2023年最新の公示地価が2023年3月23日に公表されました。

毎年1月1日における「不動産の自由な取引において通常成立すると認められる適正な価格」を国土交通省が判定・公表するのが「地価公示」。全国26,000の標準地点で算出されています。

ウィズコロナの時代へ突入した2022年からの1年間、不動産価格がどのように変化したのか要注目です。物件購入・売却を考えている方にとって非常に参考になる地価公示の注目ポイントを徹底解説していきましょう。

公示地価の基礎知識について詳しくは以下の記事を参考にしてください。

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2023年公示地価の注目ポイントを徹底解説!

【全国】公示地価変動率

全国平均では、全用途平均・住宅地・商業地で2年連続、工業地で7年連続上昇し、かつ上昇幅が拡大しています。
地方四市以外の地方圏を含め、全地域でプラスになったことが注目ポイントでしょう。

【東京圏】公示地価変動率

(※国土交通省が示す「東京圏」に含まれる市区町はこちらを参照ください)

参考:国土交通省「令和5年地価公示」<説明資料>46-1「地価変動率の推移」
東京都「令和5年 地価公示価格(東京都分)の概要」より編集部作成

東京都全域では、標準地点2,570地点中2,412地点で価格が上昇しました(2022年の価格上昇地点は1,814地点)。一方下落した標準地は35地点です(2022年の価格下落地点は304地点)。

【住宅地】

23区は2年連続全区でプラスになっています。
上昇率トップは

  • 1位 台東区4.8%(2022年1.8%)
  • 2位 豊島区4.7%(2022年2.6%)
  • 3位 中野区4.6%(2022年2.1%)

でした。

多摩地区では、2022年の地価公示でマイナスだった6市町もプラスとなり、全市町で変動率がプラスに。東京都全域での住宅地地価上昇率No.1は東京都足立区綾瀬駅周辺の+8.1%でした。

【商業地】

23区では、2022年の公示地価でマイナスだった3区もプラスとなり、全23区で変動率がプラスに。最も上昇率が高かったのは+5.2%の中野区、北区、荒川区でした。

多摩地区では、2022年の公示地価でマイナスだった7市もプラスとなり、全市町で変動率がプラスに。最も上昇率が高かったのは+4.1%の調布市でした。

東京都全域での商業地地価上昇率No.1は東京都台東区浅草地区の+8.8%でした。

【大阪圏】公示地価変動率

大阪圏での住宅地における平均変動率は+0.7%で2年連続上昇、かつ上昇幅が拡大しています。商業地は+2.3%で3年ぶりの上昇、工業地は+4.0%で8年連続上昇かつ上昇幅が拡大しました。

大阪市地域では、住宅地+1.6%、商業地+3.3%、工業地+3.6%。特に商業地は2022年の-1.1%からプラスに転じ、大きく上昇しています。

大阪圏全体の住宅地における地価上昇率No.1は奈良県奈良市大和西大寺駅周辺の+10.3%、商業地における地価上昇率No.1は大阪府堺市美原区、河内松原駅周辺の+13.6%でした。

【名古屋圏】公示地価変動率

名古屋圏における住宅地の平均変動率は+2.3%、商業地+3.4%、工業地+3.3%でいずれも2年連続上昇かつ上昇幅が拡大しています。

名古屋市地域では、住宅地+3.7%、商業地+5.0%、工業地+5.8%で、いずれも2年連続の上昇。東京23区や大阪市よりも大きな上昇率を記録しました。

名古屋圏全体の地価上昇率No.1は、住宅地・商業地ともに名古屋市、久屋大通駅周辺です。

【地方四市】公示地価変動率

札幌・仙台・広島・福岡を指す地方四市。いずれも再開発が進み、地価公示の上昇率が非常に高い特徴があります。

※()内は2022年の地価公示変動率

札幌市では住宅地・商業地ともに10年連続上昇、仙台市・福岡市でも住宅地・商業地ともに11年連続上昇と、地方四市は三大都市圏を超える勢いで上昇傾向が続いています。

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【地方圏】公示地価変動率

2023年の地価公示では、地方四市を除くその他の地方圏でも全用途において前年のマイナスからプラスに転じました。

住宅地は+0.4%。地方四市を除くその他の地方圏で住宅地の平均変動率がプラスになるのは28年ぶりです。商業地は+0.1%で3年ぶりの上昇、工業地は+1.4%で5年連続の上昇かつ上昇幅拡大となりました。

【都道府県別・住宅地】公示地価変動率

住宅地で変動率がプラスになった都道府県は24、マイナスは22でした。

最大は北海道の+7.6%、最小は和歌山県の-1.2%。プラスの地域では上昇幅の拡大、マイナスの地域でも下落幅の縮小が見られています。

【都道府県別・商業地】公示地価変動率

商業地で変動率がプラスとなった都道府県は23、マイナスも23都道府県でした。

最大は福岡県の+5.3%、最小は鳥取県の-1.4%。住宅地と同様、プラスの地域では上昇幅の拡大、マイナスの地域でも下落幅の縮小が見られています。

【変動率上位TOP10】北海道が独占!

住宅地・商業地ともに変動率上位TOP10はすべて北海道が独占。特に、再開発が進み利便性向上に期待が高まる北広島市が上位に挙がっています。

北広島市と同様TOP10以内に多く挙がっているのが江別市。札幌市内の不動産価格が高騰していることから、その周辺の江別市にも需要が流れ、地価が上昇しているようです。

【公示価格上位TOP10】銀座地区の変動率大きくプラスに転向

2022年の地価公示と比べて順位変動はありませんでした。
1位の港区赤坂地区は、高級分譲マンションが多く建てられる地域のため需要が高く、地価が高騰しています。

2022年の地価公示では、TOP10のほとんどの商業地が変動率マイナスでしたが、2023年にはTOP10すべての地区でプラスもしくは横ばいとなりました。

東京銀座地区ではコロナ禍で停滞していた消費活動や人の流れに回復傾向が見られ、今後インバウンドも本格的に復活してくるのではという期待感から地価が上昇しています。

2023年最新の地価公示から分かる3つのこと

コロナ禍での景気回復傾向が顕著に

2022年、コロナ禍にあっても緩やかな景気回復傾向が表れ始めたことで、都心部を中心により強い価格上昇が見られ、その上昇幅も拡大しています。その流れが地方部にも広がり、地方圏でもプラスに転じた地点が増加しました。

国内観光客数の回復や海外からの旅行者の今後の増加への期待から、観光地や繁華街でも地価が上昇。

コロナ禍で変わった人々の生活スタイルにより郊外へ需要が広がっており、価格が高騰する都市部周辺の市町で顕著な地価上昇が起きているのも大きな特徴でしょう。

テレワークなどの導入で引き続き高い住宅需要も見られています。

三大都市圏・地方四市の上昇率がさらに拡大

2023年地価公示の特徴の1つに、再開発事業が進む三大都市圏・地方四市での顕著な上昇幅拡大が挙げられるでしょう。
強いオフィス需要・マンション需要から、住宅地・商業地ともに地価上昇が継続しています。

いずれも都市中心部では価格高騰が起きているため、比較的割安感のあるその周辺市町に需要が拡大。周辺市で大きな地価上昇傾向が見られています。

人の流れ、観光客数の回復から、大阪市梅田地区・道頓堀地区、札幌市すすきの地区、東京銀座地区などでは2022年の下落から一転プラスに。三大都市圏・地方四市の上昇率拡大の大きな要因となっていると考えられます。

実は多い下落地点……「二極化」がより鮮明に

先述の通り、全国的に公示地価は上昇傾向にあります。ただし実は上昇が見られた地点と同じくらい下落地点が存在しているのです。

上記の表からは、三大都市圏や地方四市では上昇エリアが圧倒的に多いものの、地方圏ではむしろ下落地点が上昇地点を上回っていることが分かります。

こうした「二極化」は、全国的に見ても都道府県単位で見ても同様の傾向があります。

たとえば住宅地・商業地ともに変動率上位TOP10を占める北海道。
実は変動率下位ワースト10にも住宅地・商業地ともに北海道エリアが多く入っているのです。

また地方四市の1つである仙台市。
仙台市とその周辺市町村は圧倒的に地価上昇地点が多いものの、その他の地域は下落地点が多い結果となっています。

都市部ではバブル期を超えるような価格上昇が見られるエリアもあるものの、それは全国で見ればほんの一部。人口減少や高齢化で地価下落が進む地方圏も実は多いのです。

2023年の地価公示では「地価上昇地域」「地価下落地域」の差が開く「二極化」がより鮮明に出現したといえるでしょう。

景気回復を示すプラス要因とともに注視したい「二極化構造」

住宅の購入・売買や不動産投資をする際に参考にしたい地価公示。全国的に地価は上昇傾向にあり景気回復が見られることから、不動産取引を検討している人にはいいタイミングかもしれません。

ただしエリアによって上昇と下落の差が激しい二極化構造が鮮明になっているため、購入する地域の地価変動に注視し、よく検討する必要があるでしょう。

※この記事はLIFULL HOME'S 不動産投資コラムより提供を受けたものです。

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LIFULL HOME'S 不動産投資編集部