2023年5月12日に発表された、グンゼ株式会社2023年3月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:グンゼ株式会社 代表取締役社長 兼 社長執行役員 佐口敏康 氏
グンゼ株式会社 常務執行役員 経営戦略部長 岡高広 氏
グンゼ株式会社 執行役員 財務経理部長 澤田博和 氏
2023年3月期決算説明
佐口敏康氏(以下、佐口):本日は、ご多用中にもかかわらず弊社の決算説明会にお越しいただきまして、ありがとうございます。「Zoom」でご参加の方もいらっしゃるため、この会場とのハイブリッド形式で進めさせていただきたいと思います。
5月8日から新型コロナウイルス感染症もようやく5類に変更となり、次のフェーズへとまた一歩歩み出しましたが、やはり2023年3月期まではコロナ禍の影響は非常に大きなものでした。さらにウクライナでは戦争が勃発し、資源価格等にも影響しました。
それに伴う物流網の混乱と併せて、当社として大きく影響を受けた為替問題など、2023年3月期は事業環境が変動し、事業を展開していく中で苦しんだ年ではありました。
このあたりについて今からご説明させていただくとともに、今期に向けてどのようなことに取り組んでいくか、みなさまにお伝えできる機会になればと思っています。本日はお付き合いのほど、よろしくお願いします。
I-1. 2023年3月期累計 業績
澤田博和氏(以下、澤田):財務経理部の澤田です。2023年3月期決算概要についてご報告します。まず、連結業績です。売上高は1,360億円、対前期9.4パーセントの増収となりました。営業利益は58億1,200万円、9億3,200万円の増益、経常利益は60億2,100万円、6億2,100万円の増益、当期純利益は45億100万円、15億6,100万円の増益となりました。
また、総資産は1,659億円と、昨年から77億円増加し、自己資本も1,157億円と、28億円の増加となっています。自己資本比率については、69.8パーセントで前年並みに推移しています。
I-2. 連結決算サマリー
連結決算全体の概要です。中期経営計画「VISION2030 stage1」の初年度にあたり、全セグメントで増収増益となりました。一方で、急激な為替変動や原燃料価格の高騰等、外部要因の影響を受け、営業利益は通期予想に対して未達となってしまいましたが、売上高・経常利益・当期純利益については、先ほどお示しした4ページのとおり、当初の予定をクリアしたことになります。
また、新たな取り組みとして、守山工場のサーキュラーファクトリープロジェクトを推進してきました。エンジニアリングプラスチックス分野の新規用途開発を進め、メディカル分野では医療領域を拡大しました。
一方、事業構造改革として、電子部品分野のフィルム部門を社外に譲渡し、採算性の問題があったレッグウエア分野に関しては、中国工場の生産を終了しました。
事業セグメント別の主なポイントです。機能ソリューション事業では、原燃料価格高騰の影響を受けたものの、全体としては堅調に推移し、増収増益となりました。プラスチックフィルム分野は包装用フィルムが堅調に推移しましたが、ユーティリティ価格高騰の影響を若干受けています。
エンジニアリングプラスチックス分野は半導体市場向け製品が堅調に推移し、電子部品分野はタッチパネル事業が市況悪化の影響を受けてしまいました。メディカル分野は新製品の市場展開もあり、堅調に推移しています。
アパレル事業は、販売回復が進む中、冒頭で社長がお伝えしたように、為替変動や原燃料価格高騰の影響を受け、結果的に赤字になってしまいました。しかし、増収は確保し赤字幅も縮小しました。
アパレル業界全体では、社会経済活動が回復し、EC、SPAルートも堅調に推移したため売上が拡大しましたが、原燃料価格高騰と為替変動によって利益が圧迫されており、価格改定を進めています。
インナーウエア分野は、成型ボクサーパンツや差異化ファンデーション群が好調に推移しました。レッグウエア分野は、市況回復により増収とはなったものの、収益性にまだ問題があるため、生産構造の見直しを継続しています。
ライフクリエイト事業では、以前から進められている山形県長井市の駅前再開発のため、遊休地の施設売却を推進したこともあり、順調に推移して増収増益を確保しました。
全体としては、行動制限の解除により、ショッピングセンター事業、スポーツクラブ分野ともに回復傾向にあります。
I-3. 事業セグメント別業績
事業セグメント別実績です。機能ソリューション事業の売上高は603億4,000万円、対前期7.5パーセントの増収、営業利益は89億円、前年から8億8,500万円の増益となりました。アパレル事業の売上高は約610億円、対前期6.6パーセントの増収、営業利益は2億円ほどの赤字となっていますが、昨年から3億円強の改善が見られています。
ライフクリエイト事業は、先ほどお伝えした山形県長井市の駅前再開発の売上計上もあり、売上高は153億円、対前期32パーセントの大幅な増収、営業利益は7億円強、昨年から約2億5,000万円の増益となっています。
I-4.2023年3月期累計 売上高
売上高の四半期別と事業セグメント別の状況を4期並べて記載しています。四半期別では、前半は少し苦しみましたが、下期はコロナ禍前の2020年3月期の水準に戻ってきています。事業セグメント別では、3事業とも売上が順調に伸長しています。
I-5.2023年3月期累計 営業利益
営業利益については、為替や原燃料価格の影響を受け、コロナ禍前の2020年3月期ベースまでにはまだ戻っていません。しかし、第1四半期から第4四半期まで堅調に利益を計上できたと考えています。
事業セグメント別では、先ほど機能ソリューション事業が89億円の利益を出したとお伝えしましたが、こちらが史上最高益となり、機能ソリューション事業の全社利益に占めるウエイトが非常に高まってきています。
I-6. 特別損益
特別損益については、特に2022年3月期は東京支社の売却等もあり、固定資産売却益を大きく計上しましたが、2023年3月期も一部工場跡地の売却を進めたため、10億円の売却益を計上しています。そのほか、政策保有株式の売却も積極的に進め、5億9,000万円の売却益を計上しています。
また、スライド項目の中ほどに構造改善費用とありますが、こちらはレッグウエアの中国工場閉鎖による影響で、一部費用が発生したことによるものです。以上のことから、2023年3月期の特別損益は差し引き3億6,800万円のプラスとなっています。
I-7. 資産の増減内容
先ほど資産が77億円増加したとご報告しましたが、その主な内容は、特に棚卸資産と有形固定資産です。
棚卸資産については、海外資産の円安によるかさ増しのような部分もあるのですが、機能ソリューションの堅調な推移に見合う在庫の増加分も含まれています。また、有形固定資産は、守山工場の新生産ラインの建屋関連、「つかしん」のリニューアル工事等への積極的な投資によって増えています。
I-8. キャッシュフロー
キャッシュフローです。営業活動は約18億円ということで、先ほどお伝えした棚卸資産の増加部分や、2023年3月期の大きな課税所得により多額の法人税を支払ったため、減っています。
投資活動も、2023年3月期は支社の売却等によりキャッシュインとなっていますが、2023年は積極的な投資により59億円のキャッシュアウトとなりました。そちらに対して、財務活動として長期の借り入れを実施し、賄っています。その結果、現金及び現金同等物期末残高は2022年3月期から29億円減り、115億円となっています。
I-9. 設備投資額・減価償却費推移
設備投資額と減価償却費の推移をグラフ化したものです。2022年3月期の投資額59億円に対し、2023年3月期は95億9,700万円と、非常に大きく増えています。主な内容は先ほどお伝えしたとおりです。
併せて、2024年3月期については123億円の投資を計画しています。内訳としては、守山工場の新建屋竣工後に入れる新設機の本格稼働で約30億円を見込んでいます。また、インナーウエア分野のSCM改革の基盤作りや自動化に向けた設備導入、商業施設「つかしん」リニューアル工事の残工程分も含まれています。
I-10. 今期累計事業概況(1)
事業別の概況をご説明します。機能ソリューション事業では、まずプラスチックフィルム分野の方向性として、収益拡大を目指しています。スライドに記載しているとおり、環境対応型新商品の市場投入に加え、国内ではサーキュラーファクトリー(資源循環型工場)計画を推進しています。設備の自働化や再生可能エネルギーを活用して生産革新を進めながら、米国・中国・アセアン等の海外拡販につなげていきます。
品種別の状況です。2023年3月期は主力の平板収縮において、飲料用途がラベルレスや巻きラベル化の拡大の影響を受け、数量が減った一方、原料等の価格転嫁を実施してきました。また、サステナブルな原料を使ったリサイクルハイブリッドフィルムを上市することができました。
ナイロンについても、耐ピンタイプの拡販が進み、輸出も順調に推移しました。
工業用品では、やはり中国市場向けが低迷し、市況悪化の影響を受けました。
OPPについては、上期は先高感から受注が増えたのですが、下期は在庫調整を受け、数量を落としました。
グローバルでは、ベトナムが市況として厳しかったのですが、コストを削減し、全体として堅調に推移しました。米国は、価格転嫁の遅れやサプライチェーンの混乱もあり、生産に影響をきたしました。中国は、ロックダウン、ゼロコロナ政策の影響を受け、低迷しました。
I-11. 今期累計事業概況(2)
次に、エンジニアリングプラスチックス分野の方向性は収益拡大です。主力のOA市場向け製品のシェア拡大に加え、新用途開発により、健康・医療関連ならびに産業機器向け製品のさらなる拡販を目指します。
製品群としては、OA向け機能商品において小型プリンタ特需が一巡したものの、経済活動の正常化によりオフィス向けが堅調に推移しました。また、非OA向けでは、半導体関連向け、健康医療向けの需要が引き続き旺盛です。
電子部品については、収益を改善していく方向で進めていますが、一方で差異化技術力の向上と筋肉質経営により、損益改善にも取り組んでいるところです。
I-12. 今期累計事業概況(3)
メディカル分野は、我々としても成長拡大に向けて力を入れている部門です。米国・中国の販売強化と大型新商品の上市とともに、競争力向上を目的に医療専業体制の新しい組織再編を実施しました。
製品別概況について、組織補強材は、日本で新型コロナウイルス第8波の影響を受けましたが、その後の規制緩和で売上が回復しています。中国は都市部での感染抑制策の影響を受けてしまいました。
骨接合材は、日本では新製品の販売が伸長し、自社品への切り替えも進みました。中国では、都市部以外の地方で拡販を進めてきました。
人工皮膚については、日本では救急領域でも採用されてきており、米国向けも学会展示等により浸透拡大を図っています。
グンゼメディカル(旧メディカルユーアンドエイ)では、主力の医療用レーザーが、やはり半導体不足によって製品確保が難しく、売上損益にも影響を受けました。
I-13. 今期累計事業概況(4)
アパレル事業は、消費行動の変化に伴い、伸長が加速しているECチャネルや直営店舗のDtoCルートでのさらなる拡販と、他社とのコラボレーションを推進しています。
インナーウエア分野においては、消費者の天然素材への回帰、カジュアル化や環境意識の高まりに即したヘルス&ウェルネス商品、エシカル商品を拡充し、フェムテック商品や差異化ファンデーション等、レディスインナーの拡販を強化しています。
また、2022年秋冬シ-ズンより価格改定を実施し、2023年春夏シーズンも継続しています。EC、SPAルートについては好調に推移しています。メンズ、レディスとも、スライド記載のブランドについてはいずれも堅調に推移しています。
I-14. 今期累計事業概況(5)
特に成長販路であるECルートにおいては、2022年は全体の14パーセントだったウエイトが、2023年は16パーセントまで伸びてきています。SPAも2パーセントだったウエイトが3パーセントに上がっています。
また、レッグウエア分野は収益性改善が重要課題です。消費者ニーズの変化に基づく市場対応力を強化し、健康関連を含むレギンスやボトムカテゴリーの新商品の積極的な展開とともに、生産拠点の再編による構造改革を推進していきます。
I-15. 今期累計事業概況(6)
ライフクリエイト事業についても収益を改善していく方向性です。不動産関連分野では、「つかしん」のリニューアルにより、ショッピングセンター(SC)事業の売上が前年を上回ったのですが、一部ではユーティリティコストの影響を受けました。賃貸事業では、先ほどお伝えした山形県長井市の駅前再開発プロジェクトが順調に推移しました。
スポーツクラブ分野は、スクール事業を強化し、価格改定を推進してきましたが、フィットネス事業が新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けました。店舗特性に合わせたサービスの提供と、多様化するニーズに対応したきめ細かな取り組みを実施していきます。
II-1. 事業セグメント区分の見直しについて
2024年3月期の業績見通しをご説明します。まず、事業セグメント区分の見直しについてです。
決算短信でも後発事象として記載していますが、2023年4月1日付けのメディカル事業部とグンゼメディカル株式会社等の組織再編により、当社のメディカル分野は医療を専業とする新しい組織体制のもと、生体吸収性製品を中心とした革新的な医療機器の提供を通じ、患者さまのさらなるQOL向上を目指しています。
これらの組織再編を踏まえ、現在推進中の中期経営計画「VISION2030 stage1」における成長牽引の位置付けをより明確にするため、当連結会計年度において機能ソリューション事業に含めていたメディカル分野を、翌連結会計年度からメディカル事業として新たに区分します。
II-2. 2024年3月期 見通し
2024年3月期の見通しについてです。2023年度の戦略課題をご説明します。
まず、機能ソリューション事業です。プラスチックフィルム分野については、環境対応型新商品の積極的な投入を行い、サーキュラーファクトリーの本格稼働とサーキュラーメーカーに変革するための基礎となるリサイクルセンターの設置を進めていきます。また、エンジニアリングプラスチックス分野については、主力OA市場向け製品のシェア拡大に加え、健康・医療関連ならびに産業機器向け製品の拡販を図っていきます。
メディカル事業については、組織補強材や人工皮膚等の増産体制を整えるとともに、米国・中国での販売強化・継続的な新商品開発によって事業拡大を加速していきます。
アパレル事業については、総合力を発揮するために組織再編を行っています。これを通じて、消費行動変化に伴い伸長しているECチャネルやDtoCルートでのさらなる拡販、他社とのコラボレーションを積極的に推進します。さらに、経営資源を集中し、新規顧客獲得によるライフスタイル分野への拡大、差異化戦略商品を通じたレディスインナーの拡販を図ります。生産面では、オートメーション化とグローバル最適生産体制の構築により、コスト競争力の強化を図っていきます。また、国内の主力工場にて、再生可能エネルギーを使ったCO2排出量の実質ゼロ化と、無人化ラインからなる「ネットゼロファクトリー」計画を段階的に推進していく予定です。
ライフクリエイト事業については、特にスポーツクラブ分野のスクール事業拡大と、地域特性・店舗特性に合わせた特長のあるサービスの開発を進めていきます。
II-3. 2024年3月期連結業績予想
これらの取り組みにより、全体の業績予想としては、売上高が対前年2.9パーセント増の1,400億円、営業利益が対前年16億8,800万円増の75億円、経常利益が対前年14億7,900万円増の75億円となっています。また、当期純利益は対前年で約3億円増の48億円を計画しています。
II-4. セグメント別業績予想
セグメント別業績予想です。機能ソリューション事業については、売上高が対前年4.5パーセント増の518億円、営業利益が対前年2億6,500万円増の71億円です。今回から新たに区分しているメディカル事業については、売上高が対前年9.5パーセント増の120億円、営業利益が対前年2億1,800万円増の23億円を目指します。
アパレル事業の売上高は前期比3.8パーセント増の633億円、営業利益は14億円と、前期の赤字から約16億円の改善を図ります。ライフクリエイト事業の売上高は138億円で、先ほどお話しした山形県長井市の駅前再開発の影響で約15億円の減収です。また、営業利益は8億円で、約1億円の増益を図りたい考えです。
II-5. 株主還元
株主還元です。中期経営計画「VISION2030 Stage1」でもご案内のとおり、我々としてはROEが株主資本コストを上回るまで総還元性向100パーセント、さらに株主資本配当率(DOE)2.2パーセント以上を目処に利益還元を行う方針です。
この方針に基づき、2023年3月期の配当は年初予想の145円から147円に増配したいと考えています。なお、2024年3月期は、同じくDOE基準で150円と予想しています。
III-1. 中期経営計画「VISION2030 stage1」
岡高広氏:経営戦略部の岡です。中期経営計画「VISION2030 stage1」の進捗状況についてご説明します。まず、2022年5月13日に発表した「VISION2030」についてです。この計画は3ヵ年計画で、2024年3月期が2年目、2025年3月期が最終年度にあたります。
中期経営計画では「新しい価値を創造し『ここちよさ』を提供することで持続可能な社会の実現に貢献します」というビジョンを掲げています。また、「経済的価値」と「社会的価値」を両立するサステナブル経営によって、社会貢献とグループの持続的成長を実現していきます。
中期経営計画の4つの基本戦略をご説明します。1つ目は「新たな価値の創出」です。M&Aを含め、新規事業の創出と既存事業の成長を目指していきます。また、サステナビリティを追求した新商品・新サービスを提供していきます。
2つ目は「企業体質の進化」です。多様な人財が働きがいを持てる組織風土づくり、働き方改革による意識・業務改革、デジタルの積極活用によるプロセス変革を目指していきます。
3つ目は「環境に配慮した経営」です。こちらについては現在、事業活動における環境負荷の低減としてCO2や産業廃棄物を減らすとともに、エネルギーを効率的に活用して省エネ・再エネを行っていく活動をしています。サーキュラーファクトリーでは、リサイクル技術革新により、工場生産でのごみゼロ化に取り組んでおります。
4つ目は「資本コスト重視の経営」です。経営資源の戦略的配分、資本効率の追求によるGVAの黒字化を目指していきます。
III-2. 中期経営計画の進捗状況
収益の指標です。2024年3月期は売上高1,400億円、営業利益75億円の予想に対し、順調に推移しています。中期経営計画の目標は売上高1,400億円、営業利益100億円で、計画の中間点である現在、順調だと捉えています。
グループ経営指標は中計目標をROE6.3パーセント以上とし、2024年3月期は4.2パーセントと予想しています。GVAは今期マイナス11億円という今期予想ですが、最終的には全社計黒字化を目指していきます。
株主還元に関しては、2023年3月期は1株配当147円、2024年3月期は1株配当150円の予想です。
IV-1.メディカル事業の歩み
佐口:中計目標達成に向けた主力事業の戦略について、進捗をご説明します。最初にメディカル事業についてです。今回は、当社の成長エンジンという位置付けをはっきりさせ、理解していただくためにセグメントを分けました。
メディカル事業はもともと1984年にグンゼと京都大学医用高分子研究センターが研究開発を開始したことから始まり、1985年にメディカル開発室を設置しています。
その後、1986年に吸収性縫合糸を販売しました。商品名でご説明すると、1992年の吸収性組織補強材が「ネオベール」、1995年の吸収性骨接合材が「ネオフィックス」、1996年の吸収性人工皮膚が「ペルナック」です。直近のものでは2022年に吸収性癒着防止材「テナリーフ」を販売しました。
我々は今まで、再生医療の足場となる吸収性材料を中心に薬機法に規制される医療機器を展開するとともに、品質に対する安全性を長期にわたり保持し、医療現場で高い信頼を培ってきました。
IV-2.メディカル売上高・営業利益推移
1986年からスタートしたメディカル事業の、2007年からの売上高および営業利益の伸びをスライドに示しています。先ほど見ていただいたように商品群を継続して出してきていますが、最初に出した1986年から売上が伸びてくるまでに15年から20年近くかかりました。2007年から2010年ぐらいまでに世の中で徐々に認知され、海外展開も始まった2011年からいったんグッと伸びています。
2015年からは少し踊り場に差しかかり、2019年から再び大きく伸びています。これは、2019年にメディカルユーアンドエイをグループ化し、当社グループの売上が一気に増えたためです。こちらは商社ですので、利益率はそれほど高くなかったのですが、もともとこの販路を使って自社製品の販売を展開するシナジーを狙っており、2021年・2022年からその効果が利益率として出始めています。
IV-3.メディカル事業戦略
メディカル事業の戦略です。生体吸収性製品を中心とする革新的な医療機器の提供により患者さまのQOLを支える一方、再生医療における足場材料活用など、新たな企業価値を創造するというテーマで進めています。
事業戦略は大きく分けて4つです。1つ目の「既存ビジネスの売上拡大」については、日本・中国を中心に主力である生体吸収性商品を拡販していきます。
2つ目の「新規ビジネスの売上拡大」としては、今、米国で販路を作って徐々に伸びてきている人工皮膚の売上を拡大していきます。また、2022年の新商品である癒着防止剤「テナリーフ」が日本国内で伸びてきているため、これを成長ビジネスとして腹部領域市場に浸透させていきたいと思っています。
3つ目の「新商品開発・新規領域挑戦」については、新体制においても従来のQOL研究室をグンゼメディカルの中に置いているため、そちらを中心に日本・中国で並行開発して臨床試験等を継続して進めていきたいと思います。
4つ目は「M&Aターゲット探索推進」です。過去にもM&Aをしていますが、また良いタイミングやご縁があれば積極的に進めていきたいと思います。
既存ビジネスとしていろいろな商品を展開してきており、先ほどのグラフのように売上も伸び、生産能力が限界に達している状況です。そこで、2025年3月完成を目標に、今の綾部工場を拡張して新棟を建設します。約17億円をかける予定で、これにより既存商品群の増産および生産効率の向上を目指していきたい考えです。
IV-4.プラスチック事業戦略
プラスチックフィルム分野です。こちらの戦略としては、「資源循環戦略を基本に、サーキュラーメーカーとしてグローバル展開を強化し、マーケットをリードする」としています。
スライド右下のサーキュラーファクトリー守山工場は先日竣工式が終わり、先んじて一部のマスコミの方にご来場いただきました。
事業戦略の1つ目は、「資源循環戦略の推進」として、サーキュラーファクトリーを活用したプロモーションの積極推進とマーケティングを通じた顧客との関係強化を図ります。
2つ目は「サステナブル製品の開発」です。環境対応新商品の上市・拡大に加え、食品廃棄ロス削減フィルムの上市・拡大を行います。
3つ目は「ごみゼロ・新技術導入による高効率生産の推進」です。リサイクル技術革新とそのグローバル展開、効率生産体制の確立を目指します。
サーキュラーファクトリー守山工場は2023年4月に竣工式を行い、完全な稼働状態に入るのは2023年7月の予定です。ここでごみゼロを目指していきます。この「ごみゼロ」とは、当社の工場内で出したごみをゼロにするという意味合いで、原料を一切無駄にしないことを指します。
その第一段階として、モノを作る中で端材や立ち上げ部分でロスが出るため、そのようなごみを一切出さずにすべて原料化して作っていきます。それによって入った原料の重量と同じ重量の製品が出ていくことを目指すという内容です。
次の段階としては、当社とお取引のあるお客さまのところで同じような循環を作り、お客さまのところで出た廃材などをすべてリサイクルしていきます。最終的には、世の中すべてをそのような循環型にするという構想のもと、第一歩を踏み出しているところです。
今、進めている内容をお客さまにもご理解いただき、一緒に進めていただけるお客さまには、先ほどお話ししたような循環型の仕組みを作っていきます。それがサーキュラーファクトリーを活用したプロモーションの積極推進とマーケティングを通じた顧客との関係強化です。
これを軸にマーケティングを進め、今までのように単純にフィルムを販売するビジネスから資源循環を軸としたビジネスへ転換していくことが、プラスチックフィルム分野の戦略です。
IV-5.エンプラ事業戦略
エンジニアリングプラスチックス分野の事業戦略です。「非OAを中心とした新セグメント商品の拡大により、持続可能な社会課題の解決に貢献できる事業として進化する」としています。
スライド右側のグラフの黄色がOA向け、緑が非OA向けです。エンジニアリングプラスチックス事業は、複合機やFAX、印刷機といったOA向けが非常に高いウエイトを占めています。ここから非OAを多くして事業をより安定させ、発展させていくことが今回の戦略です。
非OAとしては、「健康医療関連」「産業機器向け」「繊維技術活用」の3つを掲げています。「健康医療関連」では、スライド右上の写真のようなカテーテル製造工程用チューブでの新規採用の拡大を進めていきます。
「産業機器向け」については、独自の延伸技術を活用した用途開拓の推進を進めていきます。
「繊維技術活用」としては、半導体製造工程で使用されるフィルターサポート材を広げていくことを考えています。
また、「OA機器向け」としては、OA機器の性能にあわせて高機能・高付加価値製品を開発し、次世代のOAに向けてアジャストしていきます。
エンジニアリングプラスチックス事業部の主力工場である愛知県の江南工場事務所棟が2023年2月に完成し、すでに動いています。こちらは当社の中で初の「ZEB」認証を取得している環境対応型の事務所です。
IV-6.アパレル事業戦略
アパレル事業戦略です。DtoCビジネスへシフトした顧客起点での新組織をスタートします。これはダイレクトカスタマーであり、お客さまといかに直接接点を持って事業を推進していくかということです。
事業戦略は4つあります。1つ目は「DtoCを主体とした新規顧客獲得による成長戦略」、2つ目は「DtoC市場をターゲットにしたマーケティング機能強化」、3つ目は「EC・SPA・新領域の総合力を活かした販売戦略の再構築」、4つ目は「最適生産体制の構築」です。
ECネット販売やSPA店舗、当社の独自店舗の販売量が増えるにつれて、お客さまとの距離が接近していきます。今までは売り場を通してお客さまと接点を持っていましたが、直接的な接点が増えていくということです。それにより、お客さまのニーズや困りごとを当社がつかみ、それを商品開発に活かして生産につなげていく活動をしたいという意図があります。
その中でも、1つ目の戦略においては、成長分野としてライフスタイル、KIREILABOなどのレディスインナーを中心に今の活動を強め、市場を広げていきたい考えです。
2つ目の戦略においては、セグメント・ターゲット・ポジショニングを明確にし、新たな競争優位の確立を狙った商品戦略・販売戦略の立案を進めます。性別や年代、収入、住んでいる地域も異なるお客さまにきめ細かく対応し、どのような方にどのようなものが喜んでいただけるのかを明確にして、マーケティングの機能を強化していきたい考えです。
3つ目の戦略においては、アパレルの総合力を活かした新領域開拓と、EC・SPA等重点ルートでのさらなる拡大を、既存ルートでは、営業DXによる営業体制効率化を進めていきます。
4つ目の戦略においては、当社の基盤となる生産体制が重要となります。これからの時代、多くの人手に頼るということにはリスクが出てきます。いかにオートメーション化できるかの能力拡大にトライしていきます。
また、ベトナムで生産するほうが、この為替状態でもまだコストメリットがありますので、海外インナーを自社企画生産へシフトしていきます。
今回、残念ながら中国の工場を閉鎖しましたが、レッグウエアについては事業構造改革を継続し、自働化等によって現場革新を行い、さらなる効率化を進めていきたいと思います。
結びとして、「ライフタイムバリュー」(LTV)と記載しています。先ほどお伝えしたように、お客さまとの直接的な接点を強くし、それによってずっと長く使っていただけるロイヤルカスタマーとなっていただきたいと思っています。
若い時には若い時なりに、年を重ねた時は重ねた時なりに、当社の製品をずっと使っていただける、ロイヤルカスタマーとなるようなお客さまにとって、一生涯を通じてライフタイムバリューを最大化できるようなアパレルの総合力を作っていきたいと考えています。