夫の扶養に入りながら働く主婦の場合、育児や家事と両立する目的から、フルタイムではなく、アルバイトやパートを選択する方も多いです。

扶養内に入りながらアルバイトやパートをする際、「103万円の壁」や「130万円の壁」などを気にしながら働く主婦もいるのではないでしょうか。

一定の年収額を超えてしまうと、税金負担が増えたり、社会保険の加入の有無が変わったりするため、「本当は働きたいけど収入を抑えている」という人は少なくありません。

そこで今回は、アルバイトをしている主婦を対象にした「年収の壁」に対する本音調査の結果を紹介しています。

主婦層が「より働きたいと思っている理由」も掲載しているので、今後のキャリアの参考にしてみてください。

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約6割の主婦は「年収の壁」を超えないよう就業調整を行っている

そもそも「年収の壁」とは、世帯主の扶養に入っている主婦が一定以上の年収額に達すると税金や社会保険料の負担が増えることから、各年収ごとに「◯◯の壁」と呼ばれています。

具体的な年収の壁として、下記が挙げられます。

  • 年収103万円の壁:自身の所得税がかからないボーダーライン
  • 年収130万円の壁:社会保険の加入有無のボーダーライン
  • 年収150万円の壁:夫の配偶者特別控除の控除額が段階的に減額されるボーダーライン

上記以外にも、「100万円の壁」「106万円の壁」「201万円の壁」など、年収の壁は多くあります。

では、扶養内で働く主婦層は、上記の年収の壁に対してどのように感じているのでしょうか。

株式会社マイナビは、20〜50代の既婚女性を対象に「主婦のアルバイト調査」を実施し、2023年5月12日に公表しました。

調査概要は下記のとおりです。

  • 調査地域:全国
  • 調査方法:インターネット調査(「アルバイト就業者調査(2023年)」より主婦サンプルのみ抽出し算出)
  • 実施期間:2023年2月15日(水)~2月20日(月)
  • 対象者:20~50代の既婚女性
  • 回収数:就業者1753サンプル、非就業者1645サンプル
  • ウェイトバック方法:「平成29年就業構造基本調査」の結果を元にウェイトバックを行った
  • リリース公開日:2023年5月12日

上記調査の結果、約6割の主婦は、年収の壁を超えないように就業調整を行っていることがわかりました。

出所:株式会社マイナビ「マイナビ、「主婦のアルバイト調査(2023年)」を発表」

就業調整をしている主婦層のなかで、特に「年収130万円の壁」を超えないように就業調整をしている人が多く、次いで「年収103万円の壁」を超えないように調整する人が多い結果となりました。

一方で、就業調整をしていないと回答した人は44.9%であり、前年と比較すると4.2ポイント増加しています。

2022年10月に社会保険適用が拡大したことで、アルバイト・パートの主婦層の保険加入がしやすくなったことから、以前よりも就業調整をせずに働く人が増加していると考えられます。

とはいえ、依然として就業調整をしている人のほうが多いことから、「年収の壁」に悩む人は一定数いるようです。

約6割の主婦が年収の壁が撤廃されたら「もっと働きたい」と回答

株式会社マイナビの就業調整を行っている人に対する調査では、58.4%の主婦が「年収の壁」が撤廃された場合に、現状よりももっと働きたいと回答しています。

出所:株式会社マイナビ「マイナビ、「主婦のアルバイト調査(2023年)」を発表」

年代別においては、20代が70.3%で最多となり、次いで30代で64.8%と若年層の就労意欲が高いことがうかがえます。

とはいえ、どの年代においても半数以上が「もっと働きたい」と回答しており、年収の壁制度の撤廃を望む人は多いのかもしれません。

現在よりもっと働きたい理由として「貯金をするため」が最も多く、73.2%という結果となりました。

出所:株式会社マイナビ「マイナビ、「主婦のアルバイト調査(2023年)」を発表」

近年、物価高や年金問題がメディアで多く取り上げられるようになったことから、将来への不安から貯金をよりしたいと考える人が多いようです。

また、子どもがいる世帯においては子どもの教育費もかかることから、「年収の壁を気にせず働けるならもっと働きたい」という主婦が多いと考えられます。

若年層ほど老後資産に不安を感じている

前章で、年収の壁が撤廃された場合に「もっと働いて貯金をしたい」という人が、どの年代においても多いことがわかりました。

株式会社マイナビの調査による「老後に働かなくても暮らしていける程度の資産を保有していると思うか」というアンケート調査では、66.9%「全く足りないと思う」と回答しており、老後資金の不足を不安視する声が挙げられました。

出所:株式会社マイナビ「マイナビ、「主婦のアルバイト調査(2023年)」を発表」

年代別では、「保有していると思う」と回答した割合が50代で最も高く、20代が最も低い結果となっており、若年層ほど貯金額に不安を持っていることがわかります。

数年前に「老後2000万円問題」が話題となったことから、将来に対する不安を抱えている人が多いのかもしれません。

では実際問題、各年代の夫婦世帯において、どのくらいの貯蓄額が目安となるのでしょうか。

金融広報中央委員会の調査した「二人以上世帯の貯蓄額の平均・中央値」は下記の結果となりました。

出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和4年)」をもとに筆者作成

20代の平均は214万円ですが、30代、40代、50代になるにつれて、526万円、825万円、1253万円と貯蓄額が増加しています。

貯金の増加にともない、老後資金に対する不安感が徐々に少なくなっているのかもしれません。

ただし、必要となる老後資金は各世帯のライフスタイルによって異なるため、2000万円は絶対的な金額ではありません。

「老後資金が不安だからもっと働きたい」と考えている場合は、一度もらえる年金額と老後の生活費を計算し、本当に必要な老後資金をシミュレーションしてみると良いでしょう。

主婦層の本音からわかる今後の日本の課題とは

本記事では、アルバイトをしている主婦を対象に、「年収の壁」に対する本音を紹介していきました。

約6割の主婦は、年収の壁を超えないように就業調整を行っており、そのうちの6割が年収の壁が撤廃されたら「もっと働きたい」と回答しています。

政府は、労働人材の不足や少子化対策の観点から、年収の壁の見直しを検討する動きを見せ始めています。

主婦層が「もっと働きたい」と感じている理由が、老後資金を始めとした貯蓄額への不安視であることから、年収の壁の見直しとともに物価高や年金問題への政策案も進むよう期待が集まっています。

参考資料

太田 彩子