そもそも日本取引所グループとは?

東芝(6502)の上場維持の是非が注目されていますが、この審査を行うのが、JPXという略称でも知られる日本取引所グループ(8697)です。

同社は2013年1月1日に東京証券取引所グループと大阪証券取引所(現・大阪取引所)が経営統合して発足した持株会社です。同年1月4日には東京取引所に上場しており、直近の株価は上場日の終値に対して約5倍と良好なパフォーマンスを見せています。

日本取引所グループの収益構造は?

同社の営業収益(売上高)は、市場利用者からサービスの対価として受け取る手数料が中心で、具体的には以下の4つの収益から成ります。

  • 取引関連収益(証券会社からの取引参加料)
  • 清算関連収益(証券会社からの清算手数料)
  • 上場関連(上場会社からの上場料金)
  • 情報関連(情報ベンダーからの情報料金)

市場の売買が活況となることや新規上場企業の増加、投資家ニーズに応じた金融商品(ETF、デリバリティブ等)の拡充などが収益拡大のカギとなっていいます。

一方、営業費用(コスト)は、人件費、減価償却費、システム維持・運営費などが中心であり、固定費が中心であることが特色です。

なお、バランスシートについては、親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)が0.6%(2017年3月期末)と極端に低くなっています。

これは、連結子会社である株式会社日本証券クリアリング機構の清算業務に係る多額の「清算引受資産」「清算引受負債」および「清算参加者預託金」「清算参加者預託金特定資産」を資産、負債両建てで計上していることによります。

第二次中期経営計画のポイントは?

同社が現在進めている第二次中期経営計画(2017年3月期~2019年3月期)では、以下の4つの取り組みに注力しています。

  1. 投資家の多様な投資ニーズを充たすとともに、中長期的な資産形成を活性化する(個人投資家層の資産形成活性化、多様な機関投資家の誘致等)
  2. 上場会社の価値向上を支える(コーポレートガバナンスの実効性向上等)
  3. 市場基盤の強化により社会の期待に応える(BCP・サイバーセキュリティの強化など)
  4. 取引所ビジネスの新たな地平を開拓する(海外ビジネス基盤の強化やフィンテックへの取り組みなど)

これらにより、第二次中期経営計画の最終年度には、2016年3月期実績に対して営業収益で+150億円、当期利益で+80億円を目標値としています。

また、ROEについては「市況変動にかかわらず、資本コストを上回る10%を中長期的に目指す」としています(2017年3月期実績は16%)。

なお、2017年5月に行われた決算説明会において、会社側は「中期経営計画の重要な目標について重大な未達が生じた場合、たとえば市況変動の如何にかかわらず中長期的にROE10%を維持するといった目標が達成できない場合などには、経営責任を問われる覚悟が必要と考えている」とコメントしています。

同社の収益拡大は、日本の株式市場の今後の動向に密接な関連を持つため、現在行われている先述の4つの取り組みが奏功していくかを注視していきたいと思います。

また、ガバナンスに問題のあった会社への対応次第では、投資家(特に外国人投資家)による日本市場の見方に影響を与える可能性があることには留意したいところです。

本稿は「個人投資家のための金融経済メディアLongine(ロンジン)」の記事を再編集したものです。オリジナル記事の全文は以下からどうぞ(有料記事)。
>>日本取引所グループ(8697)は日本の株式市場の「代理指標」として注目

 

LIMO編集部