投信1編集部によるこの記事の注目点
- マンションを購入するならやはり新築で、という方は多いのではないでしょうか。ただ、新築マンションの場合、実際の建物を見ず、図面やモデルルームのイメージだけで購入を決断しなければならないケースも多くあります。
- 新築マンション購入に際しては、分譲開始からどの程度経過しているのか、その時期によってそのメリットとなる点、デメリットとなる点がまったく異なってくることには注意が必要でしょう。
- 部屋の位置や間取り、内容のオプションなどにこだわるなら販売当初、実際の建物の様子や価格交渉などにこだわる場合は販売終盤のほうがメリットがあると言えそうです。いずれにしても大きな買い物ですから、優先順位をしっかり決めてマンション探しをしたほうがよいことは間違いありません。
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新築マンションを購入するときには、実は「時期」にも注目しなければいけません。
販売時期は、「販売当初」「販売中盤」「販売終盤」と3つのタームがあります。この3つのタームによってメリット・デメリットがあるので、それぞれ把握しなければいけません。
今回は、この3つのタームそれぞれで、マンション購入時のメリット・デメリットを解説します。
これらを理解しマンションを購入することで、良いマンションの購入に繋がってきます。
1. 販売当初の売り出し
「販売当初」とは、まさにそのマンションの販売がはじまったときです。販売当初は、多くの不動産会社、全体戸数の数割程度を売りに出します。物件検討者は、その中から自分の欲しい物件を選ぶという流れです。
販売当初に購入するメリット
販売当初に購入するマンションをメリットは以下の通りです。
- 選べる部屋が多い
- 選べる項目が多い
- 検討者の動向を探れる
物件にもよりますが、販売当初だと「選べる」という点がメリットになりやすいです。
選べる部屋が多い
まず、販売当初なので選べる部屋が多いです。販売当初は全体戸数の4~5割程度を出すマンションが多いですので、全ての部屋を売りに出しているワケではありません。
ただ、それでも「販売したばかり」なので、選べる部屋は多いということです。選べる部屋が多いということは、広さ・価格・仕様・設備などが、自分の希望通りの部屋を見つけやすいということです。
選べる項目が多い
つづいて、選べる「項目」が多いという点もメリットです。項目とは、具体的に以下のような点を指します。
- カラーバリエーション
- キッチンなどの高さ
- 設備、仕様
多くのマンションが「床色」を2~3色用意しています。しかし、マンションの施工が進むとカラーを変えることは出来ないので、最初の販売時しかカラーを選べない部屋もあります。
また、販売当初はキッチンや洗面の高さなどを選べる物件もあるので、家族の身長に応じて高さを変えることができます。また、たとえば「食洗器つける・つけない」などの、設備・仕様も変えることができます。
検討者の動向を探れる
また、販売当初は、売り出している部屋が全部屋「登録住戸」になることが多いです。登録住戸とは、希望者はその住戸に登録して、希望者が重なれば抽選になる部屋のことです。
不動産会社としては「なるべく抽選にならないようにしたい」と思います。そのため、検討者へ「この部屋は倍率が高くなりそうなので別の部屋はいかがですか?」と勧めてくることが多いです。
つまり、販売当初は「選べる部屋」が多いので、同じような部屋を低倍率で購入することができるということです。販売中盤以降も不動産会社は部屋の状況を教えてくれますが、販売中盤以降になると、そもそも「先着順住戸」という早い者勝ちの住戸が多くなっていきます。
販売当初に購入するデメリット
一方、販売当初にマンションを購入するデメリットは以下の通りです。
- 隠し部屋がある
- 混雑して話を良く聞けないことがある
- 間取りが多少変わることがある
- 抽選になる可能性がある
販売当初のデメリットは、「全部屋登録住戸」という、販売当初ならではの「売り方」が原因になることが多いです。
隠し部屋がある
先ほど、販売当初は「全戸数の4~5割」を売り出すといいましたが、逆にいうと半数以上は売りに出されていないということです。その、「売りに出されていない」住戸の中には、金額が安い住戸も含まれています。金額が安い住戸は「目玉住戸」として広告に載せないので、販売当初は売らずに隠しておくというワケです。
混雑して話を良く聞けないことがある
販売当初は、そのエリアでマンションが分譲されることを待っていた方がたくさん来訪します。不動産会社も、販売当初に来訪がないと売れ行きに大きなダメージがあることを分かっているので、広告も大量に投下します。
そのため、販売当初はモデルルームには検討者がたくさんいて、「2時間制」と時間を区切る不動産会社まであります。そうなると、マンションの細かい点を聞けないこともあるというデメリットが生まれます。
間取りが多少変わることがある
マンションは、売主・ゼネコン(施工会社)・設計事務所などでマンションを設計します。ただ、建築途中で、どうしても設計図通りにいかないことも出てきます。そのため、販売当初に配布していた図面集から変更点が出ることは良くあることです。
「広さが変わる」「居室の数が変わる」などの大きな変更は中々ありませんが、以下のような軽微な変更は良くあります。
- 下がり天井の範囲が変わる
- 下足入れのサイズが変わる
- 柱が居室内に出てくる
このような点は、販売当初からの方が変更点は多くなるので、その点は販売当初の購入者にはデメリットになるでしょう。
抽選になる可能性がある
また、登録住戸は検討者が被れば抽選になります。マンションによって「人気度」が異なるので、検討者が被らずにそのまま契約できることもあります。
ただ、先ほど言ったように販売当初は見学者が多く集まり、全ての売り出し住戸を登録住戸にすることが多いです。そのため、販売当初の売り出し部屋が、最も抽選になる可能性が高いです。
2.販売中盤の売り出し
「販売中盤」とは、そのマンションが半分ほど売れている状態のときです。前項でいった「登録住戸」は一旦販売済みであり、契約済み住戸が全体戸数の半分程度の状態を「販売中盤」といいます。
販売中盤に購入するメリット
販売中盤にマンションを購入するメリットは以下の通りです。
- 特典が付いてくることがある
- 先着順住戸が増えている
- 隠し部屋が出てくることがある
販売中盤には、色々な住戸が露出する点と、先着順住戸が増えてくる点がメリットにつながります。
特典が付いてくることがある
販売中盤には、そのマンションの「売れ行き」や、そのマンションで「売りにくい部屋」も分かってきます。そのため、売れ行きが悪いマンションはマンション全体でキャンペーンを行うことがあります。また、住戸限定で特典を付けることがあります。
例を挙げると、以下のようなキャンペーン・特典です。
- 早割キャンペーン(来訪から○週間以内の契約で▲▲万円割引)
- 1階住戸特典(1階住戸の契約者には■■をプレゼント)
上記は、来訪者が多い販売当初にはあまり行いません。苦戦するかどうかが分かってくる中盤以降に行う場合が多いです。
先着順住戸が増えている
また、販売中盤になると、先着順住戸が増えています。先着順住戸は、先ほどいったように「早いもの勝ち」の住戸なので、資金計画が整えば(住宅ローン承認など)申込ができます。
申込した時点で部屋を抑えることができるので、ほかの検討者はその部屋を選べなくなります。つまり、登録住戸のように「期間を待って抽選になる」ということがないです。
隠し部屋が出てくることがある
販売も中盤になってくると、先ほどいった価格の安い「隠し部屋」が徐々に出てきます。販売当初も目玉住戸として価格が安い物件もありますが、検討者が多いため抽選になりやすいです。
隠し部屋も先着ではなく「登録住戸」なので抽選になる可能性はありますが、販売当初よりも検討者は減ります。つまり、販売中盤の方が、価格の安い隠し部屋を購入できる確率が上がるというワケです。
販売中盤に購入するデメリット
一方、販売中盤にマンションを購入するデメリットは以下の通りです。
- 選べる項目が減っている
- 自分の目当ての部屋がないことがある
まず、先ほど言った「カラーバリエーション」や「キッチン・洗面の高さ」など選べる項目が減っています。特に、マンションは下層階から出来上がっていくので、下層階を選べる期限は早いです。
また、販売当初で売られてしまった部屋があるので、自分の目当ての部屋が販売当初に売られている可能性があります。
この2点は販売中盤でマンションを購入するデメリットと言えるでしょう。
3.販売終盤の売り出し
「販売終盤」とは、そのマンションが8~9割ほど売れている状態のときです。マンションによっては建物が完成しているため、モデルルームからマンション内の販売になっているケースもあります。
販売終盤に購入するメリット
販売終盤にマンションを購入するメリットは以下の通りです。
- 値引きしやすい状態である
- 建物のイメージがわきやすい
- マンションの情報が集めやすい
このように、販売終盤ならではの「不動産会社の事情」と「建物が完成している」という点とつながっている要素が多いです。
値引きしやすい状態である
販売終盤は不動産会社も「早めに完売させたい」と思います。やはり、検討者が徐々に減っているので、広告料は同じでも集客数は減ります。
また、残り数戸の物件で営業マンを滞在させておくのも、人件費から考える費用対効果は悪いです。つまり、販売終盤は不動産会社としては「値引きしてでも早く売りたい」と思うということです。
また、不動産会社の立場からすると、以下の理由で意外と値引き交渉するのは難しいです。
- 足元を見られ値引き交渉をズルズルされてしまう
- 「売れていない物件」と思われてしまう
- 社内の承認が下りにくい
販売終盤だと検討者の方から値引き交渉を持ちかけてくることも多いので、不動産会社側から持ち掛けるよりも足元を見られにくいです。また、「広告費をかけるよりは値引きしたい」という理由を言えるので、検討者側も値引き理由を納得しやすいです。
建物のイメージが沸きやすい
販売終盤に差し掛かると、建物がどんどん出来上がっています。そのため、外観やバルコニーのつくり、エントランスの様子などを見られます。「マンションの完成イメージが沸かない」という点は、マンション購入者のリスクになるので、そのリスクが軽減されやすいです。
また、マンションによっては「棟内販売」に移行しますので、実際の部屋を見て購入を決めることができます。そのため、図面集を見ただけで購入するときに発生する以下のリスクを軽減できます。
- 下がり天井や梁の大きさ
- 窓の種類や窓の大きさ
- 部屋の広さや家具配置
上記を確かめてから購入できるのは、販売終盤での大きなメリットになります。
マンションの情報が集めやすい
また、マンション終盤になると、マンション情報もたくさんあります。単純に物件のホームページ情報が増えたり、営業マンの知識が増えたりという要素もありますが、口コミが増えてくるという点も大きいです。
今では、マンションが分譲されれば、そのマンションの口コミ掲示板ができます。匿名の口コミなので全てを信じるのは危険ですが、「検討者」や「契約者」の声などでは参考になる意見があるのも事実です。このような情報は、マンション購入時の判断材料になるので、知っておいて損はありません。
販売終盤に購入するデメリット
一方、販売終盤にマンションを購入するデメリットは以下の通りです。
- 現況有姿の場合もある
- ほぼ全て先着順である
- 選べる部屋が少ない
なお、販売終盤のデメリットは、前項の販売中盤のデメリットのときにいった、「選べる項目が減っている」「自分の目当ての部屋がないことがある」というデメリットも含まれています。また、先ほどメリットに挙げた「建物が完成している」という点は、反面デメリットにもなり得ます。また、住戸がどんどん少なくなっているのは販売終盤のデメリットです。
現況有姿の場合もある
「現況有姿」というのは、このままの状態で部屋を引き渡すという意味です。販売当初や販売中盤であれば、「内覧会」を実施します。内覧会で購入者が室内をチェックし、傷や汚れがあれば補修してから引き渡すという流れです。
ただ、既に建物が完成している物件は、内覧会を行わない「現況有姿」であることが多くなります。そのため、多少の傷や汚れは、購入者は許容してから購入するということになります。そのため、現況有姿の場合は、室内状況を良くチェックしておくことが重要です。
先着順が多い&選べる部屋が少ない
先着順が多いということはメリットでもありますが、販売終盤は部屋自体が少ないのでデメリットにもなり得ます。そのため、「資金確定(住宅ローン承認)」を急ぐ必要があったり、購入するかのどうかの決断まで時間がなかったりすることがあります。
そのため、販売終盤はスピーディな手続きや、素早い決断を迫られることがあり、この点はデメリットと言えるでしょう。
4.まとめ
このように、購入時期によってメリット・デメリットは分かれます。どの時期が最も良いかは人によるので、大事なのはそれぞれのタームでどの点がメリット・デメリットなのかを把握することです。その点を理解すれば、上手なマンション購入に繋がります。
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