紙おむつには吸水性樹脂(SAP)が使われています。吸水性樹脂の国内メーカーには住友精化(4008)、日本触媒(4114)、三洋化成工業(4471)の3社があり、紙おむつの世界的企業であるP&G、ユニチャーム、花王、大王製紙、キンバリークラークなどに出荷しています。

この3社の業績格差が一段と鮮明となっているようです。その背景について見てみましょう。

ダントツの増益率を示した住友精化

5月中に発表された3社の2017年3月期決算によると、日本触媒の営業利益が対前期比▲32%減益、三洋化成工業が同+9%増益に留まったのに対して、住友精化の営業利益は同+42%増益と大幅な増益を達成しました。

日本触媒、三洋化成工業の吸水性樹脂の利益が製品価格の低迷で減益になったと推定される中、住友精化の吸水性樹脂は営業利益ベースで対前期比+88%増益という驚異的な実力を示しています。

その要因として挙げられるのは、同社の吸水性樹脂は懸濁重合法という高級グレードに強みを持つ製法に特徴があり、他社の粉砕法と比べて収益性が良いと見られる点です。

なお、住友精化の吸水性樹脂の生産能力は年間38.6万トンとグローバルで中堅規模ですが、2018年12月末に同44.5万トンまでの増設が決定しています。

海外市場での需要も追い風に

また、吸水性樹脂シート(SAPシート)の需要が強いことも追い風になっているようです。

特に中国、東南アジアなど海外市場での引き合いが強く、需要に対応するため2016年8月に韓国で立ち上げた年産5.9万トンの新規プラントは既に能力一杯の運転が続いています。

そのため、今年に入りさらに韓国での増設計画が発表され、2018年末完成で80億円の設備投資を行う予定です。これが完成するとグローバルでの年間生産能力は44.5万トンと、中堅トップ級のポジションを確保できる見通しです。

ちなみに、吸水性樹脂シートとは2枚の不織布で吸水性樹脂を挟み込んだシートのことで、従来製品のようにパルプの中に吸水性樹脂を入れた厚めのシートより格段に薄いシートの生産が可能となります。住友精化の細かな球状の吸水性樹脂が、このシートの製造に都合が良いことが注目されます。

2018年3月期業績の会社予想は、売上高が対前期比+2%増収の1,010億円、営業利益が同▲10%減益の95億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同+5%増益の60億円と公表されています。

ただ、原料コストが想定ほど上昇しないと考えられるため、今期の業績予想は控えめと思われます。需要好調で出荷が続く限り、期中での上方修正の可能性もありそうです。

リスク要因としては、原油の急激な高騰による原料市況の動向があります。吸水性樹脂の原料であるアクリル酸市況の動向次第で一時的な収益低迷に繋がる可能性があるため、この点は注意を要します。

本稿は「個人投資家のための金融経済メディアLongine(ロンジン)」の記事を再編集したものです。オリジナル記事の全文は以下からどうぞ(有料記事)。
>>住友精化(4008)は紙おむつ向け吸水性樹脂で独走。まだ買える株価水準か

 

LIMO編集部