2023年1月25日に発表された、SBテクノロジー株式会社2023年3月期第3四半期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:SBテクノロジー株式会社 代表取締役社長 CEO 阿多親市 氏
決算サマリ
阿多親市氏:みなさま、こんにちは。SBテクノロジーの阿多です。本日は大変お忙しい中、当社の決算説明会にご参加いただき誠にありがとうございます。
業績のサマリです。公共・エンタープライズが増収をけん引していますが、人員強化等の固定費増を賄いきれず減益となりました。受注高はエンタープライズ・公共で増加しており、第3四半期としては過去最高です。12月末の受注残高も過去最高を更新しています。
通期の見通しとしては、現在、低採算案件から高付加価値な領域へのシフトを推進しています。売上高は下がりますが、営業利益以下は据え置きです。売上高の通期業績予想は当初の700億円から670億円に修正、営業利益は54億円で据え置きとし、第4四半期をがんばっていきたいと思っています。
連結PL(4-12月)
売上高は前年同期比1.3パーセントの増の482億3,100万円、営業利益は前年同期比約1億1,800万円減、3.2パーセント減の35億4,100万円です。
マーケット別売上・売上総利益
各マーケット別の売上高・売上総利益です。通信エリアは減収増益です。この3年間売上高を引っ張ってくれたベンダーマネジメント案件の中から、4月、7月、10月のタイミングでやめるものを選別し、高付加価値な領域にシフトしています。そのため、売上高は2021年度の168億円から2022年度は145億円となり、23億円の減収ですが、売上総利益は23億1,000万円から24億円に伸びています。
続いてエンタープライズエリアです。長く続いたマイクロソフトのソリューションの部分でライセンスの販売取引は残っているものの、次のステージになかなか進まないものについては、第1四半期から第3四半期にかけてライセンス取引を終了しています。売上高はその減収分をはねのけて2021年度の210億円から2022年度は220億円に増加し、売上総利益も51億円から56億2,000万円に増加しています。
公共エリアの売上高は、2021年度の66億円から2022年度は87億円となり、21億円の増収です。売上総利益は6億2,000万円から7億2,000万円に増加していますが、8月に発生した「自治体情報セキュリティクラウド障害対応コスト」や中央省庁の横展開に向けた活動費が発生し、増益額を小さくしています。
個人エリアはノートンライフロック社とのビジネス、ならびに子会社のフォントワークス社で、売上高は2021年度の30億円から2022年度は29億円で減収、売上総利益も1億円の減益です。
営業利益の増減要因
営業利益の増減については、増収効果により1億3,000万円増、収益性の改善により売上総利益率が1ポイント改善し5億円増、販管費の増加により7億5,000万円減、結果として営業利益は前年同期比1億2,000万円減の35億4,000万円です。
【単体】受注高 / 受注残高(個人向け除く)
第3四半期における受注高は116億円で、第3四半期末の受注残高は256億円となりました。通信エリアの受注残高は45億円で、ここ3年間で最も下がりました。エンタープライズエリアの受注残高は前年同期比20億円増の89億円です。
公共エリアの受注残高は前年同期の113億円から8億円伸びて121億円です。5年契約のもののうち、第3四半期までの分はすでに売上を上げていますので、そのほかの受注分8億円を加算して2023年3月期第3四半期の受注残高は256億円になりました。このうち54パーセント程度を第4四半期に売上予定です。
通期業績見通し
通期業績見通しです。売上高は2021年度の661億円から2022年度は700億円と予想していましたが、今回670億円に下方修正しています。営業利益は収益性の改善やEC領域での契約変更影響が低減されていることから期初計画どおりの54億円を据え置いています。
第4次中期経営計画
第4次中期経営計画の最終年度となる2024年度での経営指標は営業利益80億円、営業利益率を9パーセント台に改善させていくことです。また、クラウド・セキュリティサービスという、キードライバーになるプロダクツおよびソリューションの売上高を、500億円超に持ち上げていきたいと考えています。
通信向けビジネス
通信向けビジネスについてご説明します。売上自体は少し下がってきていますが、売上総利益率は改善傾向にあります。2021年度の第4四半期は14.8パーセントでしたが、2022年度第1四半期は15.7パーセント、第2四半期は16.8パーセント、第3四半期は17.5パーセントと約3ポイント改善できています。
ベンダーマネジメント案件が当社の売上を大きく引き上げていたことは事実です。その役割は標準化を行うことで、ひと通りの案件・プロジェクトについて標準化を試みていました。コストや特定ベンダーに対する依存度を下げていくための標準化でしたが、なかなか特定ベンダーとの切り分けができずコストダウンできなかったため、3年間取り組んで成果が出なかったものについてはお返ししました。
新しい案件やベンダーの再配置等を含めて今後高付加価値になってくる案件を継続し、クライアントにとってはコストが下がり、当社は利益率が上がるようなかたちで変更を行っています。
春には新型コロナウイルス感染症の2類指定が5類指定になる見込みのため、売上総利益率がより上がっていくように、2019年より取り組んでいたオフショア開発の推進、人材採用や教育の新しい手法、一番手間がかかるテスト工程の体制の強化等に継続的に取り組んでいきます。
エンタープライズ向けビジネス
エンタープライズ向けビジネスについてご説明します。当社のエンタープライズビジネスは、10年前よりマイクロソフトソリューションの国内導入をいち早く手がけ、進めてきたというアドバンテージがあります。
2022年度および2023年度にマイクロソフト「Microsoft 365」が新しいシーンに入ります。「Microsoft 365 E5」というコミュニケーションシステムに、いわゆるエンドポイントセキュリティのクライアントバージョンが入っているため、こちらの導入が2023年・2024年の大きな動きになると予測しています。
ただし、それは単なる設定だけで導入できるものではなく、10年前から行ってきたように手間と人手を割く必要があります。そして、先ほどライセンスの販売を断ったとお話ししましたが、終わったあとなかなか次のステージに進めない、忙しさのピークのあとなかなか利活用が進まないなどの問題が起きる可能性もあります。
この3年間、第3次中期経営計画として新たなバージョンへ移行したあとのセキュリティを意識した監視サービスを進めてきました。スライド中央にトロフィーが立っていますが、2023年1月にIT市場のリサーチャーである株式会社アイ・ティ・アールによる統計で、M365運用監視サービスの国内マーケットシェア40パーセントの当社は2021年度市場No.1と認定されました。
M365運用監視サービス、ならびに新しいマイクロソフト「M365」に含まれているセキュリティのビヘイビアを確認する「Microsoft Sentinel」を、当社のマネージドセキュリティサービスの1つの柱として2年前より扱っています。こちらは移行作業を他の人数の多い会社にお任せしたとしても、そのあとの運用監視は当社が確実に行うとしており、大変評判です。
また、「ID管理」も大変重要です。これはゼロトラストセキュリティを考えるときにも必ず行う作業で、IDの確認もしくは本人確認を行うことで次のプロセスに進めるというものです。このID管理セキュリティの市場において、我々のシェアは3位となっています。
「SIEM運用分析」のSIEMは「セキュリティインシデント&イベントマネージメント」を指します。こちらはSOCにおいていろいろな通信機器やエージェントアプリケーションにSIEMを入れて、不穏な動きや異常な時間の動きを複合的に分析していくものです。SIEM運用分析サービスの市場にもセキュリティのベンダーが数多くいますが、今回の統計では我々がNo.1でした。
これは、スライドのグレーの部分が減っていることにも関連しています。たいていの場合は、サービスを導入する際にライセンスのビジネスが一緒についてくるものです。しかし、我々とお付き合いの長いお客さまにおいて、利益の非常に薄いライセンスビジネスが残っているケースがありました。したがって、クラウドやセキュリティのサービスに手をつけなければ、利益率を高めることは難しい状況でした。
そこで、2022年4月からライセンス取引での売上が70パーセントや80パーセントに及ぶお客さまに対し「取引の仕方を少し考えさせてください」というお話を進めてきました。そのようにセキュリティにフォーカスすることで、ビジネスの方向性を整えることができました。
今後は、サプライチェーンを持つ製造業大手の会社に当社のクラウドやセキュリティのサービスを訴求し、その会社のパートナー会社に販売していただくことや、メニューの中に入れていただくことなどを考え、着実に進めていきます。
エンタープライズ向けビジネス
我々は、マイクロソフトソリューションの導入実績が国内トップクラスであることなどから注目していただいていると思います。M365運用監視サービスについても、現在市場でNo.1であり、今後はこの分野のサービス化を着実に進めていくことを考えています。
セキュリティに関しては、ゼロトラストセキュリティをコンサルティングから実装、MSSというSOC内でのサービスにつなげていきます。この分野は運用監視サービスやセキュリティをより進化させるもので、パートナーと一緒に協議する部分もありつつ、我々の監視センターにまとめて任せていただくかたちで進めていきます。
DXを進めるときに、セキュリティを強くするだけがゴールではありません。ただし、セキュリティを強化しない限り、クラウド上に大切なデータを展開していくことや、暗号化されたデータを活用していくことは実現しません。
そのような考えに基づき、我々は2022年度にセキュリティに関する独立した組織を作りました。現在はその組織の人材採用や人材育成に大きく投資しています。2021年度はM365運用監視サービスおよびSIEM運用分析サービスで市場1位でしたが、2022年度も1位あるいは高いシェアを確実に保ちながら進化させていきたいと考えています。
SBグループ企業向けセキュリティビジネス
我々はソフトバンクグループ企業向けのセキュリティビジネスも行っています。例えば、ソフトバンク株式会社に3種類あるセキュリティ監視業務のうち、すべてのSOCを我々が支援しています。また、ソフトバンクグループ株式会社は世界でも有数の投資会社で、いろいろな情報が入ってきます。そこで、我々はゼロトラストセキュリティの考え方によりネットワークやOA環境等のすべてをコンサルテーションから進め、現在は運用のMSSも行っています。ヤフー株式会社においても、社内ネットワークの監視業務を支援しています。それが今、Zホールディングス株式会社のグループ企業にも広がりつつあります。
SBグループとしては、他のグループ企業へもどんどんサービス化し展開してほしいと考えていますが、それはお付き合いさせていただいている製造業の会社についても同様です。小さな子会社も含めて、グループの中までカバーできるような品揃えとサービス提供がどんどん増えていくのではないかと思います。
公共向けビジネス(農林水産省関連)
公共向けビジネスのうち農林水産省関連についてご説明します。2015年より農地のプロジェクトとして農林水産省とお仕事をさせていただいており、今年で9年目になります。このプロジェクトでは、農業者が農業委員会や県、あるいは本省に対しいろいろと申請を行いますが、それらを電子申請に変えていっています。
次のプロセスとしては、当然土地があって農業があるため、地図のデータが大変重要になります。例えば、昨今、休耕地と呼ばれる農業を行っていない土地の割合が非常に大きくなっていますが、休耕地の一つひとつを現地調査するというプロセスがあります。
こちらに関して、衛星画像やAIなどによるデータ更新が行えるように、2022年に続き2023年もデジタル地図のシステム構築やアップデート、運用などに注力して進めているところです。
システムが一元化できれば、通常の農地情報の集約のみならず、災害によって農作物が出荷前に傷ついて出荷できなくなった場合の保険において農作物状況の確認作業に、最終的には人が向かう必要があるかもしれませんが、システムを通じて概算や認定が行えるため、役に立てるのではないかと思っています。
また、デジタル地図については横展開も望めると考えています。
公共向けビジネス(自治体関連)
もう1つの公共向けビジネスは「自治体情報セキュリティクラウド」です。2021年度に10県を受注し、そのうち9県のシステムを2022年3月末までに構築する予定でした。しかし、その最中に大きな設定ミスを起こしてしまい、その改修を行いました。2022年8月に最終報告を行い方向性は決めたものの、同じく8月に今度は機器の故障が起きてしまったため、その改修も行っています。
山形県については、2022年12月までに構築が無事終わり、2023年1月から順調にサービスを提供できています。そのほか2022年度に受注した山口県と埼玉県については、2023年2月、3月に移行テストを行い、4月からサービス提供を開始する予定です。
ご説明したインシデントの影響は大きく、ビジネスでの信頼を大きく損なうことになりました。大変なご迷惑をかけたものの、以前4県121市町と取り組んでいたときと比べると、リモートによるコミュニケーションが可能で適時お話しすることができました。
また、スライドに記載の内容がすべて実現すれば、あわせて405の自治体で意見や情報の格差がなくなります。現在は300強の自治体にサービスを提供していますが、4月には12県の405市町村、計417のクライアントに対して安全なサービスをお届けしたいと考えています。
ただし、自治体情報セキュリティクラウドは1つのステージに過ぎません。まずはセキュリティに取り組まなければ、次にくるアプリやサービスが乗りません。今週から2月頃にかけて各自治体で議会が開かれ、2023年度の予算について議論される見込みです。そこで承認が得られれば、2023年4月からその予算が執行されることになります。
我々が用意したオプションサービスには、EDR監視・運用やリモートデスクトップなど数々のものがあり、当然それらについてご提案しています。2023年3月あるいは4月以降に、ある程度の受注ができると思っています。
つまり、今まで専用線でつながれていたようなサービスも、安心してインターネット上に出していくことができ、インターネット上のいろいろなアプリケーションを活用できます。あるいは、非常に簡単なSMSのようなものでも申請できるようになるかもしれません。そのような世界が開けていきます。
また、405市町へ均等にサービスを届けられるようになることが、我々のビジネスの大きなポイントです。まずは信頼を回復し、その上でご提案し、来年につなげていきたいと思っています。
第4次中期経営計画 / FY24 経営指標
第4次中期経営計画の最終年度となる2024年度において、営業利益は80億円、営業利益率は9パーセント台、クラウド・セキュリティ&サービスの売上高は500億円超という指標を掲げ、今後も進んでいきたいと思っています。
ご清聴ありがとうございました。