字を見るとおわかりのとおり、現在の売上比が一番大きな事業となっています。
2つ目はビッグデータ分析事業です。こちらでは、お客さまにおいて蓄積されている膨大なデータを我々のほうで加工・分析し、新たな価値をご提供しています。例えば、先ほどお伝えしたマーケティングにおける通信業界では、お客さまが新たなサービスを開始する際に「特にどのような手法で広告を打つと、一番効率よくサービスをご利用いただけるか」をデータから紐解いてご提案しています。
3つ目はデジタル革新推進事業です。何度かお伝えしている「ServiceNow」というクラウドSaaSサービスの導入コンサルティングに加え、AI系のシステム開発、金融におけるキャッシュレス系のサービスのシステム開発なども行っています。さらに、データベースの性能のチューニング、コンサルティングといったサービスも行っています。
4つ目は業務システムインテグレーション事業です。創業から展開してきたビジネスの中で最も長く携わり、主流になっている分野は金融システムですが、受託によりお客さまの基幹システム開発を行う事業になっています。法人SI分野もありますが、やはり金融システム分野の比率が非常に高いところが特徴だと思います。
坂本:事業の業務についてご説明いただきましたが、まだ理解できていない視聴者もいるのではないかと思いますのでおうかがいします。
事業の名前からなんとなくイメージは湧いていると思うのですが、主力の基盤事業について、システム関連のお仕事をされている方以外にとってはおそらく馴染みがないと思います。システム基盤の必要性について、また、具体的にどのような業務を行っているかについて教えていただけると助かります。
関根:システム基盤事業では、ハードウェアであるサーバーにどのようなアプリケーションが載るのかを踏まえ、また、アプリケーションによってはさまざまなシステムの運用に関わる部分についての設計も含め、オペレーティングシステムの導入、データベースの設計・構築など、全体の運用について考えていくサービスをご提供しています。
業績推移
関根:業績推移です。創業時より積み重ねてきた大手SI事業者との厚い信頼のもと、継続的なリレーションによって安定した事業基盤を固めてきています。スライドの棒グラフのとおり、業績推移としては順調に成長してきており、過去5期の売上高平均成長率は8.9パーセントとなっています。
坂本:大手SI事業者との信頼のもとで安定したリレーションの継続ができているとのことでしたが、背景や理由について教えてください。
関根:当社が最も信頼をいただいている部分は、やはり社員の技術力です。もちろん人柄も含めての話になりますが、技術力やスピーディなフットワーク、依頼された仕事に対して期待以上にお応えする点において、社員がお客さまから非常に信頼されています。
大手SI事業者はどのような会社とも契約されるわけではないため、信頼された結果として、当社へご依頼いただき、発注いただくパートナーシップ企業として認定いただいているところが、大きなポイントになります。お客さまから繰り返しご発注いただけるような関係性を社員が作ってくれていることが一番大きいと思います。
経営資源・競争優位性(当社の強み)
関根:我々の強みとしては大きく5つあります。経営資源・競争優位性として、「②」「③」「④」の3つを中心にお話ししたいと思います。
経営資源・競争優位性(当社の強み)
関根:1つ目は、エンドユーザーとの直接取引、いわゆるプライム受注です。昨年度実績としては直接取引が40パーセントとなっており、残りの6割はSI事業者からの受注となっています。
SI事業者も、大手SI事業者を中心とした二次請けとなっているため、そのような意味ではエンドユーザーやSI事業者と同じようなレベルのお客さまと仕事ができています。エンドユーザーに近いところで仕事ができる分、我々の作ったシステムの効果をお客さまにもより体験していただけるのではないかと思います。
我々の業界は、二次請け、三次請け、四次請けと階層が深いのですが、当社は直接請けが多いところが1つの強みです。
経営資源・競争優位性(当社の強み) ③
関根:先ほどもお伝えしたように、大手SI事業者との継続的なリレーションとして、2011年10月から継続的にNTTデータのビジネスパートナーに認定されています。このような背景もあって安定的な受注をいただいており、今年度も売上は大きく伸びる計画です。
経営資源・競争優位性(当社の強み) ④
関根:3つ目に、デジタル革新ソリューションのノウハウです。スライド右下の表に示しているのは、IPAで定義されているDX分野の技術知識です。
このうち「ビジネスアーキテクト」「ソフトウェアエンジニア」「データサイエンティスト」の3つの主要技術を保有しているところが、我々の大きな強みとなっています。
特にデータサイエンティストについては、我々の一番の成長戦略、柱と言ってもよい事業に成長しています。このような技術開発に早期に着手してきた結果、デジタル分野で必要となるたくさんの知識やノウハウが蓄えられ、競争優位性を確立しています。
坂本:デジタルソリューション領域への早期からの取り組みが競争優位性へつながっていると思うのですが、新分野はどんどん生まれてきますし、それに伴って新しい技術も必要になってくると思います。
技術を習得するには新しい人材を採用したり、研修を行ったりしなければいけないと思いますが、外部から知見を持った人を採用するのでしょうか? それとも社員教育で新分野に対応できるのか、その場合はどのような教育を行っているのか教えてください。
関根:もちろん、技術を保有している人材の中途採用も進めていますが、我々のような業界は人材の取り合いが激しいため、新卒の優秀な人材を採用して、教育していくことに最も注力しています。
新人については、早期からエンジニアとして活躍できるように、入社後の新人教育はもちろん、現場でのOJTが非常に安定した実績を残しています。先輩による指導、外部研修、事業部内での勉強会といったかたちで、さまざまな学びを得られる環境を提供しています。
また、できるだけ本人の希望する仕事に就くことが、社員の一番の成長につながると考えており、社員一人ひとりの声を聞き、本人が望む仕事へアサインすることでモチベーション・エンゲージメントを高めています。また、資格制度も充実しており、技術資格に合格すれば一時金等を支払うといったことでもモチベーションを高める取り組みを進めています。
3つの成長戦略
関根:我々の成長戦略についてお話しします。「事業基盤の強化」「新たな顧客拡大のための強化施策」「技術サービス拡充による市場拡大」と、大きく3つの戦略を掲げています。
成長戦略①事業基盤の強化
関根:事業基盤の強化では、DX人材を増強することが最もビジネスの成果につながるため、中途でも新卒でも優秀な人材をしっかり確保していきます。さらにその人材が、お客さまに対してDX技術を活用したご提案ができるように育てていくことに力を入れています。
成長戦略①事業基盤の強化
関根:社員数も順調に増えてきており、計画では2023年5月期で214名を目標に人材獲得を進めています。おそらくこの数は超えると予想しています。
増井麻里子 氏(以下、増井):新卒は何名くらい採用されているのでしょうか?
関根:2023年4月は17名でしたが、基本的には20名前後を目標にしています。すでに来年度に向けた新卒採用においても内定者を多く獲得できており、近年は概ねその程度の人数を目標値としています。
増井:個人投資家の方から聞かれるかと思うのですが、新卒者が戦力化するにはどのくらいの期間が必要でしょうか?
関根:入社後3ヶ月間は新人研修を行っており、早ければその3ヶ月が終わった直後からプロジェクトに入り、報酬も支払われるところまで育っています。
もちろん、いきなり1人ではなく、チームで動くことをメインにしていますので、配属先でOJTしながら、仕事をし報酬もいただきます。お客さまに納得いただける成果を出すという意味では、3ヶ月で有償化できるかたちで進めています。
技術力の強化
関根:技術力の強化では、先ほどお伝えした資格手当等の効果によって、さまざまな技術を持つ社員が増えてきています。
また、「ServiceNow」については、国内認定ランクの「PREMIER」のポジションにいます。こちらは社員が「ServiceNow」の有資格者になっていくことにより、ランクが徐々に上がっていきます。
現在は次のランクの「ELITE」を目指していますが、「PREMIER」もそれほど多くの企業が認定を受けているわけではないため、1つの成果となっています。
成長戦略②新たな顧客拡大のための強化施策
関根:2つ目の、新たな顧客拡大のための強化施策は、重点顧客との連携により、その先のエンドユーザーを獲得していくという戦略になります。1つは「ServiceNow」の導入コンサルティングにより、その向こうにいるエンドユーザーを顧客とともに開拓していきます。
もう1つは新たなアライアンスパートナーとの協業関係によって新規顧客を増やす活動です。特にビッグデータ分析事業においてSASと長く連携強化しています。5月24日にニュースリリースをしていますが、日本オラクルとの連携も強化して、新サービスの開発を進めています。
成長戦略③技術サービス拡充による市場拡大
関根:3つ目の、技術サービス拡充による市場拡大についてです。デジタル変革ソリューションの取り組みとして、現在は「ServiceNow」、クラウド、ビッグデータを主な領域としていますが、こちらに新たな領域を増やしていく戦略です。併せて、「U-Way」のように、我々独自の新サービスを作り上げて市場を拡大していく狙いがあります。
坂本:「ServiceNow」についてですが、こちらはどのようなサービスなのか教えてください。
関根:企業の基幹システムは1つでできているわけではなく、さまざまなシステムが部署を跨って乱立しており、それぞれが目的を持って動いています。表に見える部分ではなく、そのシステムを回すための運用に「ServiceNow」を活用します。
運用には手作業が多く、各種申請やワークフローを回していくといった手続きが煩雑なのですが、「ServiceNow」を導入することにより、その流れを手動ではなくクラウド上でできるような仕組みに変えることができます。
つまり、お客さまにとってはコスト削減等が見込まれますし、「ServiceNow」と他のシステムとが連携することにより、各システムから集まってきたデータをさらに活用して次のビジネスへ活かすこともできるため、お客さまからも大変好評で、導入が進んでいるサービスです。
坂本:SAPのような基幹システムのイメージになるでしょうか?
関根:そちらに近いと思います。
坂本:カスタマイズができて、業務に合わせて作れるということですね。
関根:おっしゃるとおり、容易に作ることができます。
坂本:御社はそれを手伝うような仕事もかなり請け負っていますが、こちらも確実に一次請けになるということですか?
関根:そのとおりです。現在はNTTデータとのパートナーシップが一番多いのですが、我々としても、やはり「ServiceNow」自体を直接受注することも進めていこうと考えています。
坂本:お客さまとの「ServiceNow」を使った取引は、「この保守だけやってください」「追加のシステム構築だけお願いします」というようなかたちで請けているのでしょうか?
関根:最初は運用部分のシステム導入、構築から入りますが、現在は「ServiceNow」自体もシステム運用だけでなく、その上に乗ってくる業務システムにも幅を広げていこうとしているため、そのようなシステムの開発も発生すると予想しています。
坂本:新規顧客はNTTデータと連携して開拓していくのですか? それとも、自社で営業することもあるのでしょうか?
関根:現在はNTTデータと強力なタッグを組んで、そちらを中心に開拓しています。しかし、やはり我々としても直接エンドユーザーに「ServiceNow」を導入するプロセスを作っていこうと考えています。
連結損益計算書
関根:第3四半期決算ハイライトです。スライドの赤枠で囲まれている部分が2023年5月期第3四半期の数字です。売上高は43億円強で、前期比107.7パーセントです。営業利益は4億4,300万円で、前期比96.7パーセントとなっていますが、こちらは販管費が前年度と比較して増えたことが影響した結果となっています。
販管費については、期初計画どおり、人材の育成、採用、教育に大きく投資してきた結果であることをお伝えしたいと思います。
2023/5期 連結業績予想
関根:2023年5月期業績予想です。通期予想としては売上高60億円強を目標値としており、達成する見込みとなっています。
営業利益、経常利益、当期純利益は前年比で少し欠ける状況となっています。こちらは先ほどご説明したとおり、販管費、人材の育成、獲得に使った部分によって、若干マイナスになると予想しています。
2023/5期 事業別業績予想
関根:事業別業績予想です。通期予想では、デジタル革新推進事業とビッグデータ分析事業が売上高で前期比120パーセント以上と成長しています。
売上総利益は、デジタル革新推進事業が前期比108パーセント、ビッグデータが112パーセント強で、利益においてもデジタル革新推進事業とビッグデータ分析事業が業績を押し上げています。
システム基盤事業も「U-Way」により利益率が大きく改善してきており、前期比114.6パーセントとなっています。業務システムインテグレーション事業は金融系の開発で新規受注があったため、こちらも利益に大きく貢献しています。
2023年4月12日に配当方針の変更を公表
関根:2023年4月12日に配当方針の変更を発表しました。2022年度は上場記念配当も含めて45円とさせていただきましたが、2023年5月期は上場記念配当を乗せない状態でも45円と15円増配しています。利益も計画どおり順調に伸びてきたことから、このような決断をしています。また、今後は累進配当を進めていく方針を決定したところです。
増井:スライドでは「45円を基点」という表現をされていますが、こちらは下限ということでしょうか?
関根:もちろん、状況によって変化する可能性もゼロではありませんが、我々の狙いとしては、45円から累進配当で上げていけるよう進めていきます。したがって、下限であるとご理解いただいてよいかと思います。
10年後を見据えたグループの方向性
関根:当社の長期展望についてお伝えします。上場企業として、10年後を見据えたサステナブルな活動を進めていきますが、経済価値としてのビジネスの拡大と、社会価値としての持続的な社会づくりへの貢献を進めていくことを考えています。
経済価値の向上
関根:経済価値の向上については、事業としているシステムエンジニアリングに、コンサル系事業として、ビジネス変革デザインでDX系コンサルティングサービスを立ち上げ、システムエンジニアリングの増強、また、その周辺のビジネス運用、業務システム運用支援などにも事業を拡大していく狙いで検討し、進めています。
サービス計画
関根:サービスの計画です。スライドの一番下が現在のシステムエンジニアリング事業になります。それにプラスして2025年からビジネス変革デザインサービスをスタートし、さらにテクノロジー教育や運用を順次拡大していきます。ビジネス変革デザインについては早々にスタートしようと、現在準備を進めている段階になります。
坂本:10年後の売上目標を「既存事業100億円+新規事業50億円」と定める、と記されていますが、既存事業は現在のセグメントがそのままスライドして伸びていくのでしょうか? 将来伸びる分野があれば教えていただければと思います。
関根:現在のビジネスが広がっていくというご認識のとおりです。冒頭でもご説明したとおり、我々は新しい技術を先進的に広げていくことを推進しています。現在はDXにかかわる事業が市場としてまだまだ大きくなる可能性を秘めていますので、そちらを十分に拡大していくことで数字を伸ばしていけると考えています。
坂本:新規事業のほうについてもおうかがいします。2025年から事業を本格化するビジネス改革デザインサービスは、始まるのが早いため大きなシェアを占める見込みなのでしょうか? それとも、2027年から2028年に始まるものが、実は2032年に収益貢献が一番大きくなるのか、イメージを教えていただければと思います。
関根:デジタル革新といった時代の中で、お客さまがどのようにデジタルを活用するかというところが一番のテーマになっています。お客さまは、伴走できるような技術力を持っている企業を非常に求めています。ビジネス変革デザインサービスが、そのような部分を担っていきますので、まずはここを十分に伸ばしていくことが1つです。
それによってスライド下段のシステムエンジニアリングの受注にも広がっていきますし、結果として上部の2つにもつながります。まずはビジネス変革デザインサービスを大きくしていくというところが一番の狙いだと思っています。
社会価値の向上
関根:社会価値の向上についてです。「Creating New value for Sustainable」の頭文字を取ったシイエヌエスという社名のとおり、持続可能な新しい価値の創造ということで、上場企業として十分にサステナブルで、日本に限らず世界とともに持続可能な社会を作っていくために貢献していきます。できることを1つずつ着実に行っていこうと考えています。
以上が株式会社シイエヌエスのご紹介とご説明になります。
質疑応答:株価について
坂本:御社の業績は非常に堅調で、配当性向も低くないですし、今回は配当政策も見直して、手厚い配当を出すことで株主へ還元していくというかたちを打ち出しています。一方で、株価自体がやや低迷しているような状況ですが、こちらに関するお考えがあればお聞かせください。
関根:上場してからまもなく2年になろうとしている段階になりますので、上場直後の注目度はほぼなくなっているものと理解しています。我々に一番足りていないものとして、やはり認知度がまだ低いと思っています。このような機会を活用して個人投資家のみなさまにシイエヌエスという会社をよく知っていただくことで、株価のほうもご期待に沿えるようにしたいと思います。
我々としても満足している状態ではありませんので、十分に株価を上げていけるように進めていきたいと思っています。
質疑応答:他社に対する強みや自社のアピールできる点について
坂本:「企業向けシステム開発を行っている企業は多いですが、それらの優劣を判断するのは意外と困難です。御社の他社に対する強みやアピール点があれば教えてください」というご質問です。
関根:我々のような受託系のシステム会社は、ご質問のとおり同じような企業がたくさん並んでいますので、見比べるのが難しいと思います。
我々のポイントとしては、先取性・先進性をもって新しい技術の仕事をより多く行っていることです。かつそのビジネスが時代に外れているものではなく、今まさにビジネスの主流として一番必要とされている技術を中心に事業を行っている点が最も大きいと思います。「ServiceNow」もそうですし、ビッグデータもクラウドも行っているという同業他社はまずあまりないと我々は認識しており、一番の強みだと思っています。
ベースとしては業務システム開発もありますが、そちらでも金融分野を得意にしているなど、他社と異なる分野で得意なものがあり、かつ先進的な新しい技術領域だというところが1つの強みです。
加えて、大手SI企業との安定的な取引というところも、他社にはなかなかないアドバンテージの1つだと捉えています。
坂本:先進的な取り組みができる人材がいるということも強みになっているでしょうか?
関根:そのとおりです。新しいことへの挑戦や新しい技術の習得が非常に好きな社員がたくさんいます。それがなければ一緒に取り組んでくれないのではないか、というほど新しいもの好きな社員が多いため、それが新技術に取り組める一番の背景です。
坂本:それができることは、やはり1次請けの仕事を持っているということが、やりがいにつながるという点もあるのでしょうか?
関根:はい。1次請けで取引をしているお客さまは、時代に合った新しい技術をより進めたいという会社が多くなりますので、そのような仕事に取り組めることはやはり社員にとってもモチベーションアップにつながっていると思います。
坂本:とはいえ、もちろん1次請け、2次請け以下の仕事もないと当然安定しないですよね。そちらも仕事として非常に大事ですし、信頼があるからこそ仕事がリピートされるということですよね。
2次請け以下の仕事によって蓄積された技術や知見が、1次請けに活かされるといったことはありますか?
関根:あります。例えばNTTデータやNRIは先進的な技術を最も使われているお客さまですので、仕事に取り組みながら新しい技術も吸収して、それが次のエンドユーザーにも活かせるという流れができています。
質疑応答:人材獲得の秘訣について
坂本:「人材の獲得が順調な秘訣は何ですか? 業界では人材が非常に不足しているはずだと思います」というご質問です。
関根:まず、新卒が大変順調に集まってきています。他社と異なり、人事が学生に寄り添い、一人ひとりの学生と何度も面談を重ねて当社を理解していただきます。場合によっては他社に就職してしまう可能性もありますが、当社に就職するための面談の進め方までアドバイスすることで、当社に親近感や興味を持っていただいています。
また、新しい技術やいろいろなものに取り組んでいるところも1つのポイントです。人材育成においては、資格手当や勉強する環境がしっかり整っているところが大変好評です。そこがポイントになって新卒の学生が増えていると考えています。
坂本:たしかにホームページや会社説明会などで業界の話をしてもらえると業界研究になりますし、そこでさらに興味をもつ可能性もあります。非常によくわかりました。御社の離職率もやはり低いほうでしょうか?
関根:業界内の流動化が高い時には離職率が10パーセントを超えたこともありましたが、今は10パーセントを切っていると思います。同業間で見れば低いのではないかと思います。
質疑応答:今後拡大していきたい業務領域について
坂本:「金融以外で、今後拡大していきたい業務領域があれば教えてください」というご質問です。
関根:先ほど挙げたコンサルティングの部分は、来年度あたりから少しずつ幅を広げていきたいと思っています。背景としては、我々はお客さまがDXを進める上で伴走していますが、現在は内製化の動きが進んできており、お客さまが技術者を自社内に抱えて技術を外へ出さないようになってきています。
とはいえ、DXをどのように進めたらよいのかとお悩みのお客さまは非常に多くいますので、我々の持っている知見や技術を活かして、伴走しながらお客さまのデジタル革新を成功に導くというコンサルティングサービスに注力して進められればと思っています。
金融以外というご質問でしたが、業種というものにはあまりこだわっていません。まずはコンサル領域を十分に進めたいと思っています。
質疑応答:ビジネス変革デザインサービスについて
坂本:「ビジネス変革デザインサービスというのは、要件定義以前の戦略立案といったイメージでしょうか?」というご質問です。
関根:お客さまがデジタル技術を活用してどのようにビジネスを変えていくか、またビジネスを変える上でどのような技術が必要で、どのようなものを活用することによってより効果を出していくかを、お客さまにご提案しながら一緒に考えていくような領域になります。
ご質問のとおり、システムの要件定義という段階以前の、お客さまの経営課題も含めたご相談に乗るというところからサービスを行っています。
質疑応答:1次請けと2次請け以下の割合のイメージについて
坂本:「新しいお客さまの獲得目標はありますか? NTTデータの売上の依存度はどのぐらいでしょうか?」といただいていますが、1次請けと2次請け以下の割合のイメージはあるのかといった意図の質問かと思います。
関根:やはり今後はエンドユーザーとの直接の仕事も増やしていきたいと考えています。しかし、NTTデータやNRIのようなお客さまからの2次請けも、新しい技術を活用できるという部分で我々にとっては非常にありがたい仕事です。お答えとしては、両方行うというはっきりしない回答になります。
坂本:それも良いことだと思います。
関根:DXを推進する上でエンドユーザーも増やしていかなければ、本当のDXを我々が主導して行うことはできませんので、そのような部分でやはりエンドユーザーを増やしたいと思います。また、SI事業者とともに新たな事業を増やしていくことも進めたいと思っています。
質疑応答:社長の経歴について
坂本:「社長はもともと技術者出身なのでしょうか?」というご質問です。本日はかなり技術的な内容もお話しいただきましたので、このような質問をいただいたのだと思います。
関根:私は26歳ぐらいの時に中途でシイエヌエスに転職して、現在57歳になります。転職した時は普通のシステムエンジニアでした。それこそ先ほどお話ししたような大きいシステムを使っていましたので、「UNIX」系のダウンサイジングといった新しい技術を使いたいと思って転職し、長い間現場で開発等を行っていました。
関根氏からのご挨拶
関根:この機会に、ぜひ株式会社シイエヌエスを知っていただきたいと思います。先ほどのご質問にもあったとおり、システム業界はなかなか比較することが難しいと思いますが、元気があり良い人材がたくさんいて、新しい技術で盛り上がっている企業ということで、この機会にご認識いただければありがたいと思います。
ぜひ応援していただきたいと思います。よろしくお願いします。