過去の同月に公開された記事をプレイバック!もう一度読み直したい、「編集部セレクション」をお届けします。 (初公開日:2022年5月7日) |
確定申告を終えて還付金がある方は、そろそろ入金される時期ですね。還付金は人によって金額の違いはありますが、まとまった金額になることもあり、家計にとって助けになることも多いのではないでしょうか。
入金された金額を見て嬉しさの反面、確定申告をきっかけに収入に対して天引きされるお金の大きさを改めて実感された方もいるでしょう。
給与明細も電子化されているところが多く、毎月の手取りは意識していても、天引きされるお金をその都度、確認する人は少ないかもしれませんね。
この天引きは現役時代だけでなく、老後の受け取る年金にも関わってきます。年金だけでは不足するというイメージが定着している中、さらに引かれるものがあると聞いて驚く方も多いのではないでしょうか。
今回はこの年金について、手取りと額面の違いを見ていきましょう。
【注目記事】「厚生年金の月平均が14万円」実はウソ⁈年金制度には落とし穴があった
1. 老後の資金の収入の柱となる年金
まずは老後の収入の柱となる年金。天引きされるお金は次の4つです。
- 所得税
- 住民税
- 介護保険料
- 健康保険料
一つずつ解説します。
1.1 所得税
年金が一定額以上になると、所得税が課税されます。公的年金の場合、所得控除額は120万円です。つまり年金支給額が120万円を下回る場合は、非課税となります。実際には120万円を超えていても各種控除を受けることで、非課税となることもあります。
一般的に年金収入だけの場合は確定申告が不要ですが、控除対象となる項目がある場合、積極的に確定申告をしておきたいですね。
1.2 住民税(市町村民税)
同じく住民税も天引きの対象となります。前年中の所得に対してかかる税金なので、所得税と同じく所得控除の申告を忘れないようにしたい項目です。
総務省の「家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年)Ⅱ総世帯及び単身世帯の家計収支」によると、65歳以上の高齢単身無職世帯では、直接税の平均が6430円となっています。
1.3 介護保険料
2000年にスタートした新しい制度で、40歳以上の人に支払い義務のある介護保険料。年間18万円以上の年金を受給している場合は年金天引きの対象となるため、ほとんどの方が天引き対象です。
保険料は3年ごとに見直され、ここ数年上昇傾向にあります。第8期となる「令和3年度~令和5年度」の介護保険料基準額は、月額で6014円。初めて6000円台を超えました(あくまでも基準額で、実際の金額は地域により異なります)。
今後の長寿社会を考えると、ますます保険料の負担は増えると予想されます。
1.4 健康保険料(国民健康保険・後期高齢者医療制度)
健康保険の保険料も、年金からの天引きとなることがあります。対象となるのは74歳未満の国民健康保険料と、75歳以降に加入する後期高齢者医療制度の保険料です。
2. では年金の受給額はいくらなのか
それでは年金はいくらぐらい受給できるのでしょうか。2021年12月に発表された厚生労働省の「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考に、国民年金と厚生年金にわけて見ていきましょう。
まずは国民年金の平均月額と分布を確認します。
2.1 国民年金の平均月額
- 〈全体〉平均年金月額:5万6252円
- 〈男性〉平均年金月額:5万9040円
- 〈女性〉平均年金月額:5万4112円
2.2 国民年金月額階級別の老齢年金受給者数
- 1万円未満:7万4554人
- 1万円以上~2万円未満:29万3600人
- 2万円以上~3万円未満:92万8755人
- 3万円以上~4万円未満:284万2021人
- 4万円以上~5万円未満:466万3638人
- 5万円以上~6万円未満:776万979人
- 6万円以上~7万円未満:1483万5773人
- 7万円以上~:188万2274人
自営業や専業主婦(主夫)など、国民年金のみに加入している方は上記の金額が参考になります。金額が多くない上に、先程の金額を引かれるとなると少なく感じることでしょう。
続いて厚生年金についても確認します。
3. 厚生年金の受給額はいくらか
会社員や公務員などは、国民年金に上乗せして厚生年金にも加入しています。
3.1 厚生年金の平均月額
- 〈全体〉平均年金月額:14万4366円
- 〈男性〉平均年金月額:16万4742円
- 〈女性〉平均年金月額:10万3808円
3.2 厚生年金月額階級別の老齢年金受給者数
- 1万円未満:10万511人
- 1万円以上~2万円未満:1万8955人
- 2万円以上~3万円未満:6万6662人
- 3万円以上~4万円未満:11万9711人
- 4万円以上~5万円未満:12万5655人
- 5万円以上~6万円未満:17万627人
- 6万円以上~7万円未満:40万1175人
- 7万円以上~8万円未満:69万4015人
- 8万円以上~9万円未満:93万4792人
- 9万円以上~10万円未満:112万5260人
- 10万円以上~11万円未満:111万9158人
- 11万円以上~12万円未満:101万8423人
- 12万円以上~13万円未満:92万6094人
- 13万円以上~14万円未満:89万7027人
- 14万円以上~15万円未満:91万3347人
- 15万円以上~16万円未満:94万5950人
- 16万円以上~17万円未満:99万4107人
- 17万円以上~18万円未満:102万4472人
- 18万円以上~19万円未満:99万4193人
- 19万円以上~20万円未満:91万6505人
- 20万円以上~21万円未満:78万1979人
- 21万円以上~22万円未満:60万7141人
- 22万円以上~23万円未満:42万5171人
- 23万円以上~24万円未満:28万9599人
- 24万円以上~25万円未満:19万4014人
- 25万円以上~26万円未満:12万3614人
- 26万円以上~27万円未満:7万6292人
- 27万円以上~28万円未満:4万5063人
- 28万円以上~29万円未満:2万2949人
- 29万円以上~30万円未満:1万951人
- 30万円以上~:1万6721人
平均は14万4366円ですが、男性が16万4742円で女性が10万3808円と、約6万円の差があります。厚生年金は報酬比例制なので、現役時代の賃金差や加入期間が将来の年金額に反映されます。
4. 将来に向けた対策を
今回は年金から天引きされるお金について見ていきました。
所得税、住民税ともに税を通じて公共サービス、公共施設の利用ができるため、税金は人が社会の中で生活する「社会参加のための会費」と考えられますね。
そして社会保険料は「保険給付を受けるために」納めているため、病気や怪我になった時でも一定は安心です。社会保険があるからこそ誰でも大きなお金がかかる心配をせずに、治療が受けることができ、介護の負担を抑えることができるようになりました。
ただし、どれも生きていくことへの最低限の保障となります。暮らし方、お金のつかい方、健康状態など、どれをとっても人それぞれ違いがありますね。
これからのライフプランを考え、現役時代の収入と将来の年金の収入の差を早く知り、自身の生活水準では老後資金が不足しそうだと感じる場合には資産形成が必要となります。
つみたてNISAやiDeCoの制度、資産運用の方法はいろんな選択肢があります。自身のライフプランに合う選択肢を見つけて、いち早く始めていきましょう。
参考記事
- 厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「第8期計画期間における介護保険の第1号保険料について」
- 総務省「家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年)Ⅱ総世帯及び単身世帯の家計収支」
齋藤 英里奈