「不動産投資は誰でも簡単に儲けることができる」と聞きつけて興味を抱いているものの「バブル崩壊までわずか」「業者にだまされるな」という言葉も気になる。不動産投資は本当に儲かるのだろうか?――そう考える投資家は多いのではないだろうか。あるいは流行りに乗って始めてはみたものの、このままで大丈夫なのかと不安に思っている方もいるかもしれない。
不動産投資の現実的なところを知りたい、基本に立ち返りたい、というニーズに応えているのが、村上俊介氏の著書「売却で資産を築く! 黄金の不動産投資」だ。
不動産投資は簡単に儲かる手法なのか?
本書では、現役の不動産業者である村上氏が、不動産投資にまつわる現状に鋭く切り込んでいく。不動産投資の情勢、現場での動きを熟知した村上氏の真骨頂である。
投資の成否がすぐに判明する株式投資とは異なり、不動産投資は失敗したことを認識できるまでに時間がかかる投資だ。それ故に、不動産の購入がゴールと勘違いされやすく、大きなリスクを負っていることを認識していない投資家も多くなりがちだ。
本書は村上氏の初めての著書「首都圏で資産を築く! 黄金の不動産投資」の出版からわずか1年足らずでの発行となるが、 この2冊の本に共通するのは「誰でも、簡単に、儲かる」という不動産投資で頻繁に使われている甘い謳い文句を真正面から否定し、警鐘を鳴らす内容となっている点ではないだろうか。
不動産投資に関する思い込み、セールストークを全否定
先にも述べたが、本書最大の特徴は、不動産投資に関する根拠のない思い込み・セールストークを全否定しているという点だ。たとえば、全否定されているのは次のようなことだ。
- すべて業者任せで物件を購入し「物件を買ってしまえば勝ち組」という安易な風潮
- 「不動産を持ち続ければ資産になる」という不動産業者のセールストーク
- 「地方・RC・フルローン」物件
実際に不動産投資を考えたことがあるなら、どれも一度は見聞きしたことがあるのではないだろうか。第1部マインドセット編から第2部戦略編の冒頭にかけては、これらがいかに危ういものであるかがひとつひとつ具体的に解説されている。
不動産投資で勝つための戦略・戦術とは
第1部のマインドセット編を読むと「到底できそうにない」と弱腰になる人もいるかもしれないが、村上氏は不動産投資をやる以上はプロ意識を持つことが大切だと説く。実力次第で誰でも勝てるのが不動産投資であり、目利き力を養い、純資産を厚くすることで来るべき「買い場」に備えるべきだという立場だ。
第2部戦略編、第3部戦術編では、覚悟を決めて不動産投資を始めた投資家が持つべき具体的な戦略と戦術が示されている。目指すゴールを専業レベル(給料1,000万円)とし、軸となる投資戦略を「売却&再投資」にしているのが特徴だ。そのうえで銀行融資を引き続ける方法や相場に左右されない物件購入の極意などがわかりやすく述べられている。
世の中に「自らの成功体験と方法」を書籍化したに過ぎず、他人がマネしようとしても再現性が乏しい不動産投資本が多い中にあって、本書は全体を通して「楽ではないが、再現性の高いセオリーを偏りなく紹介している」といえよう。
まとめにかえて
「きちんとした知識に基づいて堅実な運営を行えばだれでも勝てる」――村上氏は本書でこう述べている。決して楽に勝てるわけではないが、億単位の投資であることを肝に銘じて本気で取り組むこと、自ら知識を養い、正しく行動を続けることが何よりも大切だというのが一貫した主張だ。
これから不動産投資に挑もうとする初心者にも、ある程度経験がある投資家にも参考になる良書といえるだろう。
著者:村上 俊介
出版社:総合法令出版
単行本、318ページ
LIMO編集部