公益財団法人 日本生産性本部の調査によると、新型コロナウイルス感染症が拡大していた2020年5月のリモートワークの実施率は31.5%でした。

しかし、2023年1月の実施率は16.8%と半減しています。

新型コロナウイルス感染症の影響によって、多くの企業でリモートワークが導入され、働き方の多様化が広がっていましたが、コロナ禍のピークが落ち着きつつある現代では、リモートワークの普及率が減少傾向をたどっています。

本記事では、新型コロナウイルス感染症の影響で多くの企業で普及した「リモートワーク」の現在の実態を紹介しています。

出社とリモートワークそれぞれの作業効率や、リモートワークのメリットなども紹介しているので参考にしてください。

約6割の会社員が「出社とリモートワーク」のハイブリット型の勤務体制

株式会社識学は、全国のリモートワークが可能な企業に対して「働き方の変化に関する調査」を実施しました。

調査概要は下記のとおりです。

  • 調査機関:株式会社識学
  • 調査対象:全国の従業員数10名以上のリモートワークが可能な企業(現状、リモートワークをしているかは関係なし)に勤める20歳~59歳の男女、会社員
  • また同じく、リモートワークが可能な企業の経営者・役員
  • 有効回答数:300サンプル(会社員:200名、経営者・役員:100名)
  • 調査期間:2023年3月20日(月)~22日(水)
  • 調査方法:インターネット調査
  • リリース公開日:2023年5月11日

上記調査の結果、60.0%の会社員が「出社とリモートワークのハイブリッド型」であることがわかりました。

出所:株式会社識学「【働き方の変化に関する調査】今の働き方、リモートワーク&出社のハイブリッド型が6割にのぼる」

「ハイブリット型」が60.0%である一方で、「フル出社型」は25.0%、「フルリモート型(全く出社することはない)」が15.0%という結果になっています。

新型コロナウイルス感染症の影響によってリモートワークが普及し、ピークが過ぎた現在もなお、その働き方は「ハイブリット型」として定着しつつあります。

ハイブリット型のリモートワークの頻度は「週に1日程度」

株式会社識学の調査では、現在の働き方の割合として「リモートワークと出社」のハイブリット型が最多となりましたが、どちらの働き方の割合のほうが多いのでしょうか。

株式会社識学の「ハイブリッド型のリモートワークの頻度」による調査では、リモートワークの頻度は「週に1日程度」が最多という結果になりました。

出所:株式会社識学「【働き方の変化に関する調査】今の働き方、リモートワーク&出社のハイブリッド型が6割にのぼる」

次いで多かったものとして「週に2日程度」「週に3日程度」であることから、ハイブリット型としてリモートワークを実施しているとはいえ、割合としては出社のほうが圧倒的に多いことがわかります。

ハイブリット型としてリモートワークが定着しつつあるも、依然として割合が出社より少ない背景として「情報セキュリティ対策」や「職場でしか閲覧できないデータがある」といった課題が挙げられます。

リモートワークを行う場合、社外の物品や通信環境を活用することが多くなるため、セキュリティ上の安全性が確保しにくくなります。

また、セキュリティを考慮して職場でしか閲覧できない資料やデータが多いことから、出社して仕事をせざるを得ない環境が続いているという現状も。

実際に、公益財団法人 日本生産性本部の「第12回働く人の意識に関する調査」では、リモートワークの課題として、上記の内容が挙げられていました。

そのほかにも、公益財団法人 日本生産性本部の同調査では、「部屋、机、椅子、照明など 物理的環境の整備」「Wi-Fiなど、通信環境の整備」なども課題として上位に挙げられています。

自宅に会社と同様の環境整備を準備することの難しさから、リモートワークのみの勤務体制がなかなか普及しにくいのかもしれません。

リモートワークの作業効率と実施メリットとは

約6割の企業が「出社とリモートワーク」のハイブリット型を選択していますが、それぞれの「作業効率」に違いはあるのでしょうか。

株式会社識学の調査によると、50%の人が「リモートワークのほうが作業効率が良い」と回答したのに対して、「出社のほうが作業効率が良い」と回答した人は32%となりました。

出所:株式会社識学「【働き方の変化に関する調査】今の働き方、リモートワーク&出社のハイブリッド型が6割にのぼる」

子どもの有無の内訳でみても「リモートワークのほうが作業効率が良い」と回答している人が多いことから、労働する側はリモートワークの選択を望んでいる人が多いのかもしれません。

リモートワークと出社は一見、働く場所が変わっただけに思えますが、果たしてリモートワークのメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

株式会社識学の同調査では、出社と比較した「リモートワークのメリット」として、約7割の人が「通勤の負担がなくなる」と回答しています。

出所:株式会社識学「【働き方の変化に関する調査】今の働き方、リモートワーク&出社のハイブリッド型が6割にのぼる」

リモートワークであれば、会社に通勤する必要がなくなるため、通勤時間を別の時間に活用できるのはリモートワークの大きな強みと言えます。

実際に、リモートワークのメリットの2位、3位が共に「ワイフワークバランス」「プライベート時間」に関する内容であることから、自分の時間をより有効活用できることをメリットと感じている人が多いようです。

一方で、リモートワークが続くと会社の人との関わりが少なくなることから、社員同士のコミュニケーションがしにくいことを不安視する人も少なくありません。

株式会社識学の同調査による「リモートワークと比較した出社のメリット」では、「社員同士のコミュニケーションが取りやすい」が最多となりました。

リモートワークでは自身の時間が確保できるメリットがある一方で、出社した場合と比較すると社員とのコミュニケーションが希薄になる難点もあります。

上記のような、どちらの良い部分も取り入れた現在の形として「出社とリモートワークのハイブリット型」が、定着しつつあるのでしょう。

今後の日本企業では「ハイブリット型」が定着していくのか

本記事では、新型コロナウイルス感染症の影響で多くの企業で普及した「リモートワーク」の現在の実態を紹介してきました。

新型コロナウイルス感染症の拡大により、急速に普及したリモートワークですが、コロナ禍が落ち着きつつある現代では、リモートワークのみの勤務体制が減少傾向となっています。

現在では「出社とリモートワークのハイブリット型」が多く採用されており、出社とリモートワークそれぞれの良さを取り入れた体制が定着しつつあります。

その一方で、株式会社識学の経営者・役員への調査では「コロナ禍でリモートワークを導入したが、今後は徐々に出社を増やしていく予定」と回答した人が19.0%いることから、今後徐々にコロナ禍前の勤務体制に戻っていくところもあるのかもしれません。

リモートワークを取り入れることで、勤務時間の負担がなくなりライフワークバランスが実現できる声が多いことから、労働者にとって働きやすい形が存続するよう、政府・企業の方針に期待が集まっています。

参考資料

太田 彩子