今から約1年半前の2016年春、転職のため企業型確定拠出年金を導入している大手企業を退職したAさん。転職先は企業年金のないベンチャー企業だったため、Aさんは退職時に会社から渡されたパンフレットに従い、企業型確定拠出年金の資産を個人型(iDeCo)に移換しました。

「前職で確定拠出年金が導入されたときには『面倒だな』くらいの感想しかなく、真面目に考えたことがありませんでした」というAさん。個人型への移換も「やらなければならないらしいので仕方なく」というレベルの認識で、特に調べもせずに企業型と同じ運営管理機関(金融機関)を選び、6カ月という移換手続きの期限にもギリギリ間に合わせたという状況でした。

しかし、2017年1月以降、iDeCoの対象範囲が拡大されたことに伴ってメディアなどでiDeCoがクローズアップされるようになると、Aさんは「これでよかったのかな」と、にわかに不安になってきたのです。

もしかして、手数料を払いすぎ?

iDeCo口座で掛け金を積み立てていく場合、毎月手数料がかかります。その内訳は①国民年金基金連合会に支払う手数料(月103円、年間1,236円)、②事務委託先金融機関手数料(月64円、年間768円)、③金融機関に支払う運営管理機関手数料の3つです。

このうち①と②はどの金融機関で口座を開設しても一定です。つまり、月々167円(年間2,004円)は必ずかかることになります。加えて、iDeCo口座を開く金融機関に対して③の手数料を払うのですが、これが金融機関によって大きく異なるのです。

Aさんが改めてiDeCo口座の手数料を確認してみると、金融機関に支払う③の手数料は月に300円以上かかっていました。①②③のすべての手数料を合わせると年間6,000円近くにもなっていたのです。

一方、最近では③の手数料を無料にする金融機関が次々と出てきています。「金融機関に支払う手数料だけで年間4,000円近い差が出てくるのはもったいないのでは?」、そうAさんは考え始めたのだそうです。

商品ラインナップと信託報酬、これでいいの?

iDeCoを調べていくうち、Aさんは商品ラインナップも気になり始めました。というのも、AさんがiDeCo口座を開設している金融機関では、ラインナップされている投資信託の信託報酬が少し高いように感じられたのです。

「長期で運用するなら信託報酬は安いほうがいいのではないだろうかと考えました」と、Aさん。何社かの金融機関から資料を取り寄せ、毎月の口座管理にかかる手数料、投資信託のラインナップとその信託報酬を検討したうえで、Aさんはこの夏に金融機関を変更したということです。

iDeCoの運営管理機関(金融機関)の変更手続きと注意点

iDeCo口座の運営管理機関(金融機関)を変更する場合、新しくiDeCo口座を開設したい金融機関のサイトなどから変更に必要な書類を取り寄せ、必要事項を記入して返送することになります。過去に口座開設や移換の手続きをしたことがある方なら大きな問題なくできるでしょう。ただし、金融機関の変更に際しては、いくつか注意しておくべき点があります。

資産はいったん、すべて現金化される

金融機関を変更するときには、いったんすべての資産が現金化されます。この現金化のタイミングは指定することができませんので、運用商品によっては元本割れする可能性があります。また、信託財産留保額(投資信託の解約にかかる手数料)が設定されている商品を運用していた場合は、現金化によってこのコストがかかります。

手続き完了までには約2カ月かかる

手続きがすべて完了するまでには、新たにiDeCo口座を開く金融機関に対して変更届を出してから2カ月ほどかかります。この手続きの期間中は運用ができませんので、せっかくの投資機会を逃すこともありえます。また、提出した書類に不備があった場合などは、さらに時間がかかってしまうので注意が必要です。

金融機関の変更にあたって手数料が発生する場合がある

iDeCo口座を他の金融機関に変更する際、金融機関によっては手数料が必要な場合があります。資産の目減りにつながるので、変更にあたって必要な手数料は調べておきたいところです。

まとめ

いかがでしたか。最初にきちんと比較したうえで金融機関を選べればベストですが、Aさんのようにあとから変更を考えることもあるでしょう。ただし、変更には手間もかかりますしデメリットもあります。変更を検討する場合は、手数料などを総合的に勘案し、現在よりも大きなメリットを得られるかどうか、という視点から考えてみてはいかがでしょうか。

 

>>楽天証券のiDeCoについて詳しくみる(初心者でも厳選ファンドから選びやすい)

>>SBI証券のiDeCoについて詳しくみる(品揃え抜群。選べるファンドが多い)

LIMO編集部