岸田政権は「異次元の少子化対策」を公表し、その中で「児童手当の拡充」が掲げられています。

今年の3月に公表されたこども政策担当大臣「こども・子育て政策の強化について(試案)」で、児童手当の拡充案について触れられており、6月の「経済財政運営と改革の基本方針 2023」(「骨太の方針 2023」)に向けて具体的に検討されます。

児童手当については、かねてから所得制限など問題がいくつか疑問視されていました。

では、具体的に拡充案ではどのような内容に触れられているのでしょうか。今回は児童手当の拡充案と問題について確認していきます。

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児童手当の拡充案1.児童手当の支給対象

まずは内閣府「児童手当制度のご案内」より、現行の児童手当制度と拡充案も一つずつ確認していきましょう。

現行の児童手当の支給対象は、「学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している方」です。

出所:内閣府「児童手当制度のご案内」

一方で、2023年5月31日に公表された「こども・子育て政策の強化について(試案)」において、支給の対象を高校卒業(18歳)まで引き上げることを検討していると明らかにしました。

児童手当の拡充案2.児童手当の支給額

児童手当の支給額は以下のとおりです。

児童手当の月額

  • 3歳未満:一律1万5000円
  • 3歳以上小学校終了前:1万円(第3子以降は1万5000円)
  • 中学生:一律1万円

ただし、次で触れますが、児童手当には所得制限があります。

また今回の拡充案では、多子世帯の減少などを踏まえて、諸外国の制度等も参考にしつつ手当額を見直しすると言及されています。

児童手当の拡充案3.児童手当の所得制限

では、児童手当の所得制限について確認しましょう。

出所:内閣府「児童手当制度のご案内」

たとえば夫婦(片方が年収103万円以下の配偶者)と児童2人の世帯の場合、世帯主の年収が960万円以上で特例給付となり月額5000円に減額、また年収1200万円を超えると支給されません。

この所得制限についても以前から問題視されており、撤廃する方向で検討されるとのことです。

児童手当については、所得制限があること、また所得制限が世帯年収でなく年収であることなどいくつか疑問視されている点があります。

今回の拡充案で所得制限の撤廃や支給が高校卒業までとなれば、これまで問題とされていたことも解決される方向に向かうでしょう。

一方で、支給額や、生まれた月によって受け取れる額が異なることなどについて疑問視される部分は残る場合もあると考えられます。

大学無償化制度や奨学金、教育ローンとは

教育費の中でも基本的に最も費用がかかるといわれる大学費用。

預貯金や学資保険、資産運用などさまざまな方法で備える方もいますが、状況によっては備えられない場合もあるでしょう。最後に大学無償化制度、奨学金、教育ローンについても確認します。

大学無償化制度

「高等教育の修学支援新制度」、いわゆる大学無償化は、大学や短大、専門学校などの授業料や入学金が免除もしくは減額される制度です。

また、学生生活費として日本学生支援機構(JASSO)から給付型奨学金も受け取れます。支援額は世帯収入により3段階に分けられています。

ただし所得制限があり、住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯が対象ですが、こちらもこども政策担当大臣「こども・子育て政策の強化について(試案)」にて、令和6年度から多子世帯や理工農系の学生等の中間層(世帯年収約600万円)に拡大する予定だと言及されています。

奨学金

政府や地方自治体、民間団体などさまざまな機関が奨学金を準備しています。最も有名なのは日本学生支援機構でしょう。

日本学生支援機構が提供する奨学金には返済不要の「給付奨学金」と要返済の「貸与型奨学金」があり、後者は返済を求められる点に注意しましょう。

また、大学が独自の奨学金制度を設置していることがあるので、所属する大学に問い合わせしましょう。

教育ローン

教育ローンは、親が債務者となり、子どもの教育費を借りるもので、主に民間の金融機関が提供しています。

国も日本政策金融公庫を通じて、教育ローンを提供し、「固定金利」「長期返済」などを特徴としています。

出所:政府広報オンライン「お子さんの進学・在学資金を支援!国の教育ローンをご利用ください」

このようにさまざまな方法で大学などの費用を備えることも可能です。

まとめにかえて

子育て世帯は教育費だけでなく、住宅ローンや老後資金といった三大支出を抱えるご家庭が多いでしょう。

教育費ひとつだけみても多額となり、学校の中でも基本的には大学費用が最もかかると言われています。

児童手当の支給対象が18歳まで引き上げられることになれば、家計には助けとなりますが、児童手当だけでは不足することがほとんどでしょう。

児童手当を含めて、さまざまな情報収集を重ねて対策をとっていくようにしましょう。

参考資料

宮野 茉莉子