2023年1月28日にログミーFinance主催で行われた、第48回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナーの第2部・株式会社SERIOホールディングスの講演の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社SERIOホールディングス 代表取締役社長 若濵久 氏
元・ファンドマネージャー/元・ディーラー 坂本慎太郎(Bコミ) 氏
経済アナリスト/経営コンサルタント 増井麻里子 氏
目次
若濵久氏(以下、若濵):株式会社SERIOホールディングスの代表取締役社長を務めております、若濵久と申します。本日は、当社のIRセミナーをご視聴いただきまして、誠にありがとうございます。よろしくお願いいたします。
本日はスライドに記載のとおり、合計7つの中身についてお話しします。
会社概要
若濵:当社の会社概要です。このSERIOホールディングスは、2016年に大阪本社で設立した会社ですが、実際の事業は株式会社セリオという法人で行っています。こちらは2005年の設立で、グループとしては現在18年目の会社となっています。
現在は、正社員・パートタイマーを含めると3,000名を超える従業員とともに働いています。
ビジョンとミッション
若濵:先ほど、司会の方にもご紹介いただきましたが、当社は「家族の笑顔があふれる幸せ創造カンパニー」というビジョンを掲げています。
そして、そのビジョンのもと、「仕事と家庭の両立応援」「未来を担う子どもたちの成長応援」の2つを事業ミッションとして取り組んでいます。
ミッションに基づいた事業展開
若濵:具体的な業務内容として、大きく4つの事業を行っています。1つは、働く機会を創出していくための、就労支援事業です。わかりやすく言うと、人材派遣の事業となります。
世の中には数多くの人材派遣の会社がありますが、当社の特徴として、働くお母さん、つまり女性が家庭のことはもちろん、社会で働きやすい環境を提供していきたいという想いで、主にパートタイム型の就労形態や、そのような仕事の派遣を行っています。
実は、創業時からこのような事業コンセプトで取り組んでおり、オフィスワークやコールセンターといった仕事を中心に支援しています。現在は、3万人を超える方が登録されています。
そして、放課後事業は、小学生の学童クラブの運営を行っている事業です。
3つ目の保育事業は、保育園の運営を行っています。
そして、最後の緑化事業には、一昨年から取り組んでいます。こちらは保育園の園庭の芝生化を推進している事業となります。詳しくは、後ほどご説明します。
売上高・経常利益の推移
若濵:会社の創業から今までの売上高や経常利益の推移です。先ほどお伝えしたように、当社は就労支援事業からスタートした会社で、仕事と家庭の両立応援を行っています。
そして、仕事だけではなく、仕事をするための家庭のサポートも行っていきたいと考え、創業から5年目に子育て支援をスタートしました。それが放課後事業となります。
7年目には、保育事業をスタートしました。スライドのグラフを色分けしていますが、ご覧のとおり、保育事業が立ち上がってきた9年目、10年目くらいから、会社の業績が一気に拡大しています。
また、2018年には当時のマザーズ(現グロース)市場に上場しました。
事業環境 最近の政策
若濵:スライドの左側に、最近の国の施策を記載しています。当社が行っている、女性の社会進出や働く機会の創出といった就労支援や、子育てや待機児童の対策、保育園や放課後の事業に関しては、国の政策・施策に連動して動いています。
ご存じのとおり、2023年4月にこども家庭庁が創設されます。このあたりは、子どもや家庭によりフォーカスした国の取り組みとして、我々の事業にも連動すると考え、期待を寄せています。
また、年明けには岸田文雄首相が「次元の異なる少子化対策」という大きな方針を打ち出されました。これからの国の具体的な政策・施策の中身についても、我々はウォッチしていきたいと思っています。こちらも当社の事業環境としては、非常に期待が持てるのではないかと考えています。
就労支援事業 売上計画と業種内訳
若濵:スライド左側は就労支援事業の売上高の推移です。前期は、非常に大型の短期の業務を受託したことにより、一時的に売上が大幅に伸びましたが、今期はそのような一括での仕事がなかったため、売上が減少しています。ただし、ご覧のとおり、コロナ禍前と比較すると、大きく成長していることが伝わると思います。
具体的な業務内容としては、オフィスワーク、コールセンターなどの業務が全体の4分の3を占めています。
また、シャープやダイキン工業、日立製作所、三菱電機のような大手家電メーカーの修理の受付を行う、コールセンターへの派遣を、当社は得意としています。
放課後事業 施設数予定(2023/1/13時点)
若濵:放課後事業の施設数です。先ほどお伝えしたように、小学生を対象とした「学童クラブ」と言われる施設の運営を行っています。現在、144施設を運営しており、そのうちの約90パーセントは公立小学校の学校内や、小学校に隣接した場所に開設しています。
この事業の業績や成長には、この施設数が非常に大きく関わってきます。そのため、積極的に施設の拡大・展開を行っていけば、それが売上高や利益に直結していきます。
しかし、当然ながら大切なお子さまを預かる施設として、安心・安全の確保は当たり前のことです。さらに十分な質を担保し、子どもにとってよりよい環境を作っていきます。我々はこの両輪がとても大切だと考えています。
そして、これまで施設数は、144施設のまま続いていていましたが、これは施設を増やしていなかったわけではありません。施設が増えたところもあれば、自治体との受託契約の関係で減ったところもありました。
当社は5月決算ですが、このような施設は4月に新規開設します。当初の計画では、今年の4月に10施設を増やし、合計154施設となる予定でした。しかし、結果的には計画の約2倍となる、19施設が純増となりました。今までと比べると新規開設が多くなっています。
この内訳をご説明します。今年の4月は、新たに25施設をスタートします。その反面、減少する施設が6施設あるため、全体では19施設の純増となり、合計で163施設となります。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):質問しながら、お話をうかがいたいと思います。先ほど、この144施設という施設数が横ばいになっていることについて、スクラップアンドビルドのように、契約が切れて新規開設も始めたというお話がありました。
そもそも、この放課後事業の学童保育に関して、場所などは公的なところからそのまま受託して引き継ぐかたちになるのか、あるいは保育園のように新規での開設が必要になるのか、そのあたりのビジネスモデルを教えていただきたいと思います。
若濵:我々が取り組んでいるのは、公立小学校に対する学童クラブの運営です。ここを利用する子どもたちの数が一番多いため、我々としても大切なところだと思っています。そして、そのような学童クラブのほとんどが、学校の中に開設されています。
ただ一方で、一部に児童数の増加が集中しています。学童クラブを利用する児童数が増えているところ、横ばいのところ、減っているところがそれぞれありますが、小学校の児童数が増えているところでは、やはり学童クラブの利用児童数も増えています。
また、すでに学校の校舎の空きスペースは非常に窮屈になっており、そのような関係で、自治体によっては学校の中にあるべき学童として、学校外に作るというケースもあります。
坂本:御社では、通常の学童クラブを基本的には学校の空き教室で運営されているということですが、基本的には子どもの居場所の提供と、それに加えて若干の教育を行われています。
つまり、公民館や市役所の分室のようなところに併設されている大きな学童は、主力ではないということですね。
若濵:おっしゃるとおり、主力としては学校の中が多いですね。児童館などの受託運営も行っていますが、大半の運営施設は学校内学童となります。
坂本:よくわかりました。
保育事業 施設数予定(2023/1/13時点)
若濵:続いては、保育事業についてです。こちらも業績等との兼ね合いを見ると、施設数がとても大切ではあります。現在、43施設の運営を行っており、この4月には7施設を開園するため、合計50施設となる計画です。こちらも、当初の計画では47施設でしたが、計画を超えて展開することができました。
坂本:保育園の需要について、少子化対策で働く方が増えたことによって、保育園も増え、待機児童がかなり減ってきたと言われています。しかし、実際にはまだ数が足りず、待機児童が多い自治体や地域があるため、今後も施設数はまだ増えていくと見込んでよろしいのでしょうか? 業界の環境なども含めて教えていただければと思います。
若濵:そうですね。おっしゃるように、施設数に関しては、当社の問題というよりも、この業界を取り巻く環境によるもので、その環境が非常に大きく変わっている実態があります。
マスで捉えると、少子化によって待機児童が減り、保育園の入園園児数が減ることにつながっていきます。そのため、是が非でも、少子化対策に力強く取り組んでいくことは、我々の事業環境に限らず、国の施策としても重要なのではないかと思っています。
ただ、そのような環境において、「我々はこの事業をどのように伸ばしていくのか」というところを考えると、5年ほど前までのように、どんどん保育園を作ればよいわけではないことは、間違いありません。
今は、既存の保育園の質を向上し、選ばれる保育園作りを行うことがマストになっています。それに加えて、新たに開園していく場合には、十分にリサーチし、需要が見込めるところを捉えながら行っていくことも必要です。つまり、単純に土地を見つけ、保育園を作っていくだけではありません。
例えば、今年の4月に開園するところに関しては、「公立の保育園を民営化しましょう」という世の中の流れもあり、もともとあるマーケットにあった保育園を、我々が運営していくことになりました。このような保育園は、先々を見ても需要が見込めると判断し、自治体からの委託で、我々を選定していただきました。
他には、「大型のショッピングモールの中に保育園を作りましょう」という取り組みもあります。実は、前々からイオンさまとそのような提携を組んでいます。今年の4月にも、愛知県にある新しいイオンモールに保育園を作るということで、我々も携わりました。このように、少し変化を加えながら運営している事業となります。
坂本:イオンモールに入る保育園は、企業内の保育所ではなく、誰でも行けるような保育所になるのでしょうか?
若濵:今までは企業内保育園というスタイルでしたが、今回は名称が違うため、少しわかりづらくなっています。いわゆる、企業主導型保育園とは違うカテゴリーにはなるものの、一応、事業所内保育園にはなるため、イオンさまの従業員の方も、地域の方も両方入れる施設となります。
このような保育園を作っていくため、今立ち上げ準備を行っているところです。
坂本:よくわかりました。
若濵:もう1点、岐阜県の県庁の中にも、新しく保育園を作っています。そちらも県の職員の方と、その周辺地域の方にあわせてご利用いただける施設となります。
ちょうど岐阜県庁が新社屋を建てるにあたって、「ぜひとも保育園を中に作りたい」ということで、事業所に新規開設する予定です。
保育施設の園児数充足モデルと当社園児数推移
若濵:保育園の園児の充足モデルです。スライドの左側をご覧ください。新しい保育園を100人の定員で作ると、初年度でだいたい半分くらいの園児数となります。これは、上の4歳児、5歳児が入らないことによります。そして、2年目、3年目と玉突きのようになって、だいたい4年目で保育園の定員が満員になるというのが基本的なスピードです。
ですので、新規施設が売上を出すだけではなく、既存園が3年、4年かけて後追いし、着実に業績にも連動してくることになります。
それを踏まえて、スライド右側のグラフをご覧ください。当社の保育園を利用している園児数の推移を表しています。昨年が1,800名で、今年の4月は当初、2,100名で着地する計画でした。しかし、新規施設の園児数が計画以上に大きく伸びる見込みで、2,450名に計画を修正しています。
エリアごと施設数(放課後・保育)
若濵:エリアごとの施設数です。スライドでは、放課後事業と保育園事業の施設数をミックスし、記載しています。大阪は関西に本社もあり、約60パーセントの施設を持っています。しかし、比率の高い関西エリアだけではなく、首都圏や東海エリアなどにも積極的に展開しているところです。
坂本:関西は5施設減ということですが、そもそも学童クラブや保育園の基本的な契約期間は、何年ぐらいなのでしょうか?
若濵:自治体によって差があるのですが、おおむね2年契約、3年契約が多くなっています。我々が事業をスタートした頃は、自治体が直接運営し、自治体の職員の方が学童施設で働くのがスタンダードでした。
しかし、この10年間で、我々のような事業者が参入し、専門会社に任せていく流れが増えてきました。今ではかなりの割合で、自治体が直接運営するのではなく、当社のような専門事業会社が運営する状況になっています。
また、2年、3年ごとに自治体から公募があるため、既存の施設を我々がしっかりと運営し、維持していくのか、そして新しい施設に関しては、既存の事業者の方よりもよい提案ができるのかを評価され、当社が成長できるかどうかを見極められることになります。
坂本:随意契約のようなもので、2年、3年で運営者が変わってしまうということも、意外とよくあるのでしょうか?
若濵:我々のような事業者としては、継続的な取り組みをいろいろと行っているため、指導員の顔が変わることが子どもたちにとってよいことなのかを考えると、スパンが短いと思います。これは、わりとシビアなところですね。
坂本:他の2年、3年で契約が満了する保育園などに、御社が手を挙げることもあるのでしょうか?
若濵:もちろんあります。その結果として、今年の4月は19施設増となりました。内訳を簡単にお伝えすると、25勝6敗で19施設の純増になっています。自治体の公募で我々が選定されなかったものだけではなく、施設の閉鎖もあったのですが、この勝率をどのぐらい上げられるかが重要です。
坂本:公募では、総合評価で事業者が選ばれるのでしょうか? 御社の取り組みを見るのか、それとも価格で判断するのかというところについて、やはり安いところが選ばれるのではないでしょうか?
若濵:そうですね。そのような傾向がある自治体も少しありますが、大きく見るとやはり総合評価だと思っています。
いろいろな項目があり、当然そこには価格評価点もありますが、その比率が全体の10パーセントなのか、30パーセントなのかというところは、はっきりと公開されています。価格競争に巻き込まれたくないという理由もありますが、やはり我々は価格よりも質を重視したいと考えています。
なお、費用の大半は労務費で、当然ながら、人件費は上がっていくものです。ですので、経験のある指導員をしっかりと確保しながら、安定した体制を作っていくために必要な労務費をかけて、契約を勝ち取っていきたいと思っています。
上半期トピックス
若濵:上半期トピックスです。派遣事業のブランドである「sacaso派遣」が、日本子育て支援大賞を受賞しました。この事業では、派遣スタッフを確保し、採用していく上で、きちんとブランディングしていく必要があるため、このような機会を積極的に手に入れました。
また、スライド右側に記載しているのは、病気やケガで仕事ができなくなった場合でも収入が補償される保険制度を、個人ではなく会社で導入するという取り組みです。
保険制度はすでに世の中にありますが、派遣業界では少ないと思います。派遣スタッフの方も同じ仕事の仲間として、安心して働ける環境を作りたいと考え、このような制度を導入しています。
セリオガーデン(天然芝の販売・施工・管理)
若濵:先ほど少しお話ししましたが、一昨年にスタートした芝生の事業について、「みどりのじゅうたんプロジェクト」というものを行っています。ご説明の前に、動画を1つご覧いただきます。
セリオガーデン(天然芝の販売・施工・管理)進捗・施工実績
若濵:我々は保育園の事業者でもあるため、会社のビジョン・ミッションについては、家族と子どもたちをキーワードにしています。ですので、ゴルフ場や国立競技場などのような芝生ではなく、保育園と幼稚園に特化して芝生を広めていきたいと考えています。
しかしながら、事業として広めていかなければ継続性がないと考え、販売・施工とあわせて維持管理も行うという点が、我々の大きな特徴です。
芝生の施工を行ってもすぐに枯れてしまって、「もう二度と芝生はやりたくない」「職員の方も忙しくて大変だ」などの話をよく聞きますが、そのようなところも我々がすべて巻き取っていくところが当社のサービスのポイントだと思っています。そして、そのあたりが1つの事業収益のベースになっています。
増井麻里子氏(以下、増井):こちらは保育事業のセグメントに計上されるのでしょうか?
若濵:今期まではそのような計画ですが、来期もしくは再来期には独立したセグメントで計上できるぐらいの規模感にしていきたいと考えています。
坂本:先ほどの動画では、子どもたちと一緒に芝生を植え付けていましたが、実際の施工は自社で行っているのか、それとも協力会社にお願いしているのでしょうか?
若濵:植え付けは基本的に子どもたちと一緒に、あるいは保護者の方も巻き込んで、1つのイベントとして、自分たちの園庭をみなさまと作り上げています。決して労務費の削減が目的ではありませんが、職員の方にも手伝ってもらい、みなさまと植え付けることをとても大切にしています。
植え付けだけではなく、水道などのいろいろな工事があります。一部非常に大きな面積の園庭などは、協力会社の方にご協力いただくケースもありますが、基本的には自社で施工しています。
坂本:この芝生事業は非常におもしろいと思います。現状、同業他社はいるのでしょうか? もしいるのであれば、コスト面など、御社の優位性についても教えてください。
若濵:芝生の仕事は昔からあり、各地域に造園業者はたくさんいらっしゃいます。ただ、保育園の園庭に特化した会社はないのではないかと思っています。実際に営業の場面で競合環境というのは、ほぼないと思います。
そのため、芝生の品種によっても違いますが、施工費に関しては他社とあまり大きく変わらないかもしれません。ですので、維持管理も行っていくというところを、当社は大切にしています。あわせて、人手をかけずにAIロボット芝刈り機によって芝を刈ることで、労務コストも大きく下げながら、品質を高めているところも我々の特徴の1つです。
おかげさまで芝生事業は今年で2年目になりましたが、「施設を倍に増やしていこう」と取り組んだ結果、今期は大きな金額ではありませんが黒字に転換する見込みです。来期以降、さらなる売上・収益の拡大を見込んでいます。
坂本:この芝刈り機は自動なのですか?
若濵:自動です。夜中に動く、ロボット掃除機の「ルンバ」のようなものですね。
坂本:夜中に稼働し、園児が遊ぶときには当たらないのはよいですね。
また、中計で累積施工施設数は200施設という目標がありますが、達成に向けた施策があれば教えてください。補助金などの協力があるのか、それともすでに引き合いがあるのでしょうか?
若濵:中計の初年度に18施設、今期に20施設プラス30施設で、来月はさらにその倍を目指して取り組んでいます。ですので、計画当時に見込んでいたとおりのペースにはなっていると思います。
また、先ほどご指摘がありましたが、自治体により少し差があるものの、この緑化推進事業ではCO2排出抑制の問題も含めて、国からかなりの補助金が出ます。これは我々に出るというよりも、施設を持つ保育園側に出ます。
東京都の保育園では、施工費のほぼ全額を補助金で賄えるため、「芝生事業を行いたいが、非常にコストがかかる」というハードルをクリアできます。もちろん、いろいろな規定はありますが、そのような意味では子育ての問題だけではなく、国の施策、大きく言えば地球の環境問題に対しても、非常にマッチしている事業だと思っています。
2023年5月期 通期見込(2023/1/13修正)
若濵:2023年5月期の通期見込みです。売上のトップラインは当初96億4,000万円で、こちらは計画どおりで、変更はありません。
営業利益、経常利益は期首の計画では約3億円でしたが、今回少し下方修正しています。いろいろな背景がありますが、一番は冒頭お話ししたように、来期に向けて新しい施設を計画以上に増やしていくことによって、それに関わる労務費、採用費などの初期投資がかかっています。
今期に関しては、若干の下方修正を行っているものの、来期に向けてより飛躍するために大きな投資ができていると考えています。
中期経営計画ローリング(2023年~2025年)
若濵:中期経営計画です。2024年5月期は、売上高も営業利益も変更していません。来期に向けて、100億円を超える売上高になるのではないかと考えています。
中期経営計画ローリング(2023年~2025年)
若濵:施設の中期経営計画です。放課後事業と保育事業は非常に大切であり、2023年5月期の計画を、来年の計画に対して非常に近いところまで持っていくことができていると思います。
そのあたりをさらに上積みしていくため、社会情勢や環境を踏まえながら、より効率的に、価値のある投資を行っていきたいと考えています。
2025年 ありたい姿を実現する事業規模、重要指標
若濵:中計のベースの考え方として、我々は従業員だけではなく、従業員の家族や派遣スタッフ、その子どもたちの総称である「セリオファミリー」のみなさまと一緒に幸せになっていきたいということを、会社の大きな目標として掲げています。
このセリオファミリーの人数を、2022年の11万人から2025年5月期には17万人にしようと考えています。今はおよそ13万人で、これがすべて業績にも反映されています。派遣スタッフが増えると業績が増え、セリオファミリーも増えます。園児数の増加と同様に、中計の1つの重要なKPIとして掲げています。
中期経営計画 事業戦略
若濵:事業ごとの戦略です。ガーデンのみが突出していますが、特化している事業モデル自体も新しいため、我々がマーケットリーダーになれるよう、さらに積み上げていきたいと考えています。
売上高の実績推移と中期経営計画
若濵:売上高の推移に中計を加えたグラフです。2025年に120億円を必ず達成していきたいと考え、取り組んでいます。
ESGへの取組み
若濵:ESGには会社として、力を入れて取り組み続けています。最近のトピックスは、大阪市のグリーンボンド債への投資です。大阪市で事業を行っている事業者として、我々も環境を考え、こちらに賛同しました。
また、ワーク・ライフ・バランスなどの従業員の福利厚生面についても、業界トップクラスを目指していきたいと考え、さまざまな施策を行っています。
SDGsへの取組み
若濵:SDGsへの取り組みです。先ほどの芝生の件など、数多くのことに取り組んでおり、我々の事業そのものがSDGsに直結するところが多くなっています。
世の中全体の問題になっている、食品ロスの問題に関しては、3年ぐらい前から取り組んでいます。昨今は保育園の給食に使用する、いろいろな食材が値上がりしていますが、そのような取り組みが今、原材料の仕入れ値の高騰を抑制できている要因の1つになっているのではないかと思います。
利益配分に関する基本方針
若濵:利益配分に関する基本方針です。配当性向は概ね20パーセントを掲げ、継続的に取り組んでいます。今期は収益との兼ね合いで、配当性向は40パーセントぐらいになりますが、株主のみなさまに安定した配当金を出すため、当初の配当と同額の7円を維持しようと考えています。
理想としては、配当性向に限らず、利益額を伸ばすことによって配当額を増やしていくことが、株主還元には重要だと認識しています。
坂本:配当性向は20パーセントが目標ということですが、今期は計算ベースで40パーセント程度になる予想です。前年の配当もある程度は維持しつつ、業績の拡大時には20パーセントになるようなイメージだと思っています。御社では、どのようにイメージされているのかを教えてください。
若濵:我々の事業規模として、配当性向は20パーセントの次のステップとして、30パーセントぐらいを目指していこうと思っています。そのためには当然、内部留保をある程度は蓄えていき、新しい事業投資を行い、そして会社の業績を上げていきます。
そのような根底があって、株主の方に長期的なレンジで還元できると考えているため、身の丈に応じて、株主還元も我々の重要なミッションとして常に掲げながら、取り組んでいきたいと思っています。
質疑応答:全国展開の計画について
坂本:「3大都市圏に拠点をお持ちですが、全国展開の計画はありますか?」というご質問です。
若濵:直近では、拠点を増やしていくことは考えていません。リモートで業務が行えるようになっているため、改めて拠点の位置付けや価値を見直していかなければなりません。派遣スタッフの登録面接も、ほぼ100パーセントWebで面接を実施しています。ですので、遠隔な取引先でもある程度はカバーできます。
保育事業・放課後事業に関しては、サポート体制や安全管理面、研修面などの業務効率化にドミナント戦略が有効だと現状では感じています。
質疑応答:従業員の待遇改善やスキル向上の施策について
坂本:「御社は『従業員の待遇をきちんとしたい』とお話ししていましたが、従業員の待遇改善やスキル向上の施策にはどのようなものがありますか?」というご質問です。
若濵:従業員のスキル向上は、どの会社でも重要な課題だと思っています。
当社は、従業員に保育士または放課後事業の指導員の割合が非常に多い会社です。子どもたちに直接関わる職員たちということで、よりよい仕事ができるような環境や成長できる環境を作ってあげることは、本人のためだけではなく、安心・安全な施設運営にとっても絶対に必要だと思っています。
そのため、研修のカリキュラムを構築し、eラーニングを導入するなど、非常にコストをかけて取り組んでいます。さらに、当社独自のチャレンジプランのような人事考課制度を設け、やりがいを持って社員が働ける環境整備に力を入れて取り組んでいます。
質疑応答:採用の施策や特徴について
坂本:採用面で苦労されることは多いと思いますが、取り組んでいる施策や他社と比較した場合の特徴を教えていただきたいと思います。
若濵:放課後事業の施設数が一番多く、現在140施設以上あります。それに比例して、働く職員数も非常に多くなっています。この事業では学校の放課後の時間帯に、通常の月には、1年生が来る2時頃から6時・7時ぐらいまで預かっています。そのため、働き方が8時間労働ではありません。
もちろん、保育という目線もありますが、そのような職員が1,000人以上いるため、採用する上でパートタイム型の就労形態を望む方の採用を、以前から継続的に行ってきました。
坂本:祖業から、そのような採用を行っていたのですね。
若濵:保育士の採用が難しいといわれる中でも、就労支援事業を行ってきた我々のベースがあるため、採用に強いのだと思います。
坂本:なるほど。時間帯から考えて、学童の指導員にはダブルワークの方も、けっこう多いのでしょうか?
若濵:ダブルワークというよりも、主婦の方や大学生などが多いですね。教育関係の大学に通う学生にとっては、最高のアルバイト先だと思います。
坂本:そうですね。午前中の授業が終わってからも、午後の授業に少し出てからもアルバイトができます。
若濵:また最近は、放課後事業・保育事業の新卒採用に力を入れています。特に放課後指導員は新卒で採用し、自社で育成していきたいと思っています。2023年4月に入社する職員の半分は、大学生のアルバイトからそのまま正社員に登用しています。
坂本:インターンのようなものですね。
若濵:おっしゃるとおりです。
坂本:働き方なども含めて御社がよいと判断した結果、正社員として入社というのは非常に効率的ですね。
若濵:我々もどのような人物かわかっており、期待できる金の卵だと思って採用していますが、お互いの状況が十分にわかって入社してくれるというのは、やはりうれしいですね。
質疑応答:芝生化の展開拡大における営業戦略について
坂本:「芝生化の展開拡大には営業の役割が大きいと思いますが、営業人材の獲得方法を含めた営業戦略を教えてください」というご質問です。
若濵:芝生化は、いかに知ってもらい、納得してもらうかだと思っています。しかし、実はあまり営業を増やしてはいません。例えば、今は園長会などの保育業界の集まりで我々がプレゼンを行い、「芝生化をぜひ行いたい」という保育事業者から、逆に声を掛けてもらう、反響営業のような方法を実施しています。
また、補助金の活用に関するウェビナーを開催し、補助金の申請と芝生のよさをより広く知ってもらい、反響を得ています。
現在はコロナ禍のため、保育園に訪問しづらくなっています。保護者は入れても我々は入れず、入口で少しお話しすることもありました。インターホンを鳴らして営業するという方法も行いづらい環境のため、そのようなことを行っています。
質疑応答:ウェビナーについて
増井:ウェビナーなどは、どのような時間帯に行っているのでしょうか?
若濵:いろいろな時間帯で行っていますが、お昼過ぎの午睡の時間であれば、園長先生の手が少し空く時間帯があるため、そのような時間帯をあえて狙ったりしています。
また、我々が保育園を運営しているのも非常に大きな武器になっています。行事ごとの様子などを全部わかった上で芝生を販売している事業者が、保育園も運営するという例は他にないと思います。保育園側のお悩み事や「こうありたい」というイメージに共感し、お互いにお話ができるのも我々の強みだと感じています。
質疑応答:セリオガーデンについて
坂本:「セリオガーデンについてです。反響営業が中心ということですが、芝生化したい園ではすでに行っているのではないでしょうか?」というご質問です。
これに関して、補助金の活用方法がわからない園や、芝生化したいと思っていてもそのステップまで進んでいない園が多いような気がしますが、いかがでしょうか?
若濵:実は、きれいな芝生がある園庭の保育園はけっこう少ない状況です。
坂本:田舎のほうにいけばあるとは思いますが、私はあまり見たことがないですね。家を芝生にした人からは「メンテナンスが非常に面倒くさい」というお話しか聞きません。また、芝生の種類によっては、芽が隣の家に広がってしまい、止めるだけでも大変といわれるように、管理の難しさがやはりあると思います。
若濵:当社はすでに10年ぐらい保育園を運営していますが、最初の頃は「園庭はすべて芝生がよい」と考えており、新しい園舎を作る時には工事業者に依頼して、園庭を全部芝生にしていました。しかし、維持管理がうまくできず、1年も経たないうちに芝生が全部なくなっていました。
芝生にしている園は数多くあると思いますが、今、それが維持できていないような園からは、定期的なメンテナンスが大変喜ばれています。おそらく、これまでそのような提案をあまり聞かなかったのだと思います。その結果、メンテナンスに対して、どのようなコストがかかるのかという問い合わせが多くあります。例えば、「メンテナンスしてくれるなら任せたい」「自分のところではもうできない」といったお話です。
坂本:なるほど。芝の種類にもよりますが、踏むと穴になったり、剥がれてしまったりすることは意外とよくありますよね。私の自宅近くにある公園も芝生ですが、1年の半分ぐらいは囲われて入れない状況になっています。やはり、踏まれることに強い芝を選定しているのでしょうか?
若濵:我々も従来は「和芝」といわれる日本の芝生や高麗の芝生などを使っていました。このような品種は非常にきれいなのですが、子どもの園庭にはあまり向いていない面もあり、今は「西洋芝」といわれる、非常に根が強い品種を選定しています。
また、夏に緑になる「夏芝」と冬に緑になる「冬芝」を、同じ園庭へ交互に植え、年中緑をキープする取り組みも行っています。冬の時期にすべて枯れてしまって茶色い園庭になってしまうのではなく、どの時期にも緑の園庭を作るという方針も、喜んでもらえていると思います。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:政府の打ち出した異次元の子育て支援策についてどう受け止めていらっしゃいますか?
回答:当社の就業支援事業や放課後、保育事業は政策の動きと密接に関わっており、育児両立支援制度などの政策の進行によって当社の事業も発展してきた経緯があります。「次元の異なる少子化対策」については、具体的な施策はこれから決まってくると思いますが、現行施策よりもさらに子どもや家庭にフォーカスした施策が出てくるものと見ており、当社としても注視していきます。
<質問2>
質問:人材はどんな方を採用されているのでしょうか。
回答:ここ数年は新卒採用に力を入れており、中途採用と併用しています。保育士は国家資格を取得している方を中心に採用していますが、事業を超えて応募することのできる社内の資格取得支援制度もあり、資格のない方がチャレンジできる土壌も整えています。
放課後施設に配属する方は、保育士のような国家資格が必要という縛りがないため、当社の放課後指導員として必要なスキルを身に着けるための研修制度を設けて、社内育成しています。新卒で採用する方は教育学部出身、中途の方は教員免許を持つ方も多くいらっしゃいます。
施設配属によらない総合職も採用していますが、共通して大事にしているのは、当社のビジョン「家族の笑顔があふれる幸せ創造カンパニー」、ミッション「仕事と家庭の両立応援」「未来を担う子どもたちの成長応援」に共感していただける方、という点です。入社してからも全員に当社のビジョン、ミッション、バリューを共有する研修を設けています。
<質問3>
質問:自己資本比率は、約46パーセントが現状ですが、今後50パーセント以上ということは考えておられますか。
回答:自己資本比率は直近では44パーセント台で推移していますが、当社にとって一番大きな投資が保育園の建設となり、その開設施設数が主な変動要因となります。利益水準のUPや借入の返済によって50パーセント台にすることも可能ですし、規模にもよりますがМ&Aなどで大きな投資が必要な際には自己資本比率が下がることも考えられます。あくまでも事業の発展を第一義に、柔軟に対応していきたいと考えています。
<質問4>
質問:競合環境はいかがでしょうか? 御社の強み・弱みを踏まえて教えてください。
回答:人材派遣、放課後、保育と、それぞれ顧客が違う事業が同規模のレベルで複数ある、という意味では、当社と似たような競合はあまり見当たりません。ドミナント展開による拡大や、事業相互の業績のリカバリーなどは強みと認識しています。多少の凸凹はあるものの、基本的には核となる3つの事業は右肩上がりで成長しています。
事業環境でいえば、人材派遣は、当社のようなパートタイム型の就労形態に特化している企業はないため、今後もこの特徴は活かしていきたいと考えています。保育は上場企業でのプレーヤーは数社程度ですが関西基盤は当社のみです。放課後は同じく上場企業でいくと施設数規模は上位に入ると認識しています。
<質問5>
質問:ROEが8パーセント以上ありますが、業界としては高いほうなのでしょうか。
回答:保育園を運営している企業を中心としてみた場合は、平均レベルです。ただ、その同業の中でも会計方式が2種類あり、その選択による利益のブレが大きいため、単年での純粋比較が難しいのが現状です。当社としては経年比較や成長率など、さまざまな見方で状況を見ています。中期経営計画に則って、当社の掲げた重要指標を達成することを第一義に事業を進めてまいります。
<質問6>
質問:売上原価が大きいですが、その内訳をざっくり教えてください。
回答:派遣スタッフの人件費、保育園、放課後の学童施設の従業員の人件費はすべて原価計上しており、売上原価の大部分を占めます。本社機能や本部従業員の人件費は販管費に入ります。
<質問7>
質問:保育園の賃上げが急速に業界で進んでいるとお聞きしますが、貴社の賃上げはどの程度進んでいらっしゃいますか。
回答:当社の保育士の賃金や待遇については他社と比較しても進んでいると認識しています。そのため、採用は順調であり、離職もおさえることができています。また、人事評価制度に則って昇給、昇格の仕組みがあり、新卒者のメンター制度や全社共通のeラーニング、集合研修など育成にも力を入れています。それらをうまく機能させ続けることができれば、賃上げはさらに進めることができると認識しています。