老後が近付くと「持ち家」か「賃貸」どちらに住むべきか、考え始める人も多いかと思います。
持ち家の場合は、持ち家が資産になったり賃貸料がかからなかったりする一方で、税金や修繕費がかかります。
賃貸の場合は、引越しがいつでもしやすい一方で、老後のことを考えると設備が整っていないケースも出てきます。
老後の生活を想定すると「持ち家」「賃貸」共に、上記のようなメリット・デメリットが出てきますが、結局どちらのほうが老後生活に最適なのでしょうか。
本記事では、年金受給者を対象とした実態調査をもとに、老後生活において「賃貸・持ち家」での後悔や良かった点などを解説していきます。
「賃貸派・持ち家派」それぞれの満足度も紹介しているので、老後生活でどちらに住もうか悩んでいる人は参考にしてください。
年金受給者に聞く・定年前と定年後で感じる「持ち家・賃貸」のデメリット
株式会社カシワバラ・コーポレーションは、年金受給者の方を対象に「老後の住まいに関する実態調査」を実施しています。
調査概要は下記のとおりです。
- 調査内容:老後の住まいに関する実態調査 / 大規模修繕に関する実態調査
- 調査期間:2023年3月31日(金)から4月3日(月)
- 調査対象:65歳以上の年金を受け取っている男女600名
- 調査対象内訳:持ち家/マンション、持ち家/戸建て、賃貸/マンション、賃貸/戸建ての各150名
- 調査方法:インターネット調査(シグナルリサーチ)
- リリース公開日:2023年4月24日
●持ち家のデメリット
上記調査の結果、持ち家購入時に懸念していた点として「住宅購入の費用負担が大きいこと」が上位となりました。
その一方で、老後生活が始まって感じた持ち家のデメリットでは「メンテナンスなど維持費の負担が大きいこと」が上位となり、定年前と後で懸念点に差が生じる結果となりました。
老後生活で感じた持ち家のデメリットとして、維持費の負担に次いで「家族構成の変化による間取り余りができた」ことが上位となったことから、子どもが成人して家を出たことで、不要な部屋が増えたこともデメリットに感じている世帯が多いようです。
また、維持費以外にも固定資産税や火災保険料がかかることも3位にあがっていることから、賃貸料はかからなくても、他の部分で支出はあることがわかります。
では、賃貸契約時の懸念点や老後生活で感じたデメリットはどうなのでしょうか。
●賃貸のデメリット
株式会社カシワバラ・コーポレーションの同調査では、賃貸契約時に懸念していた点として「老後も賃貸を払い続けなければいけないこと」が上位となりました。
また、老後生活で感じた賃貸のデメリットにおいても、「老後も家賃支払いが続いていること」が上位となっており、賃貸における悩みは定年前と定年後でほぼ同じであることがわかります。
老後生活が始まると、年金や貯蓄から家賃を支払っていく必要があるため、老後も賃貸料を支払い続けることに負担を感じている人も多いのでしょう。
一方で賃貸契約時の懸念点であった「高齢で契約を更新できないことがある」は、定年後のランキング内に入っていないことから、契約更新のしづらさをデメリットと感じている人は少ないとうかがえます。
老後生活が始まってから感じた「持ち家・賃貸」に住むメリットとは
前章では、「持ち家・賃貸」それぞれで、定年前の懸念点と定年後に感じたデメリットを紹介しました。
では、老後生活が始まってから感じた「持ち家・賃貸」のメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
●持ち家のメリット
株式会社カシワバラ・コーポレーションの調査によると、定年後に感じた持ち家のメリットとして「安定した居住環境の確保」「ローン支払い完了後の出費が抑えられる」が上位となりました。
老後生活においては、仕事をしていた時よりも家にいる時間が比較的長くなるため、住環境の充実性を感じている人が多いようです。
また、ローンを完済することで老後資金の負担が減るといった金銭的な面をメリットにあげる声が多い結果となりました。
●賃貸のメリット
一方で、賃貸においては、定年後に感じた持ち家のメリットとして「持ち家でかかる各種税金がない」「家の修繕費用や手間がかからない」が上位となっています。
持ち家とは異なり毎月の賃貸料はかかりますが、その分税金負担や修繕費用がかからないのをメリットに感じている人は多いようです。
また、賃貸の場合は交通機関までのアクセスが良い場所が多いため、車の運転を控えるようになる老後生活において利便性を求める声も多い結果となりました。
結局どちらがおすすめ?持ち家派の約9割は「持ち家での老後生活」をおすすめと回答
持ち家・賃貸それぞれの定年後のメリット・デメリットを紹介してきましたが、「結局のところ、どちらが良いのか」気になりますよね。
株式会社 カシワバラ・コーポレーションの調査にて、持ち家派に「老後に持ち家で生活することをおすすめしたいですか」との問に対し、約9割の方がおすすめしたいと回答しています。
一方で、賃貸派に「老後に賃貸で生活することをおすすめしたいですか」との問いに「おすすめしたい」と回答した人は約6割であり、持ち家派のほうが満足度が高いとうかがえます。
老後生活における賃貸の満足度が持ち家と比較すると低い理由の1つとして、「高齢者の住宅難民問題」があると考えられます。
高齢になると体力的・金銭的な面から引越しがしにくく、バリアフリー化など老後に合った住まいに引っ越せないケースが多いようです。
また、高齢を理由に賃貸契約を断られる可能性も少なからずあり、株式会社 カシワバラ・コーポレーションの調査では約3.3%の人が「年齢を理由に賃貸契約を断られた経験はある」と回答しています。
上記の理由もあり、老後生活は持ち家のほうが賃貸よりも満足度が高いという声が多いのだと考えられます。
実際、国土交通省の調査によると、高齢者の単身・夫婦ともに、賃貸よりも持ち家に住んでいる人のほうが多い結果となっています。
とはいえ、居住地の環境や家族構成等によって、選択の基準は異なることが予想されます。
老後生活のシミュレーションをしておこう
本記事では、年金受給者を対象とした実態調査をもとに、老後生活において「賃貸・持ち家」での後悔や良かった点などを解説していきました。
賃貸と持ち家それぞれでメリット・デメリットが存在します。
リアルな調査結果も参考にしたうえで、老後生活で重要視するライフプランや資金を一度シミュレーションし、どちらにするか検討してみると良いでしょう。
参考資料
- 株式会社 カシワバラ・コーポレーション「 年金受給者に聞く!―老後の住まい&大規模修繕に関する実態調査― 【賃貸vs持ち家】老後生活におけるメリット&デメリットを公開!定年前に気づかなかったデメリットが明らかに!?」
- 国土交通省「高齢者の住まいに関する現状と施策の動向」
太田 彩子