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(初公開日:2021年5月23日)

平時であればレジャーや帰省で心がおどるはずのゴールデンウイーク・・・のはずが「コロナ2年目」の春もまた、私たちは昨年同様、緊急事態宣言下で過ごすことを余儀なくされました。

こうした状態が続くことによる日本経済への影響は、今後、加速度的に表面化するかもしれません。

帝国データバンクが公表する倒産集計一覧によると、2020年の倒産件数は7809件。2021年は4月までの集計で2085件にのぼりました。

勤め先の倒産は、人生計画を大きく左右します。なかには明日の生活に直結するような影響を受けることもあるでしょう。ひとり暮らしの方の場合は、より心細さが増すかもしれません。

私は、国内の大手生命保険会社の勤務経験を経て、フィナンシャルプランナーとして1000世帯以上のお客様のフィナンシャル・プランニングに携わってきました。その経験をいかして、平時のゆとりにも非常時の備えにもなる貯金について、本当のところを見ていきたいと思います。

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1. 家計の貯金額は過去最高を更新。その内訳は…?

テレビやニュースにて「コロナ不況」の報道が続くなか、家計の貯金額は過去最高を更新しました。「ちょっと意外」と感じた方もいらっしゃるでしょう。

日本銀行の「2020年第4四半期の資金循環(速報)」調査によると、2020年12月末時点の家計の金融資産合計額は1948兆円です。2019年12月時点の1893兆円とくらべると、1年間で55兆円も増加しています。

元々貯金好きで知られる日本人ですが、レジャー・外食など個人消費の花形産業が営業制限を受け続けていることや、先行き不安な状況が「お金を使わないで貯金する」という流れを後押ししていることが考えられそうですね。

なお、個人家計の金融資産の内訳は以下のようになっています。「その他」以外については比率が高い順番にならべました。

1.1 家計の金融資産合計「1948兆円」の内訳

「現金・預金」…1056兆円(54.2%)
「保険・年金・定型保証」…531兆円(27.3%)
……うち保険…376兆円(19.3%)
「株式等」…198兆円(10.2%)
「投資信託」…78兆円(4.0%)
「債務証券」…26兆円(1.4%)

「その他」…59兆円(3.0%)

「現金・預金」の比率が54.2%でダントツの1位でした。第2位は「保険・年金・定型保証」の「うち保険」(19.3%)、第3位は「株式等」(10.2%)と続きます。

全体の状況を見る限り、2020年の家計の貯蓄は好調に思われます。では、ひとり暮らしの世帯の場合、実際にいくらの貯金があるのでしょうか。

2. 勝ち組の印?ひとり暮らしで「貯金1000万円」は何割いるのか

「将来のためにできるだけ貯金は増やしておきたい」という気持ちは、私たちみんなに共通するものでしょう。ここからは、ひとり暮らし世帯の貯金額を詳しく見ていきます。

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 令和2年調査結果」から抜粋します。貯金1000万円を目標としている方は参考にしてみてください。

2.1 単身世帯の金融資産保有額
(金融資産を保有していない世帯を含む)

全国平均:653万円
全国中央値:50万円

2.2 単身世帯の金融資産保有額分布
(金融資産を保有していない世帯を含む)

金融資産非保有:36.2%
100万円未満:17.2%
100~200万円未満:6.9%
200~300万円未満:4.3%
300~400万円未満:4.0%
400~500万円未満:2.9%
500~700万円未満:5.1%
700~1000万円未満:4.3%
1000~1500万円未満:4.5%
1500~2000万円未満:2.6%
2000~3000万円未満:3.1%
3000万円以上:5.6%
無回答:3.4%

この資料でまず初めに驚く点は、平均と中央値の差の大きさではないでしょうか。

平均は一部の高い数値に該当する人が全体の平均を引き上げる傾向があるため、一般には中央値の方が実際の生活での体感に近いといわれています。

全国の平均と中央値では約600万円も貯金額に差があります。その要因は金融資産非保有者、いわゆる「貯金ゼロ」の方の割合が36.2%もあることでしょう。

今回のテーマである「貯金1000万円」以上のひとり暮らし世帯の割合は合計15.8%と、実に1割強しか該当しないことが分かりました。

貯金ゼロを含む金融資産100万円未満のひとり暮らし世帯が全体の53.4%をしめる中、「貯金が1000万円以上ある」、というひとり暮らしの方を「勝ち組」と呼ぶことはあながち間違いではなさそうです。

3. みんな、何のために貯金するのか

「お金」は私達の人生の主役ではなく「暮らしをより便利に」「より豊かに」「不安を解消する」ことができる道具のひとつです。

そこで、同資料から「金融資産の保有目的」についても見てみました。

3.1 金融資産の保有目的
(金融資産を保有していない世帯を含む)

(※3つまで複数回答可)

・老後の生活資金:42.9%
・病気や不時の災害への備え: 41.7%
・とくに目的はないが、金融資産を保有していれば安心: 27.0%
・旅行、レジャーの資金: 17.8%
・耐久消費財の購入資金: 8.7%
・住宅の取得または増改築などの資金: 4.5%
・納税資金: 2.2%
・こどもの教育資金:1.6 %
・遺産として子孫に残す: 1.7%
・こどもの結婚資金:0.8 %

・その他:18.7%

「病気や不時の災害への備え」と「老後の生活資金」が他の項目を大きく離して回答を集めました。

貯金額の中央値が50万円というデータと合わせて考えると、現在の貯金額や貯蓄のペースで、健康上のアクシデントや長い老後生活に対応できるのか、不安を感じられる方が多いのでしょう。

4. ひとり暮らしが意識したい「資産運用のバランス」

今回は、ひとり暮らしで貯金1000万円を持っている方の割合について触れたあと、貯金をする目的について眺めてきました。

この超低金利の時代、銀行などに漠然と預貯金を持つだけでは、お金を増やすことは難しいと実感されている方も多いでしょう。

そんな今こそ、マネープランに「資産運用」を取り入れる良い機会かもしれません。興味がある方はチャレンジなさってみてはいかがでしょうか。

また、けがや病気、そして自然災害などは「突然」襲ってきます。ときには費用が高額となり、貯金だけではカバーしにくい場合あるでしょう。ポートフォリオに保険商品を組み込み、「まさかのとき」の保障を準備しておく視点も、安心に繋がる一つの方法といえそうです。

それぞれの金融商品の強みをうまく組み合わせて、バランスの取れた資産運用を目指しましょう。

【ご参考】貯蓄とは

総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。

参考資料

尾崎 絵実