2023年2月13日に発表された、セーフィー株式会社2022年12月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:セーフィー株式会社 代表取締役社長 CEO 佐渡島隆平 氏
セーフィー株式会社 取締役 経営管理本部長 兼 CFO 古田哲晴 氏

会社概要

佐渡島隆平氏(以下、佐渡島):みなさま、こんにちは。佐渡島です。本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。2022年の通期の決算発表を行います。どうぞよろしくお願いいたします。

通期ということで、まず会社の概要についてご説明します。私どもは2014年に設立された会社で、現在、創業9年目です。従業員数も350人近くなり、売上高は92.52億円、ARRは75億円を超えています。

課金カメラの台数は18.6万台です。我々はクラウドに映像を集め、そこから新しいアプリケーションを次々と生み出していくというクラウドカメラの事業を核に成長しています。

沿革およびマーケットシェア

お伝えしたとおり課金カメラ台数は18.6万台で、我々の成長のキーとなっているのは、セコムさん、USENさん、NTT東日本さん、KDDIまとめてオフィスさん、キヤノンマーケティングジャパンさんなどの大手の会社と一緒にこのようなマーケットを作ってきたことです。

クラウドモニタリング・録画サービスのシェアについても2022年時点で56.4パーセントと、以前の開示から10ポイント近く伸びています。

環境変化 - 高まる弊社サービスの活用余地

環境の変化についてです。アフターコロナということで「遠隔は当たり前」となり、労働人口の減少により、日本はDXを核に労働生産性を高めなければいけないという大きな社会課題を抱えています。その課題に対してAIの活用が盛んになってきたり、5Gなどでネットワークのボリュームが大きくなってきました。

半導体などの値段も下がってきており、マーケット環境も我々に非常に追い風となっています。映像とAIを活用して人の働き方を変えていき、データとアプリケーションでソリューションを生み出していきます。

ビジネスの成長に伴い拡大する広大なTAM

我々は課金カメラ台数18.6万台というシェアの中で、小さなマーケットをしっかり作り、横展開していくことが核になります。監視/モニタリングカメラの稼働台数は、約660万台です。TAMは約2,863万台ですので、しっかりとシェアを持ちながら横展開することでの成長余力があります。

加えて、グローバルでは4億台以上の開拓余地がありますので、アプリケーションやハードウェアを強化していくことにより、この大きなTAMに対してチャレンジしています。

2022年12月期 業績着地

決算の概況については、CFOの古田からご説明します。

古田哲晴氏(以下、古田):2022年12月期の業績はスライドに記載のとおりです。修正後の業績予想に対し、いずれも100パーセントを上回る着地となりました。ARRは75億円、課金カメラ台数は18万台、売上高は92億円です。次ページから詳細をご説明します。

KPI ハイライト

KPIのハイライトです。ARRは75億円で前年同期比32.5パーセント増、課金カメラ台数は18.6万台で前年同期比32.8パーセント増となりました。ARR・課金カメラ台数ともに、直販商流・その他卸商流・「Safie GO(セーフィー ゴー)」「Safie Pocket(セーフィー ポケット)」の商流でいずれも力強く成長したため、前年同期比30パーセントを超える成長となっています。

ARR及び課金カメラ台数の推移

ARR及び課金カメラ台数の推移です。ARRは前年同期比32.5パーセント増となり、第3四半期と比べても力強い成長が見て取れるかと思います。課金カメラ台数についても同様に、第3四半期・第4四半期でしっかりと伸びている状況です。

商流別課金カメラ台数の推移

課金カメラ台数の内訳です。いずれの商流も力強い成長を見ることができ、全体の台数が増加しています。

ARPC(カメラ1台あたりの単価)の推移

一方、カメラ1台あたりの単価は横ばいの4万400円で、第3四半期から同じ水準となっています。こちらは、平均単価が高い「Safie GO」「Safie Pocket」の商流の全体に占める割合が前回とあまり変わっていないためです。

既存顧客からの収益推移(NRR)

既存顧客からの収益率(NRR)についてです。こちらは年1回の開示とさせていただいており、2021年12月期は全社で152.8パーセントという水準でした。一方、2022年12月期は全社で122.6パーセントとなり、そのうち直販で112.3パーセント、販売パートナーで133.6パーセントとなっています。

既存顧客からの今期の売上額という意味では2021年とそれほど大きく変わっていませんが、ベースとなる分母が非常に大きく増えたことにより、割合はやや減少しています。ただし、重要なのは100パーセント以上を維持していることで、既存顧客からもしっかりと追加のオーダーが来ている状況は変わっていません。

スライド右側に、それを示した顧客獲得時期別のARRの実績をコホートチャートで載せています。

2022年12月期本決算 ハイライト

本決算のP/Lのハイライトです。売上高は92億円で、前年同期比9.4パーセントの成長を実現しています。売上総利益率は47.1パーセントで、前年同期比6.9ポイント向上しました。今後の成長に向けた人材獲得と、認知度向上に向けた広告宣伝費の投資を積極的に行ったことで、通期で12.8億円の営業損失となっています。

また、本日開示しましたが、新オフィスへの移転やさらなる人材投資を想定した中長期の事業計画の見直しを行った結果、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、約1.3億円の減損損失を特別計上しています。

内訳は、現在当社が構えている本社オフィスに関する建物および資産除去債務で、オフィスの移転に伴い、これらのコストを今期の特別損失として計上しています。

売上高の推移

売上高の推移です。スポット収益とリカーリング収益の内訳を示しています。第4四半期は全体で25億5,100万円です。そのうちリカーリング収益が18億3,300万円、前年同期比32.5パーセントの成長となっています。特に「Safie GO」「Safie Pocket」の導入が牽引している状況です。

スポット収益は新規導入の増加に伴い、2四半期連続で増収となっていますが、前年と比べるとやや落ちています。

売上高構成比およびスポット/リカーリング粗利推移

売上高の構成比です。直販とパートナー経由の比率では、直販が43パーセントと40パーセント前後で推移しているという意味では大きな変更はありませんが、やや直販が強くなった期でした。リカーリング収益対スポット収益は、第3四半期と同様にリカーリング収益が72パーセントとなっています。

粗利率の推移については、リカーリング収益の粗利率は横ばいで60パーセント弱の水準です。スポット収益の粗利率はわずかに増加し、20パーセント前後の水準となっています。

売上総利益の推移

以上のことから、売上総利益は第4四半期で12.5億円となり、売上総利益率は49.1パーセントで、前年同期比7ポイントの改善となりました。リカーリング収益が伸びてきたことが大きく影響しています。

売上高および売上総利益の推移

売上高・売上総利益の推移です。リカーリング収益は65億2,700万円、前年比41.6パーセントの増加となりました。売上総利益は43億5,600万円、前年比28パーセントの増加です。

販売費及び一般管理費の推移

販売費及び一般管理費の推移です。販管費の総額は16.5億円で、四半期別に見ますと、第4四半期は積極的なマーケティング施策により、S&M(Sales and Marketing)施策を中心として全体のコストが増えています。

営業利益の推移

第4四半期は約4億円に近い営業損失を計上しました。過去と比較して最もしっかりと先行投資を踏んだ結果です。

達成するための優先順位

佐渡島:事業戦略について簡単にご説明します。当社のARRは、「課金カメラ台数×1台あたりのARPC」で構成されています。まずは課金カメラ台数をたくさん増やしていこうと考え、マーケットシェアを拡大していますし、シェアもしっかりと伸びており、新業態への開拓も随時進めています。

課金カメラ台数の増加を優先的に取り組んでいますが、今後は、課金カメラの中から単価をしっかりと追いかけるようなソリューションを作っていくことが非常に重要になってきます。こちらに投資フェーズが徐々に移ってきており、今後、実績を出していけるように投資を加速しています。

達成にむけた成長テーマ

この数年間は「現場DX」として、「映像データであらゆる産業の現場をDX(デジタル・トランスフォーメーション)する」というビジネスコンセプトをもとに進めていこうと考えていますので、変わらず「現場DX」を推進していきます。

クラウドカメラを使った現場DXの5ステップ

こちらは「現場DX」の5ステップについて表したスライドです。建設などの現場を持っている方々にとって当たり前のツールはなかなかありませんでしたが、防犯カメラを活用して自動的に見るところから、遠隔で仕事をしていく、自分の目の代替として使っていただくところが増えてきました。

今、これが当たり前のように使われてきていますので、他のシステムと標準化して使っていただきたいと考えています。さらに、他とつながっていくためにAPIで連携していくことで、さまざまな映像データの活用を自社だけでなく、サプライチェーンも巻き込んでできるため、見きれない部分をAIで解決していきます。

さらに、サードパーティを巻き込んだエコシステムも作り、業界・社会課題を解決していくというかたちで、我々はこのDXプロセスを定めています。現在のマーケットとしては、「遠隔で見る」ところから「いろいろなサービスにつながっていく」ところがあります。このような大きな潜在マーケットをもとに足元を固めているところです。

大きな成長余地 - セーフィーが解決できる顧客課題は多様

我々の成長余地についてです。「防犯」「遠隔」でまだまだできることはたくさんありますが、さらに「業務ツール」としてつながって当たり前に使っていただきたいと考えています。

お客さまごとのソリューションを作っていくとなると、小売であれば店舗の無人化・省人化などが必要で、そのためにPOSデータなどで来店者属性を分析していきます。

建設であれば施工管理が簡単にできることも当然ですが、そこから1歩進んで、人の目では見きれないような安全などを検知していくことで、さまざまなサプライチェーンがよりよくなっていくと考えています。我々はお客さまの課題に1つずつ向き合い、ソリューションを作っていきます。

新商品のご紹介:Safie GO PTZ Plusのリリース

新しい製品を出しましたのでご紹介します。i-PROさんは、パナソニックさんから派生して独立した会社です。この会社と一緒に「Safie GO PTZ Plus(セーフィー ゴー ピーティーゼット プラス)」というLTEを搭載したカメラをローンチしました。

遠く離れた場所をズームしてしっかりと見ることができたり、GPSが付いていますので、遠隔地から今どこに対象のカメラがあるのかもマップ上ですぐにわかります。そのような新たな機能を入れて、i-PROさんと一緒に建設現場を攻略していこうと考えています。

現場の立会業務の移動時間を軽減

事例をいくつかご紹介します。まずインフラで、NEXCO東日本さんの例です。事務所から何十キロメートル、何百キロメートルと離れた現場に行って帰ってくると、どうしても半日や1日かかってしまいます。点検や測量など単純なことについては、DXとして遠隔地から測量を行ったり、現場確認ができるようにしました。

2024年に働き方改革が大幅にアップデートされるため、インフラ・建設業でも週休2日制や生産性向上を大きく進めなければいけないという課題があります。それに対し、現場を止めずにできるソリューションとして「Safie Pocket」を使っていただいています。

風車の建設現場の業務効率化や知の共有を実現

日立パワーソリューションズさんの風力発電所の建設の例です。従来であれば、風力発電の羽根のところに登り、確認しながら作業します。しかし、ベテランの作業員と異なり若手の作業員がアサインされてしまうと、どうしても安全確認の質や作業効率が悪くなってしまいます。

そこで我々のプロダクトを使うことで、ベテランの方がまとめて見たり、適切な指導・アドバイスをすることによって安全面にも寄与しながら、ノウハウの共有として動画を残すこともできます。1点もののプロダクトを作る時にも非常に役立っているということです。

危険箇所見える化による安全管理レベル向上

ゼネコンもかなり進化してきています。竹中工務店さんは、2024年の働き方改革のアップデートに向けて生産性向上を大幅に進めなければいけない中で、ベテランの方が毎回現場に行かずに、リモートでの立会や教育指導によって若手の人たちを支援しています。

危険箇所の低減や施工管理の日数を短くしていくことにしっかりと寄与し、映像の振り返りによる知識の共有などにも活用されています。建設現場ではこのようなことがより当たり前になりつつあり、広がってきていると考えています。

クラウドの利便性を評価し、入退室管理に採用

他にも新しいプロダクトで「Safie Entrance2(セーフィー エントランスツー)」という顔認証での入退場管理システムがあります。

スタートアップ企業で事務所を機動的に運用したい時、このようなシステムを活用すれば顔認証で瞬時にドアの開け閉めができます。また、総務や人事でのカード発行や管理の負担もなくなるため、管理者の負担もなくなりつつ、利用者のメリットも上がります。

今後、カメラと入退場を連携したシステムのニーズが出てくることが見えていますので、オフィスビルの開拓のためにしっかりと取り組んでいきます。

当社の顧客基盤:大手企業を含む導入 / 活用実績(一部)

当社の顧客基盤についてです。ファーストリテイリングさんや、飲食チェーン店、建設現場などをお持ちのみなさまのDXを支援しています。以前からこのような現場を持っているみなさまにカメラをどんどん活用していただいていますが、昨今は公共やインフラにも広がりが出てきていますので、よりソリューションを進化させていきたいと考えています。

2022年のサマリと今後に向けて

2022年について、下期はしっかりと成長をお見せできたと思いますが、上期は非常に課題が多かったと考えています。この課題の解決に向けて、次の3点にしっかり取り組もうと思っています。

1番目は、カメラ台数のさらなる追求です。やはりシェアおよび課金カメラ台数を増やしていかなければいけないと考えています。

2番目は、遠隔を中心とした顧客付加価値の創出です。今までは「プロダクトアウトで、クラウドカメラだから『Safie』」ということで利用していただいたところもたくさんありましたが、やはりお客さまの付加価値を上げていかないと今後は成長できないと考えています。

3番目の経営基盤の強化も非常に重要なテーマです。次ページから詳細をご説明します。

1.カメラ台数のさらなる追求

1番目の「カメラ台数のさらなる追求」についてです。家から街まであらゆるところでカメラのニーズが出てきています。屋外で使っていただいたり、屋内でもエッジAIのソリューションなど、さまざまな現場で使っていただけるようにラインナップを拡充していく必要があります。

いろいろな機器がありますので、LTEやWi-Fi、有線を活用するなど、さらに充実させていきます。

また、1つのチェーン店で数台という規模から、1拠点あたり30台、50台使っていただくような大型ショッピングモールやホームセンターなどにも入れることを考えると、やはりコスト競争力のあるサービスのラインナップがクラウドカメラとしても必要となります。ここはしっかり強化していくことで、まだまだシェアを追えると考えています。

また、いろいろな場所にカメラを置くと、そこに対して工事や保守が発生します。営業の取次などを行っていただく方々にも、我々がミドル・バックとしてしっかりとサポート体制を強化することで、さらに営業の枠組みを広くとることもできますので、このようなところに対して力を入れていきたいと考えています。

2.遠隔〇〇を中心とした顧客付加価値の創出

2番目の「顧客付加価値の創出」についてです。カメラを活用したリモート店長やリモート監督はすでに出てきていますし、働き方改革や労働力人口の減少は当社にとって非常に追い風となります。お客さまの目線に立って、しっかりとソリューションを作っていくことが求められています。

2.遠隔〇〇を中心とした顧客付加価値の創出

顧客付加価値として、リモート店長では、遠隔から各店舗の把握やQSCチェック、オペレーションの改善ができます。今までは1店舗あたり1人の店長がいましたが、1人が20店舗、30店舗を同時に管理できるようなソリューションとなります。

リモート監督では、遠隔地からより高度な技術を伝授できることが必要となりますので、我々だけでは限界があると考えています。AIを活用する場合はAIerや他のスタートアップ企業、警備会社などと一緒に取り組んでいきます。

お客さまのコストを削減したり、売上を上げていくことを考えると、さまざまな費用を人の代わりにカメラに置き換えていくことが求められます。このような部分をしっかりと構築し、お客さまの目線に合った顧客付加価値、まさにソリューションを作っていこうと考えています。

(参考)アプリマーケットの基盤となるプラットフォームを構築中

我々は「映像から未来をつくる」というビジョンを掲げています。家から街まであらゆるところがデータ化、映像化していく中で、人が行っていることをアプリケーションとして提供していこうと考えています。

業績として実を結ぶように、映像データをすばやくアプリケーションに変えていく最適なプラットフォームや、さまざまなセンサー連携、アプリケーションの作り手を増やしていくことにしっかりと投資しています。

(参考)プラットフォームバリュー強化にむけた取組み

映像プラットフォームの強化と、新しいソリューションの強化の2軸で投資しています。AWLさん、FastLabelさんは、映像プラットフォームを提唱したり、AIをより速く大量に作ったりしています。

また、MUSVIさんのように、新しいプロダクトを一緒に売っていくことでお互いが成長し、プロダクトラインナップを増やすという取り組みもあります。このようにしっかりと仲間作りを進め、当社だけではできないことにしっかりと投資し、今後はM&Aも念頭に投資を加速していきます。

3.経営基盤の強化(1)新役員の就任

経営基盤の強化についてです。上期の大きな反省を踏まえて、しっかりとお客さま目線に立ったプロダクトを作っていきます。

エンタープライズのお客さまに対しては営業をしっかり強化していくということで、営業本部、企画本部のトップを大手から招き入れました。CxOとしてより加速的に営業したり、プロダクトを作ったり、顧客目線に立ったサービス作りをしっかりとできるように経営基盤を強化しています。

3.経営基盤の強化(2)ESG-多様なステークホルダーへの貢献

ESGは非常に重要なテーマです。「環境」「社会」「ガバナンス」について、さまざまなステークホルダーにご満足いただけるようなサービス作り、人作り、会社作りを実施しています。

3.経営基盤の強化(2)ESG-データガバナンス委員会

ESGの一例ですが、データガバナンス委員会についてです。当社はカメラの映像を使う企業ですので、プライバシーやプラットフォームのあり方が問われてきます。そこで、データガバナンス委員会を年4回開くことで、カメラの設置のあり方や消費者保護のあり方を検討しています。今後、国にも提言しながら、データプラットフォームとしての新しい道筋を模索していきます。

3.経営基盤の強化(2)ESG-カメラ画像の取り扱いに関する情報発信

例えば、さまざまなユースケースでカメラを活用する際、どうしても配慮しなければいけない事項があります。その配慮に漏れがないように、消費者の保護につながるように、我々としてもカメラ画像の取り扱いに関する情報をしっかりと発信することに注力しています。

3.経営基盤の強化(2)ESG-自治体におけるDX推進支援

市区町村でも、たくさんのカメラを使っていただけるような取り組みを行っています。スライドは、神奈川県逗子市の事例です。これまで海岸を職員が目視して状況を把握していましたが、クラウドカメラによる遠隔モニタリングで簡単に映像で状況把握ができ、個人が特定されるような情報を消した状態でその情報を提供できます。

今後、自治体でカメラを使うことが当たり前になってきますので、ESGデータガバナンスの取り組みがしっかりとできることにより、地方公共団体のみなさまからも支持していただける基盤ができます。営業としても大きな収穫になりますので、ESGと営業活動という観点に立ちながら、経営を強化していきます。

2023年12月期 業績予想

2023年の業績予想については、古田から簡単にご説明します。

古田:今年度の予想値になります。ARRは94億5,000万円で前年度比25.5パーセント増、課金カメラ台数は23万9,000台で前年度比28.4パーセント増、売上高は116億1,500万円で前年度比25.5パーセント増、売上総利益は59億400万円で前年度比35.5パーセント増を狙っています。最終的な営業損益は、8億円から12億円の損失を見込んでいます。

2023年12月期 業績予想 – 売上高

売上高の内訳はリカーリング収益は84億9,400万円で、前年度比30.1パーセントの成長を見込んでいます。

販売費および一般管理費の内訳

販売費・一般管理費の内訳です。S&M(Sales and Marketing)、R&D(Research and Development)、G&A(General and Administrative)のいずれも、主に人件費を中心とした増加です。S&Mは37億円から38億円、R&Dは19億円から20.5億円、G&Aは11億円から12.5億円を見込んでいます。

G&Aについてのみ、今年7月に予定しているオフィス移転に絡んだ外注費や家賃の増加などにより、過去に比べて大幅なジャンプするかと思います。

来期も先行投資として採用は続けますので、トータルでは2022年よりは赤字幅がやや縮小しますが、2023年もまだ黒字化には至らないという予想です。

質疑応答:従業員数の減少について

質問者:S&Mについて、2022年10月の183名から2023年1月は180名にやや減少しました。なぜ減少したのかを教えてください。やはりリテンションが難しいのでしょうか?

古田:管理上、内部の集計の仕方が変わりました。人員の配置が変わっただけで、全体としての社員は増えています。当然、退職はどの部署でもありますが、上場の前後で会社のステージが変わるということで、健全な新陳代謝が起きています。

質疑応答:特定卸商流の解約率について

質問者:特定卸商流の解約率は、2022年9月の2.7パーセントから2022年12月は3.8パーセントに拡大しています。季節性でしょうか? 拡大した理由と2023年の見通しについて教えてください。

古田:特定卸商流において、2022年9月の解約率の2.7パーセントは、想定よりかなり低い数字です。当社では、当商流の自然な解約率は3パーセントから5パーセント弱の範囲だと見ており、予想どおりの推移となっています。

解約が増えたというよりも、前回はやや大型の新規案件があり、分母が少し大きくなったため2.7パーセントとかなり低めの水準になったと考えています。その後も月次で数字を細かく見ていますが、毎月3パーセントから4パーセントの範囲内を凸凹しながら安定推移を保っている状況です。

質疑応答:従業員数の今後の見通しについて

質問者:従業員数の今後の見通しを教えてください。

古田:昨年は345名となり100名弱増員しています。今期の人員計画も100名程度を考えており、毎年100名前後、月10名弱のペースで新しい人が加わります。

いろいろと試行錯誤しましたが、新しく入ってきた人を健全に受け入れ、育成し、機能していくために、組織として受け入れられる人数で増やしていこうと思っています。2023年、2024年は、毎月約10名、年間100名前後をイメージしています。

佐渡島:少し補足します。今年から新卒の採用を20名前後増やしており、定期的に若くて優秀な方の採用を強化していこうと考えています。十分に若手が入り、全体の平均年齢も下げつつ、成長できる人材を増やしていこうと思います。

質疑応答:今後の全体の見通しについて

質問者:昨年の上期は商流に問題がありましたので、ボラティリティがあったと思います。今後の全体の見通しは保守的に考えているのでしょうか? 着地点を教えてください。

佐渡島:上期は我々としても非常に課題の多かった期であったと反省しています。下期はリカーリング収益は前年比30パーセントを超えているため、下期のモメンタムを横ばい、または伸ばしていけるように取り組んでいきたいと考えています。

質疑応答:課金カメラ台数の見通しについて

質問者:計画の中の課金カメラ台数の見通しですが、第4四半期のQonQの実績を踏まえると、見通しが若干コンサバティブに感じます。足元でボトルネックがあるのか、保守的な数字を一定程度見込んだのかを教えてください。また、今回直販がやや強いですが、これは新しい製品の部分でしょうか?

佐渡島:計画台数は、決算の発表時、IPOの前後での成長率が著しく大きかったため、その引き直しを行っています。投資家のみなさまに誤解を招いてしまったことは大きな反省点だと考えていますので、十分に達成できる見込みの数字を入れています。

直販が強い理由については、CROを下期から任命し、そこに対しエンタープライズを強化していったことが大きな理由だと考えています。今までどおりマーケティングも継続して行っており、SMBやEコマースから入ってもらうケースなど、いわゆるおかわりとなる部分は十分にあります。

特に新規でエンタープライズのお客さまに深く刺していき、期日やプロダクトのソリューションを煮詰めてご提案したことにより、十分にその成果が上がり、直販がやや強くなったと思っています。

しかし、さらに直販やエンタープライズを強く営業できるポイントがあると考えています。直販の比率を高くしていく意図は特にありませんが、エンタープライズのお客さまをパートナーのみなさまと一緒に開拓していくこともできています。

直販だけではなく、パートナーのみなさまと一緒に伸ばしていけるような営業戦略をきちんと推進していくことで、30パーセント以上の成長を作っていきたいと考えています。

質疑応答:売上総利益率の見通しについて

質問者:売上総利益率の見通しがかなり改善しているように見えます。これはスポット収益とリカーリング収益のミックスによるものか、もしくはスポット収益もしくはリカーリング収益の中で、売上総利益率にポジティブに効くようなものがあるからでしょうか?

古田:こちらは両方とも微妙に効いています。売上総利益率は第4四半期での実績値ですでに49.1パーセントまできており、さらにここからの微妙な増加で2023年通年で約50パーセントとなります。

2022年はリカーリング収益の比率が大きくなり、円安下にもかかわらず、ぎりぎりリカーリングの売上総利益率は維持できました。裏側でコストダウンの努力がいくつか結実したことで49.1パーセントまできているため、ここからの自然な延長の中で、さらに1パーセント程度改善します。

質疑応答:S&Mの内訳について

質問者:S&Mには37億円を投資しますが、マスメディアなどの内訳を教えてください。2023年の顧客獲得コストは2022年に比べるとどのようになりますか?

古田:S&Mの費用は、今期に見込んでいる内訳のうち、かなり多くの部分が人件費です。約37億円を見込んでおり、広告宣伝費や販売促進費は十数億円で、20億円以上は人件費です。

広告宣伝にかける費用は2022年と大きくは変わりません。正確に言いますと、マスメディアなどの露出は少し減りますが、販促費などが増えています。広告宣伝費と販売促進費の総額は変わらず、人件費が増えた分が増加しています。

質疑応答:ARPCの単価について

質問者:ARPC単価を長期的に伸ばすために「App Store」などを使用しますか? また、その時期は2024年の話か、その先の話になるのかを教えてください。

古田:長期的には「App Store」のようなものやいろいろなアプリが出てくる世界は考えています。足元はそのようなアプリストアよりも、一つひとつの業界の課題に即したソリューションをきちんと出していくことにより、「遠隔」を中心としたソリューションを作っていきたいと考えています。

佐渡島:小売業では「無人の店舗を出したい」、建設やインフラ業では「2024年の働き方改革で週休2日をすべての業態で行っていくため、人の働き方を削減したい」などオーダーが明確にあります。例えば、1店舗の従業員を1人減らすより、0.2人や0.3人ずつ減らし、全国の店舗全体で何十人か減らしたいといったニーズがあります。

建設業でも、一気に人を削減できませんが、ソリューションで「カメラやロボティクスなどを活用したい」という需要が的確に見えてきていますので、お客さまに根差したソリューションを確実に作っていきます。

我々も仲間づくりへの投資を行ったり、無人店舗向けのソリューションをスタートアップの企業と連携して作っていくことにより、長期的に確実に伸ばせると考えています。お客さまに深く入っていくことで、まずは確実に伸ばすことがポイントです。

そこがある程度見えてきたら、アプリストアのようにさまざまなアプリケーションをお客さまに選んでいただき、ソリューションとして使ってもらうかたちが広がると思っています。優先順位としては十分に顧客攻略を行い、お客さまが「どのように使って、何を解決したいか」を作り込んでいくことが、まずは大事だと思っています。

質疑応答:ARRの目標について

質問者:以前の発表でのARRの2025年の目標に変更はありませんか?

佐渡島:ARRの2025年の目標についてはさらにいけると踏んで上場後に開示したつもりでしたが、反省点が非常に多く、特に上期の業績でその成長率には満たないと判断しました。1年遅れてしまっているのは、完全に我々の経営の落ち度であると考えています。

中長期のARRの目標はいったん取り下げ、毎年の成長をきちんと達成していくことを行い、投資家のみなさまの信頼を獲得し、確実に成長していくことを考えていきます。今回はいったん取り下げて、開示した成長をまずはきちんと達成し、中長期のところはその先でどんどんお話しできるようにしたいと考えています。

佐渡島氏よりご挨拶

本日はお集まりいただき、ありがとうございました。今後も「映像から未来をつくる」というビジョンのもと、「現場DX」というミッションを中長期的な目線で確実に成長しながら行っていきたいと思っています。

投資家のみなさまのご支援が我々の中長期の成長につながっていきますので、ぜひ今後ともご指導・ご支援のほどよろしくお願いいたします。

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