小倉内閣府特命担当大臣が2023年3月31日に「こども・子育て政策の強化について(試案) 」において、児童手当の拡充を発表しました。

高校卒業まで支給期間が延長される案や、多子世帯への給付金額を増額する案が検討されているため、教育費へ回す資金が増えるかもしれません。

とはいえ、公立と私立では教育費のかかり方が異なるので、親の所得も進学先に少なからず関係しています。

本記事では、公立中学校と私立中学校に通う親の年収を比較して解説します。

中学生の子どもがいる親の年収を私立と公立に分けて比較

文部科学省は、2022年12月21日に「2021年度子どもの学習費調査」を公表しました。

私立中学校に子どもが通っている親の年収で最も多いゾーンを見ると、1200万円以上が40.1%となっています。

出所:文部科学省「令和3年度子供の学習費調査」をもとに筆者作成

「1000万円~1199万円」が17.70%と続きます。

1000万円を超える世帯が全体の57.8%と、半数以上が1000万円を超えた結果となりました。

一方で、公立中学校に子どもが通う親の年収では「600万円~799万円」が26.60%でボリュームゾーンとなっています。

公立中学校の学校教育費は、年間13万2349円なのに対し、私立中学校は106万1350円です。

教育資金は約10倍の違いがあるので、収入面を考えると私立中学校に進学させる選択ができない親もいるでしょう。

実際に、公立中学校と私立中学校で、教育費にどのような違いがあるか確認します。

公立中学校と私立中学校の教育費の内訳

私立中学校における学校教育費の内訳を見ると、私立中学校の授業料は47万6159円で、全体の4割を占めています。

出所:文部科学省「令和3年度子供の学習費調査」

一方で、公立中学校の学校関係費を見ると、通学関係費が全体の29.9%で最も費用がかかっています。

学校外の活動費を見ると、公立・私立ともに補助学習費に最も支出している結果となりました。

出所:文部科学省「令和3年度子供の学習費調査」

ただ、補助学習費に支出している金額は、公立中学校では30万3000円と、私立中学校の26万2000円を上回っています。

公立中学校に通わせている親は、授業料がかからない分、補助学習費に使う意識が高いと言えるでしょう。

以上の結果から、私立中学校と公立中学校に通わせている教育費のかけ方には、以下の傾向が見られます。

  • 公立中学校:学校教育費がかからない分、補助学習費に教育費を回す
  • 私立中学校:学校教育費にお金をかけている分、補助学習費を抑える
  • 私立中学校:学校教育費と補助学習費の両方にお金をかけている


では中学校を卒業後、大学卒業まで教育資金がいくら必要になるのか確認してみましょう。

中学校を卒業した後にかかる教育費を比較

公立中学校の教育費は、13万2349円の3年分なので39万7047円です。

一方、私立中学校の教育費は、106万1350円の3年分なので318万4050円となります。

中学校を卒業後、進学先によって教育費の総額がいくらになるか、シミュレーションしてみましょう。

文部科学省「令和3年度子供の学習費調査」によると、公立高校の学費は年間で30万9261円でした。

一方で、私立高校では75万362円になります。

それぞれ3年間の学費を計算すると、以下の通りです。

  • 公立高校:30万9261円×3年=92万7783円
  • 私立高校:75万362円×3年=225万1086円


次に、大学にかかる学費を見ていきましょう。

文部科学省が調査した「国公私立大学の授業料等の推移」によると、2022年の国立大学にかかる学費は「53万5800円」でした。

一方、私立大学の学費は93万943円になり、4年分の学費をそれぞれ計算すると、以下の通りになります。

  • 国立大学:53万5800円×4年=214万3200円
  • 私立大学:93万943円×4年=372万3772円


中学校を卒業した後の進学先で、教育費の総額をシミュレーションすると、下表の通りです。

出所:文部科学省の調査データをもとに筆者作成

年収や教育費からも考える子どもの進学先

子どもの進学先を考えることは、ライフプランにおいて重要な局面になります。

子ども自身が希望する進学先や、やりたいことが見つかった際に、選択肢が狭まらないような準備が大切です。

教育資金の確保も準備の1つになります。

教育資金がいくらかかるのかを想定しながら、早めに資金の準備をしておきましょう。

参考資料

川辺 拓也