欧米金利が続騰するなか、先進国株は堅調で終わった1週間

先週(2017年7月3日-7日)の世界の株式市場は、先進国株を中心に堅調に推移しました。主要市場の週間騰落率は、現地通貨ベースで上海総合が+0.8%、独DAXが+0.5%、米S&P500が+0.1%、TOPIXが▲0.3%でした。

先々週に欧州中央銀行発で始まった世界的な金利上昇は先週も続きましたが、先々週下げた欧州株と米株はひとまず反発しました。

週初は極東の地政学リスクが高まりました。しかし、週を通して見ると、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録や欧州中央銀行理事会の議事録で脱金融緩和の姿勢が確認されたことが最大のファクターでした。

さらに、米国の製造業の景況感や雇用統計、中国の購買担当者景気指数が好況を示す水準を維持していること、ドイツの鉱工業生産指数、日銀短観などで明るい数値が並びました。

この結果、欧米の長期金利が上昇を続け、日本の長期金利も上昇圧力を受けました。その沈静化のため日銀の買いオペを誘う展開になり、日本と欧米との金利差が拡大し、円は対ドル、対ユーロで下落しています(ドル円相場は113円台後半で週を終えています)。さらに金や原油など商品市況が下落しました。

一方、世界の株式市場では欧米株が堅調だったことは既に触れたとおりです。新興国では上海株、インド株が上昇しています。一方、その他の新興国市場はやや軟調になりました。

物色の流れを見ると、金利上昇の恩恵を期待される欧米の金融株が高く、テクノロジー株もしっかりでした。日本では円安を好感した自動車株、機械株、商社株が堅調でした。一方、金利上昇がデメリットになる不動産、公益、通信株が世界的に軟調でした。

個別では、年初来約+69%上昇したテスラが▲13%の急落を見せました。しかし、これが他のテクノロジー株に波及しなかったことも注目すべきでしょう。ナスダック指数は+0.2%上昇しています。

アウトルック:金利見通しの不確実性を払拭して決算期を迎えられるか試される1週間に

今週(2017年7月10日-14日)は、米銀(J P モルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ)から決算シーズンが始まりますが、まずはイエレンFRB議長の議会証言で金融政策の道筋がどう示されるのかが注目されそうです。

米国では12日に米地区連銀経済報告の発表、さらにイエレン氏の議会証言が12日、13日の両日予定されています。

最近の長期金利の上昇は、欧米中央銀行の脱金融緩和への動きの露払いとなりましたが、イエレン氏が現在の長期金利水準を適正と見ているのかが問われそうです。また、バランスシートの正常化と利上げをどのようにミックスするつもりなのかも注目点です。

米国では雇用の改善が進むものの賃金上昇圧力は低く、物価も携帯料金や医療用医薬品の価格下落が大きいとはいえ一時に比べて上昇力が鈍っています。この環境を前提としてあくまで漸進的に進むのであれば、欧米の株式市場はポジティブな展開になると考えられます。

ただし、いつまでもテクノロジーと金融だけでは寂しいので、新しい物色の柱がもう少しはっきり見えてほしいと思います。この点は決算発表を待つことになるでしょう。

椎名 則夫