今やビジネスマンで知らぬ人はいないであろうフェイスブック(facebook、FB)。同社の2017年第1四半期の決算資料によれば、フェイスブックのデイリー・アクティブ・ユーザー(DAU)は全世界でなんと12億8,400万人。そのうち日本を含むアジア・パシフィックでは4億2,700万人が利用しています。

これまで日本では日記やブログ的にフェイスブックを使うイメージが多かったと思いますが、最近では様々な用途でFBが利用されているようです。今回は世界的に普及したフェイスブックの使われ方に関して、投稿だけではない事例について見ていきましょう。

フェイスブック、インスタグラム、LINEの使い分け

フェイスブックは、「友達」としてつながっている友人・知人に対して個人的な出来事やイベントを紹介したり、写真を共有したり、読んで面白かったネット記事のリンクをシェアしたりして使われることが多いのではないでしょうか。

ただ、最近は、特に若い人の間でインスタグラム(Instagram)を使った画像の投稿が増えているように感じます。テキストを使って書き込むコンテンツはフェイスブック、写真の美しさをアピールするのはインスタグラム、といった使い分けがされているようにも見えます。ちなみに、インスタグラムもフェイスブックが提供しているサービスのうちの一つです。

また、日本でよく使われるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)にはLINEがあります。LINEは、1対1、またグループ間でのコミュニケーションの用途が主で、フェイスブックやインスタグラムとは少々使い方が異なるようです。

フェイスブックは仕事用と割り切る派も

元々は米国の大学生の間で広がってきたフェイスブックですが、先に述べたように現在では全世界にユーザーが広がり、DAUは12億8,400万人、マンスリー・アクティブ・ユーザー(MAU)では19億3,600万人にまで成長してきています。

世界の人口が約73億人といわれる中で、約4分の1が月に1回はフェイスブックに触れている状況です。先進国だけではなく、新興国も、また若者だけではなく、年齢の高い層も利用している状況が見えてきます。

ところが、フェイスブックの利用者数が増え、幅広い層に認知されてきたことは、いわゆる「SNS疲れ」の一因になったとも考えられます。

たとえば一度しか会ったことがないような「友達」の存在に困っている、上司を「友達」に加えざるを得なくなったことでプライベートの投稿がしづらくなった、誕生日のコメントのやり取りが面倒などといった声は日に日に増えているように感じます。こうした状況下にあって、フェイスブックに個人的なイベントを投稿するのはもはや恥ずかしいことして、インスタグラムにその場を移してしまった人、フェイスブックは友達の近況を知るためのツールだと割り切った人も出てきています。

一方、今や世界中の人が使うツールであるフェイスブックは、従来のように「友達」との間で楽しむツールから「より開かれたコミュニケーションツール」として進化したというようにプラスに見る人もいます。

ビジネスパーソンがフェイスブックのチェックを怠らない理由とは

毎日フェイスブックのチェックを欠かさない、とある中小企業経営者のA氏は言います。

「もともとは友人だけだったつながりが、時間とともに仕事関係のつながりも増えてきました。その結果、確かに今ではプライベートな内容を投稿するのは気が引けますね。直接(フェイスブックで)つながっている人以外は私の投稿を読めない設定にしているのですが、それでも投稿する場合には誰が読んでも違和感を持たれないような内容になっているかどうか意識しています。でも、そこまでしなければならないなら投稿するのはやめようかと思ってしまいますね」

ただ、自ら投稿しないからといってフェイスブックを使わなくなるのかといえば決してそうではないとA氏は続けます。

「使わなくなることは当分考えにくいですね。実は当社の場合、仕事の最初の相談がメッセンジャー(Messenger)で来るケースが多いのです。実際にそこから正式な仕事につながることも結構あります」

A氏はフェイスブックのコミュニケーションツールであるメッセンジャーが受注拡大のきっかけになっているというのです。

「お互い相手の(仕事用の)メールアドレスを知らない時もありますし、そもそもメールだと堅苦しいですよね。メッセンジャーだと時候の挨拶も省けますし、もし、正式に仕事の発注へと発展しない場合でも個人的なやりとりだとして流せますし。相手方も気楽なんだと思います」

メッセンジャーでのやり取りはフェイスブックで自分とつながっている人たち全員に見えるわけではありませんし、個人と個人のやり取りだけでなく、複数のメンバーでグループを構成することもできます。LINEの使い勝手に近いかもしれませんが、PCやスマホなど複数のデバイスを並行して使いながらコミュニケーションが取れる点はメッセンジャーの利点でしょう。メッセンジャーはインターネット上にコミュニティを形成できるツールだともいえます。

フェイスブックの次なる狙いはコミュニティづくり

フェイスブックのCEOであるマーク・ザッカーバーグは、直近の決算発表時にメッセンジャーの毎月の利用者数が12億人だとコメントしています。そのうえで、同氏は投資家向けに次のように言います。

「フェイスブックはこれまで友達と家族をつなげることに注力してきました。今後は、そうした基盤とともに、コミュニティを作る。それが私たちの次なる狙いです」

フェイスブックのユーザーは世界中に広がりましたが、今後はコミュニティを形成するためのプラットフォームであろうとしているのです。もしこれが成功すれば、ユーザーとの接点がより深くなると見ているのではないでしょうか。

2017年第1四半期のフェイスブックの売上高は約80億ドル(1ドル114円換算で9,120億円)となり、対前年同期比で+49%増と好調です。同社の場合、売上高全体の98%は広告収入なので、まずは広告がより多くの人の目に触れることが重要でしょう。

また、米国とカナダのユーザー当たり平均売上高(ARPU)は2017年第1四半期では17ドルと、欧州の5.4ドル、アジア・パシフィックの2.0ドルと比べると既にはるかに高い水準です。今後は広告にどれだけ価値を持たせることができるのかも課題だといえます。

最後に

いかがでしたでしょうか。大手企業などでは、会社のパソコンからフェイスブックにアクセスすることや、フェイスブックを介した業務のやり取りを禁じている会社もあります。一方、フェイスブックが仕事上の連絡ツールとなってしまったり、コミュニティのアップデートを知る手段となってしまうと、なかなか離脱することは難しそうです。

SNS疲れから最近投稿することが少なくなったという人でも、仕事では頻繁に利用しているという人がいるかもしれません。もしかするとプライベート利用から仕事中心へとかわったプラットフォームは意外にユーザーを引き留める力が強いかもしれませんね。

青山 諭志