2023年1月20日、厚生労働省は67歳以下の年金額を、2023年度に2.2%引き上げると発表しました。
3年ぶりに年金額の引き上げとなりましたが、他に年金の受取額が増える制度や特例はあるのでしょうか。
本記事では、年金額の受給額が増える制度の1つ「厚生年金の44年特例」をはじめ、自身で年金を増やす方法について解説します。
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1. 厚生年金「44年特例」とは?
厚生年金の「44年特例」とは「特別支給の老齢厚生年金」の受給資格がある人のうち、特定の条件を満たした人の年金額を増やす制度です。
「特別支給の老齢厚生年金」は、老齢年金の支給を60歳から65歳に引き上げた際、受給開始年齢を段階的に引き上げる制度として設けられました。
特別支給の老齢厚生年金を受け取るためには、次の要件を満たす必要があります。
- 男性は1961年4月1日以前に生まれていること
- 女性は1966年4月1日以前に生まれていること
- 老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があること
- 厚生年金保険等に1年以上加入していたこと
上記に加えて、生年月日に応じた受給開始年齢に達している必要があります。
それぞれの生年月日に応じた受給開始年齢は、下図を参考にしてください。
一般的に、特別支給の老齢厚生年金は「報酬比例部分」が支給される制度です。
しかし、以下の条件を満たす人は「報酬比例部分」に加えて「定額部分」を合わせて受給できます。
- 厚生年金保険の被保険者期間が44年以上
- 厚生年金の被保険者資格を喪失している
被保険者期間として対象になるのは「厚生年金」のみです。
「公務員共済」や「私学共済」といった加入期間は含まれないので、注意しましょう。
以上から、厚生年金の「44年特例」とは、特別支給される老齢厚生年金で「定額部分」も合わせて受け取れる特例制度だとわかります。
2. 厚生年金「44年特例」に当てはまる人
前章で解説した内容をまとめると、厚生年金の「44年特例」は、以下の要件に当てはまる人が対象となります。
- 特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分を受給している人
- 厚生年金の被保険者期間が44年以上ある人
- 退職して厚生年金に加入していない人
すでに65歳に到達している人や、1961年4月2日(女性は1966年4月2日)以降に生まれた人、まだ厚生年金に加入している人は「44年特例」の対象外です(ただし一部例外あり)。
また、大学を卒業して22歳から厚生年金に加入しても、44年後は66歳になっているので「44年特例」を受けられません。
中学か高校を卒業してすぐに厚生年金に加入する必要があるので、この時点で対象となる人は限定されるでしょう。
3. 年金額を増やす方法3選
老後の生活では、年金も貴重な生活の財源となります。
いざという時に困らないように、年金額を少しでも増やす努力や工夫は必要でしょう。
年金額を増やす方法は、次の3つです。
- 収入を上げる
- 未納期間をなくす
- 繰下げ受給をする
それぞれの方法について確認していきましょう。
3.1 収入を上げる
会社員の場合、収入に応じて厚生年金の保険料が変わります。
一般的に収入が増えると保険料も増えますが、これにより将来受給できる厚生年金額も増やせます。
給与収入は、会社の規模や役職などが影響して、すぐには上がらない場合もあるでしょう。
まずは「いつまでに」「いくら」収入を上げられるか目標を明確にしてください。
達成できる見通しがたたないようであれば、転職をしてキャリアアップを図るのも1つの手です。
さまざまな観点から収入を上げる方法を考えておきましょう。
3.2 未納期間をなくす
年金の未納期間をなくすのも年金額を増やす方法です。
保険料の免除や納付特例の承認を受けた期間があれば、保険料を納付して将来の年金額を増やしておきましょう。
一般的に、年金の未納分を納付できる期間は、免除や納付特例の承認を受けたタイミングから10年と定められています。
期限が迫っている場合は、早めに納付しておきましょう。
3.3 繰下げ受給をする
年金の繰下げ受給によって、受給額を増やす方法もあります。
年金を受け取る年齢を1年繰り下げた場合、年金の増額率は8.4%です。
それ以降、増額率は1年ずつ繰り下げるごとに、8.4%ずつ増加します(最大75歳まで)。
年金にすぐ頼る必要がなければ、受給額を増やすために繰り下げ受給を検討するのも良いでしょう。
4. 老後資金は計画的な準備と対策が必要
厚生年金の44年特例をはじめ、年金額を増やす方法について解説しました。
とはいえ、老後に必要な生活費は、年金だけでまかなうのは難しいでしょう。
年金を増やす方法だけに注力せずに、投資や資産運用で生活資金を増やし、不要な支出を減らすといった工夫が必要です。
収入と支出のバランスを考えて、計画的に老後の準備や対策をしましょう。
参考資料
川辺 拓也