一般社団法人高齢者住宅協会は、2023年5月16日に「サービス付き高齢者向け住宅の最新動向」を公開しました。

「サービス付き高齢者向け住宅(=サ高住)」とは、主に要介護度が低い高齢者を対象にした賃貸住宅です。

2023年4月末時点で、全国に8209棟のサ高住が登録されており、年々増加し続けています。

利用にあたって、費用はいくらかかるのでしょうか。

本記事では、サ高住を利用する場合の費用を解説し、主な収入が「厚生年金と国民年金」という年金生活者の平均的な収支からサ高住を利用する場合に、貯蓄を切り崩す必要があるか解説します。

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1. サービス付き高齢者向け住宅の費用

サ高住は、自由な生活をしながら安否確認や生活相談を受けられる住宅です。

一般的な介護施設との違いとして、食事や介護の提供といったサービスは、入居者が別で契約する必要があります。

出所:厚生労働省「サービス付き高齢者向け住宅について」

最近は、介護サービスを提供してもらえる「介護型」のサ高住も増えているので、従来のサ高住を「一般型」として分類しています。

  • 一般型:安否確認と生活相談は実施されるが、介護サービスは別途契約
  • 介護型:安否確認と生活相談を含め、食事や介護サービスも提供

サ高住を利用する場合の費用は、施設によって異なりますがおよそ「15万円~40万円」が相場です。

  • 一般型:15万円~30万円(別途、介護保険サービス利用費)
  • 介護型:15万円~40万円

2014年に厚生労働省が調査した有料老人ホームとサ高住の利用料金を比較すると、サ高住の利用料金の平均が、有料老人ホームより約5万円割安となりました。

出所:厚生労働省「サービス付き高齢者向け住宅等の月額利用料金」

また、有料老人ホームと違って初期費用をかけずに入居できる点が魅力です。

では、実際に年金生活に入った場合に、サ高住に入居できるのか確認してみましょう。

2. 厚生年金と国民年金の収入(6月支給分から)

厚生年金と国民年金の収入を見ていきましょう。

2023年6月から支給される年金額は、国民年金と厚生年金で以下の通りになりました。

出所:日本年金機構「令和5年4月分からの年金額等について」

国民年金だけであれば、本人と配偶者で満額を受け取れたとしても13万2500円となります。

サ高住へ入居したい場合、物件はある程度の制限を受ける可能性が高いでしょう。

標準的な厚生年金を受給する場合も、入居したい物件によっては貯蓄の切り崩しが必要です。

実際に貯蓄を切り崩す必要がある場合、いくら貯蓄をしておくべきなのか、収入と支出の状況から必要な資金を計算してみましょう。

3. サ高住に入居する場合に必要な貯蓄額

サ高住に入居する場合に不足する費用についてシミュレーションします。

65歳から85歳まで夫婦で年金を受給した総額は、次の通りです。

  • 国民年金:13万2500円×12ヵ月×20年=3180万円
  • 厚生年金:22万4482円×12ヵ月×20年≒5387万円

65歳から85歳までサ高住に入居した場合の費用を「15万円」「25万円」「40万円」でそれぞれ計算します。

  • 15万円:15万円×12ヵ月×20年=3600万円
  • 20万円:20万円×12ヵ月×20年=4800万円
  • 25万円:25万円×12ヵ月×20年=6000万円
  • 30万円:30万円×12ヵ月×20年=7200万円
  • 35万円:35万円×12ヵ月×20年=8400万円
  • 40万円:40万円×12ヵ月×20年=9600万円

利用料金ごとの過不足は、下表の通りです。

出所:筆者作成

国民年金だけだと、貯蓄は切り崩す必要があるといえるでしょう。

厚生年金を受け取っている場合でも、入居したい物件によっては貯蓄を用意しておく必要があります。

4. 年金の収入によってはサ高住への入居も視野に検討

サ高住に関する費用と年金収入で入居できるか解説しました。

サ高住は、賃料が安い物件もあるので、年金収入しかなくても入居できる可能性はあります。

生活における自由度が高いので、自分に合ったプランやサービスをカスタマイズできる点もメリットです。

とはいえ、たいていのケースは年金収入だけでは生活資金は不足します。

サ高住に入居する場合は、貯蓄を切り崩す前提で考えておくと良いでしょう。

また、サ高住は要介護度が上がると施設を退去させられる可能性もあります。

サ高住を検討する場合は、要介護度が上がった場合も含めて相談してください。

参考資料

川辺 拓也