過去の同月に公開された記事をプレイバック!もう一度読み直したい、「編集部セレクション」をお届けします。 (初公開日:2021年5月3日) |
みなさんは「退職金」と聞いて、どのようなイメージをお持ちですか?
「まとまった金額を受け取れる」という人もいれば、「年々減らされている、期待できない」、「そもそも退職金制度がない」など、退職金にまつわるイメージは様々かと思います。
私は以前生命保険会社でマネーセミナーの講師やマネープランニングのアドバイザーをしており、1000人以上のお客様のお金の相談を受けてきました。
老後に向けたお金の相談は多く、特に退職金の代わりとなる資金を準備したい方もおられました。
一般的な退職金額とは、いったいどれくらいの金額なのでしょうか。
今回は退職金のなかでも、特に国家公務員の退職金にスポットを当てて、見ていきたいと思います。
【関連記事】70歳以降で「貯蓄4000万円超」の世帯はどれほどいるのか
1. 国家公務員の退職金はどのくらいか
まず、内閣官房公表の「退職手当の支給状況(令和元年度退職者)」から、国家公務員の退職金の平均額を見ていきましょう。
国家公務員の退職理由別退職手当受給者数及び退職手当平均支給額は以下の通りです。
1.1 常勤職員(カッコ内は受給者数)
- 定年:2090万6000円(1万2714人)
- 応募認定:2588万1000円(1597人)
- 自己都合:316万1000円(7501人)
- その他:201万6000円(1万763人)
計:1082万2000円(3万2575人)
1.2 うち行政職俸給表(一)適用者
- 定年:2140万8000円(3825人)
- 応募認定:2278万円(902人)
- 自己都合:362万7000円(1377人)
- その他:265万8000円(1009人)
計:1548万円(7113人)
常勤職員、行政職俸給表(一)適用者のいずれも、定年や応募認定(早期退職制度に基づく退職)であれば、退職金が2000万円を超えていることがわかります。
2. 公務員退職金「1000万円~2000万円組」の割合は
では、国家公務員全体のうち、どのくらいの割合の人が1000万円台、2000万円台の退職金を受け取っているのでしょうか。
引き続き「退職手当の支給状況(令和元年度退職者)」より、国家退職手当の支給額別受給者数を見ていきましょう。
2.1 常勤職員(定年・応募認定・自己都合・その他の合計)
- 500万円未満:1万6485人
- 500~1000万円未満:596人
- 1000~1500万円未満:1045人
- 1500~2000万円未満:4744人
- 2000~2500万円未満:7667人
- 2500~3000万円未満:1490人
- 3000~3500万円未満:114人
- 3500~4000万円未満:43人
- 4000~4500万円未満:163人
- 4500~5000万円未満:104人
- 5000~5500万円未満:46人
- 5500~6000万円未満:31人
- 6000~6500万円未満:42人
- 6500~7000万円未満:1人
- 7000~7500万円未満:4人
常勤職員では、約45%の方が1000万円台~2000万円台の退職金を受け取っていることがわかります。
2.2 うち行政職俸給表(一)適用者(定年・応募認定・自己都合・その他の合計)
- 500万円未満:1972人
- 500~1000万円未満:128人
- 1000~1500万円未満:151人
- 1500~2000万円未満:771人
- 2000~2500万円未満:3634人
- 2500~3000万円未満:436人
- 3000~3500万円未満:20人
- 3500~4000万円未満:0人
- 4000~4500万円未満:1人
行政職俸給表(一)適用者は、約70%の方が1000万円台~2000万年代の退職金を受け取っていることがわかります。
常勤職員、行政職俸給表(一)適用者ともに、いちばん割合が多いのは2000~2500万円未満であり、多くの方がまとまった退職金を受け取っているといえるでしょう。
3. 公務員の退職金、2000万円あれば老後は安心か
では、2000万円以上の退職金を受けとることができれば老後は安心なのでしょうか。
「2000万円」という金額については、2019年に話題となった「老後2000万円問題」が記憶に新しいかと思います。
「老後2000万円問題」は、金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」が公表されたことに端を発し、世間を騒がせるニュースとなりました。
この2000万円の計算の根拠は下記のモデルケースから算出しています。
- 夫65歳以上、妻60歳以上の無職の高齢夫婦世帯
- 世帯収入:月20万9198円
- 世帯支出:月26万3718万円
※「第 21 回市場ワーキング・グループ 厚生労働省資料」より
計算すると、このモデルケースの赤字分は月約5.5万円になります。
赤字分が老後30年続くと計算すれば、赤字分の総額は1980万円です。これが2000万円の算出根拠となっています。
ただし、生活費の想定が約26万円になっている点には注意が必要です。ゆとりある老後を過ごしたいという人には、かなり少なめの生活費と言えます。
また上記の計算には介護費用が含まれておらず、住居費用もかなり低めで計算されています。
よって介護費用を将来に向けて準備したい人、賃貸住まいの予定の人は2000万円以上の不足が生じる可能性があります。
どのくらいの資金を準備すれば安心して過ごせるかは、世帯数やライフスタイルによって異なります。
具体的な老後の必要額を、お金のアドバイザーに計算してもらうのも一案です。
4. まとめにかえて
国家公務員であれば、まとまった退職金を受け取れるので安心かというと、そうとも言い切れないようです。
世帯によって必要とする資金が異なるので、当然と言えば当然かもしれません。これは公務員に限らず、会社員も同様です。
老後に必要な資金の計算をしっかりとした上で、資産運用などを行い、必要な金額を準備することができれば安心して老後を迎えることができます。
退職金の有無に関わらず、一度老後に必要な資金の計算をした上で、確実な準備をしていくことをおすすめします。