「こども・子育て政策の強化について(試案)」の自国の子育てについての調査では、スウェーデン、フランス、ドイツでは、いずれも約8割が「生み育てやすい」と回答しているのに対し、日本では約6割が「生み育てにくい」と回答しています。

上記の結果からもわかるとおり、現在日本では「子育てをしにくい」と感じているママ・パパが半数以上も存在しており、子育て政策の強化はまだまだ課題が多いとうかがえます。

核家族や共働き世帯が増える中、育児の有り様が大きく変化する昨今。

2023年3月31日に、政府より発表された「少子化対策のたたき台」では、育児支援が手薄とされる0歳から2歳児に対する支援強化を行うことを表明していますが、実際0歳から2歳児を育てる親は、何を望んでいるのでしょうか。

本記事では、0歳から2歳児を子育てするママ・パパが望んでいる「本当に必要な保育」について、アンケート調査をもとに紹介しているので参考にしてみてください。

0歳から2歳児の子育てをする親が望む「理想の保育形態」とは

株式会社キッズライン0〜2歳の低年齢児を育てるパパ・ママに対してアンケート調査を実施しています。

調査概要は下記のとおりです。

  • 調査主体:株式会社キッズライン
  • 調査期間:2023年4月6日(木)〜4月11日(火)
  • 調査対象:0~2歳の子を持つ親936名(男性69名、女性859名、無回答8名)
  • 調査方法:インターネット調査(キッズライン会員への調査依頼およびSNSでの協力依頼)
  • リリース公開日:2023年4月27日

上記調査の結果、「子どもに何歳何ヶ月から、どのような保育を受けさせたいか?」というアンケートに対して、1歳未満では「個別訪問保育(ベビーシッター)が良い」と考えている親が多い結果となりました。

出所:株式会社キッズライン「0~2歳児の親が望む「理想の保育形態」 低年齢時は自宅での保育を希望する親が多数【936人に緊急調査】」

0ヶ月〜2ヶ月で「保育は不要」と回答している人は37.6%です。一方、半数以上は0ヶ月であっても保育の利用を求めているようです。

9ヶ月〜1歳5ヶ月までは「個別訪問保育と集団保育の両方がよい」という両親が多い傾向にあり、1歳6ヶ月以降も個別訪問保育と集団保育の併用を望む人が多いことがうかがえます。

個別訪問保育を望む声として、下記のような内容が挙げられました。

  • 産後は孤独との戦いだが、母親自身の体力回復もままならず、保育所まで通うのも難しい。しかし1人で育てるのはとても大変なのでシッター利用が気軽に出来るとうれしい。
  • 1歳までは病気にかかったら即入院もあるため、子どもに免疫がつく年齢までは個別で、それ以降は集団と個別保育を選べるようにしてほしい。

一方で、集団保育を望む声として、下記のような内容が挙げられました。

  • 一歳以降は集団生活をさせてあげたいのと、仕事に復帰したいため集団保育。夕方や休日など、大変な時に個別保育を利用したい。
  • 1歳くらいからはお友達を見て学ぶことができるので集団がよい。可能であればその前から徐々に集団に慣れさせたい。

個別訪問保育と集団保育それぞれでメリットデメリットがあるため、子どもの年齢や両親の育休復帰などに合わせて保育形態を変える世帯が多いのだとうかがえます。

個別訪問保育を利用する理由・利用していない理由

1歳未満のお子さんをもつ両親では、「個別訪問保育(ベビーシッター)」の保育が理想と答える人が多いことがわかりましたが、利用したい理由はどのようなものがあるのでしょうか。

株式会社キッズラインの調査では、個別訪問保育を利用する理由として「親のリフレッシュ」が最も上位になりました。

出所:株式会社キッズライン「0~2歳児の親が望む「理想の保育形態」 低年齢時は自宅での保育を希望する親が多数【936人に緊急調査】」

子どもが1歳未満だと、常に子どもにつきっきりであり、子どもと外出するのは一苦労と感じる親御さんが多いため、ベビーシッターに子どもを預けてリフレッシュするパパ・ママが多いのでしょう。

そのほかにも「子どもの世話の補助」「リモートワーク」なども上位にあがっていることから、育児や在宅での勤務のサポートとして利用する人も多いとわかります。

一方で、個別訪問保育を利用していない親御さんも一定数います。

個別訪問保育を利用していない理由として、「料金が高すぎる」という声が最も多い結果となりました。

出所:株式会社キッズライン「0~2歳児の親が望む「理想の保育形態」 低年齢時は自宅での保育を希望する親が多数【936人に緊急調査】」

「利用料金の高さ」を理由に利用を断念した方は半数以上にのぼり、金銭的な負担が要因となり、望んでいるサービスが受けにくい状況があるのだとうかがえます。

現在、政府が実施している個別訪問保育の支援として「企業主導型ベビーシッター利用者支援事業」があります。

企業主導型ベビーシッター利用者支援事業とは、内閣府が委託している事業で、ベビーシッターを利用した際に、その料金の割引券を交付するものです。

しかし、この「企業主導型ベビーシッター利用者支援事業」には、下記のような課題点も存在します。

  • 共働きを目的とした制度のため、リフレッシュやリスキリングなど就業以外での目的では利用が不可
  • 厚生年金の加入者のみが利用可能な制度であるため、フリーランスや公務員は対象外

「企業主導型ベビーシッター利用者支援事業」は、利用者が限定されているうえに、共働きを目的とした利用しかできないため、調査で上位になった「親のリフレッシュ」が目的の場合は利用ができません。

政府は今後もさらに子育てに関する政策を強化していくと表明しているため、利用目的問わずに活用できるような保育支援制度の導入・助成拡大がされるかどうかに期待が集まっています。

育児をする両親が思う「本当に必要な保育」は個別訪問保育の利用

本記事では、0歳から2歳児を子育てするママ・パパが望んでいる「本当に必要な保育」について紹介していきました。

政府が行う「0歳から2歳児への支援強化」として、育児をする両親が求めているのは「個別訪問保育」が最も多い結果となりました。

とはいえ、個別訪問保育を理想としてはいるものの、金銭面の負担が大きいことから利用できていない人が多いのが現状です。

政府は、個別訪問保育の支援として「企業主導型ベビーシッター利用者支援事業」を行っていますが、利用できる対象者・目的が限定されていることから、なかなか利用しにくい人も多いのでしょう。

今後の政府の子育て支援においては、子育てをしている両親の利用目的を問わない個別訪問保育の助成拡大が、子育てをするパパやママに求められる政策の1つであるとうかがえます。

参考資料

太田 彩子