リストラ報道でも株価は小動きにとどまる

2017年8月8日、中小型液晶専業メーカーのジャパンディスプレイ(6740)が約4,000人規模の人員削減を行い、海外メーカーの出資を受け入れるなどの再建策をまとめたと複数のメディアが報じています。

詳細については、9日に予定される2018年3月期第1四半期決算での会社側の公式発表を待つ必要があります。しかし、既に第1四半期に中期経営計画を発表することが明らかにされていたため、このタイミングでのリストラ報道には大きなサプライズはありませんでした。

実際、この報道を受けた8日の同社の株価も小動きにとどまりました。上述の通り、リストラの発表は想定通りであったことが1つの理由です。

それに加え、同社の株価は2014年3月19日の東証1部上場以来、一度も公募価格である900円を上回っていないこと、同社の最終利益は上場直後の2014年3月期を除き、2015年3月期から2017年3月期まで3期連続の赤字で、今期で4期連続赤字が避けられなくなっているという”残念な事実”から、そもそも期待値が大きく低下していたことなどが考えられます。

本日(8月9日)の決算発表で注目すべきポイントとは

では、本日予定されている2018年3月期第1四半期決算では、どこに注目すべきでしょうか。

まず第1は、主力のスマホ用液晶の動向です。5月時点で同社は、2018年3月期第1四半期(4-6月期)は、営業損益が▲150億円の赤字になる見通しと発表しています。赤字の主因は、スマホ向け液晶の売上減と研究開発費などの固定費の増加としています。

また、アップルが今後投入すると伝えられている有機ELパネルを搭載した新製品の動向を見極めようとして、アップルのデザインを模倣する傾向がある中国メーカーが生産調整を行うことがスマホ向け売上減少の理由として挙げられていました。

このため、決算ではこうした予想に対して実績がどうであったか、また第2四半期以降、回復が期待できるのかを精査したいと思います。

第2は、今年6月に代表取締役会長兼CEOに就任した東入來氏が、どのようなスタンスで中期経営計画を遂行しようとしているかです。ちなみに、東入來氏は同社が2014年に上場以来3人目のCEOになりますが、過去の経営の失策をどのように総括し、その反省を今後の経営にどのように反映させていくのかに注目したいところです。

第3は、資金繰りの問題です。同社の2017年3月期末の自己資本は3,249億円、自己資本比率は36%となっており、一見すると極めて健全な状態に見えます。

しかし、3期連続での最終赤字であることや、フリーキャッシュフローも2014年に上場以来一度も黒字化しておらず、運転資金のための短期の資金調達すら課題となっています。さらに、今後有機ELを本格的に立ち上げていくための設備投資資金も必要とされています。

このように、短期および中長期の資金調達が今後の経営にとって極めて重要な課題です。この問題に対して同社がどのように対処していくのかにも注目です。

まとめ

8日の同社に関する一連の報道のなかには、中国の液晶メーカーであるBOE社が同社への出資を提案しているという内容の記事もありました。

日の丸ファンドの下で再建を目指してきた同社が、中国傘下企業になるというのは普通では考えにくいことですが、ディスプレイ業界のなかでは中国企業のポジションが急速に高まっているため、こうした動きが現実化する可能性も完全には否定することはできません。

本日の決算説明会では、同社の経営陣がどこまで自力再建にこだわりを持っているのかも注視していきたいと思います。

ジャパンディスプレイの過去2年間の株価推移

LIMO編集部