3. 老後2000万円問題は解決できるのか

先ほどの家計調査の結果によると、65歳以上の無職世帯における平均貯蓄額は2000万円を超えることがわかりました。

「2000万円」と聞いて、2019年に世間の注目を集めた「老後2000万円問題」を思い出された方もいるでしょう。現役世代の中には、老後に向けた貯蓄の目標額を「2000万円」と設定している世帯も多いかもしれません。

ここで、「老後2000万円問題」について今一度整理してみましょう。金融審議会「市場ワーキンググループ」(第21回)厚生労働省提出資料によると、標準的な夫婦の老後の生活費には、公的年金以外に2000万円が必要、という試算がなされています。

3.1 高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)

  • 実収入(主に年金):20万9198円
  • 実支出(主に食費):26万3718円
  • 月々の赤字額:約5万5000円

《老後必要額》

  • 5万5000円✕12カ月✕30年(老後を30年と仮定)=1980万円 ※約2000万円

出所:金融審議会『「市場ワーキング・グループ」(第21回)厚生労働省提出資料』をもとにLIMO編集部作成

これが老後に2000万円が必要となる根拠です。ただし、この2000万円金額には、以下のような盲点があります。

  1. 介護費用が含まれていない
  2. 住居費が1万3656円で計算されている
  3. ひと月の家計収支には世帯差がある

さいしょの介護費用については、シニア世代特有の大型出費ですね。介護施設に入所を考えた場合は入居時に数百万円がかかるケースは珍しくありません。いつから介護が必要となり、それがいつまで続くかを事前に予想することはできません。とはいえ、その「いつか」は突然やってきます。長寿時代を安心して暮らすためには、介護に必要となる費用を意識しておく必要があるでしょう。

次の住居費については、持ち家世帯も含めた平均として1万円台で計算されています。住宅ローンの残債がある世帯や、老後も賃貸住宅で暮らす予定の世帯の場合、ここに月々の支払い分との差額が上乗せされるわけです。

さいごの家計収支については、全ての世代に通じることですね。収入や貯蓄、そしてひと月の生活費はライフスタイルによって世帯差が出ます。

ちなみに、公益財団法人生命保険文化センターの意識調査によると、夫婦二人で「ゆとりある老後生活」を送るためには、月々の生活費で「37万9000円」必要だというデータも。

これらを踏まえると、年金以外に必要となる老後資金が2000万円を優に超えることも十分に想定できるでしょう。

まとめにかえて

今回は「老齢年金世帯」である65歳以上リタイア組のお金事情について見てきました。働き盛りの現役世代にとって、老後資金はいつからどの程度必要になるかが見えにくいものです。

「いくら貯蓄する必要があるのか、その目標額を達成させるためにはどれくらいのペースで貯めていく必要があるのか」

まずは、自分のゴールを知ることから始めてみましょう。

参考資料

荻野 樹