今や銀行預金の利息ではお金が増えない時代。こんな時だからこそ株式投資を始めてみたいけれど、損をしたらどうしようとなかなか第一歩を踏み出せない方も多いと思います。
株式投資では株価の細かい上げ下げが気になるという人もいますが、専業のトレーダーでもない限り、一日中パソコンの前でトレードするわけにもいきません。一方で、株主優待銘柄への投資を続け、日頃はほとんどほったらかしで大儲けを実現した、いわば「優待長者」が存在します。
今回は北関東で自営業を営むかたわら、株主優待銘柄への投資を続け、優待品をゲットするだけでなく約10年間で含み益1,000万円以上を達成したという野田さん(仮名・30代男性)にお話を伺うことができました。「成功せずとも失敗もしない投資」を目指した先に行きついた投資術とは?
――まず野田さんの投資歴、株式投資を始めたきっかけを教えてください。
野田さん(以下、野田):始めたのは高校3年生の頃ですね。通っていた高校に株の好きな先生がいて、興味を持ちました。それで、祖父が「大学で使いなさい」とくれたお金を元手に(笑)、株式投資を始めました。
そのとき買った銘柄はピジョン(7956)です。なんで買ったんだろう?(笑)。ちなみにピジョンの当時の株価は安くてしばらくして売っちゃったんですが、今はすごく上がっているんですよね…。その後は学生なのでまとまったお金もなくて、ミニ株(単元未満株)をちょこちょこと買っていました。
私が株式投資を始めたのは90年代後半の景気がパッとしない頃で、その後、2000年のITバブルに向けて株価は上がっていくんですが、あの頃は社会勉強のような感じでしたね。
――投資歴は30代にしてもう20年近いのですね。そんな野田さんが、優待投資に行きついたきっかけは?
野田:大学時代にはデイトレードもやってみましたが、授業中にはできないですし、授業が終わったあと見るととんでもなく動いていたりもしたんですね。楽しいのですが、時間も使ってしまうし(ドキドキしすぎて)寿命も長くなさそうだなと(笑)。
何より、みんな儲けようと思って株式投資をするわけですけれど、儲けるのって難しいですよね。買いたいときは誰かが売りたいときでもあるし、誰かが買ってくれなければ売れないし。
そこで、株主優待投資を思いつきました。株主優待なら会社からもらえるものなので誰も損はしないなと。会社も個人投資家を増やしたくて実施しているわけですし。まずは地元のスーパーの割引券がもらえる優待銘柄などから購入し始めました。もう10年くらいにはなるでしょうか。
――では、野田さんが考える優待投資の醍醐味とは?
野田:必ず儲けようと思わなくていいことですね。「儲けなくてはいけない」という考えから解放される、とも言えます。私は自営業で、普段は本業があるので毎日株価を細かくは見ていられません。「見ないで済む」という点が優待投資のいいところかなと思います。
――なるほど、日ごろ仕事や家事などをしていてもできそうですね。ちなみに野田さん流の「優待銘柄を選ぶポイント」というのはありますか?
野田:私はクオカードなどの金券系よりも自社商品や自社店舗の割引券などを提供している銘柄を選ぶようにしています。金券だと会社の持ち出しになってしまいますが、自社商品であれば原価。また、自社商品ならPRにもなりますし、割引券なら結局お店に買いに行きますから、会社が儲かりますよね。会社の応援にもつながります。
――これまでに一番成功したと思う銘柄はどれでしょうか? その勝因は?
野田:私の場合はコロワイド(7616)ですね。同社の株を500株保有すると、自社店舗で使えるポイントが年間4万円分もらえます。今だと500株買おうと思うと100万円近くしますが、私が買った当時は1株500円を切っていて、500株でも25万円ほどで買えたんです。「毎年4万円分の優待=6年間この会社がつぶれなければ元がとれる」と思って買いました。
それから10年以上経って元は取れたかなと。配当は正直少ないですが、もう株価がいくらになってもいいという気持ちでいますし、売ると税金を取られますから売る気は全くないんです。安定株主になっているという意味では会社にとっても幸せなのかなと。
あとは清掃用品のレック(7874)です。一時期株価が大きく下げて、購入時の半分ほどになったこともありましたが、自社製品詰め合わせ(2,000円相当)がもらえるので塩漬けにしておきました。そうしたら最近急に株価が回復してきました。
――逆に、これまでで一番失敗したと思う銘柄は? その敗因は?
野田:ある製造業の銘柄で、優待は実施していないのですが、某ファンドが推していたので買ったんです。でも、どういう会社かよくわかってないものですから、株価が下がっていくとこらえられなくて。結局売ったのですが、その次の日が決算発表の日で。これが大変な好決算で株価がどんどん上がっていったけど後の祭り、という悔しい失敗をしました。わからないものには手を出さないことにしたきっかけになりました。
――現在保有している銘柄数は?
野田:130~140銘柄ほどです。優待投資を始めてからの10年でこの数になりました。逆に今は管理が大変になってきたので、少し絞ったほうがいいのかなあと思っています。
――含み益が1,000万円くらいあると伺いましたが。
野田:そうですね。儲かった銘柄は基本売りませんし、損したら売りますので、含み益としてはそのくらいになりますね。
――タイミングや金額など「株の買い方」に秘訣はありますか?
野田:私の場合、株は定期預金の代わりともいえるものです。今、銀行預金は金利も低いし全然増えないので、より利回りのよい商品というイメージなんですね。毎月いくら、とかではなくて、50万円などのまとまったお金ができたときに買っています。売却してお金に換えるのは、使う予定ができたときです(笑)。
――逆に「株の売り方」にマイルールはありますか?
野田:うーん、実は特に厳密に決めてはいないんです。今は、下がったら売るのがいいのかなと思っています。10%とか、そのくらいでしょうか。いくら株主優待があるからといっても損をしようと思って買う人はいないでしょうし、そういうときは自分が間違っていたということなので。
――ちなみに証券会社の選び方などで気を付けることなどはありますか?
野田: 手数料は昔よりずいぶん安くなって、ネット証券であれば、それほど変わらないと思います。とはいえ、最初からすべてネットは怖いという方や、どの銘柄を買おうか迷うという方は、対面の証券会社もいいと思います。地方の支店などでは近隣で使える優待銘柄を集めた冊子を店頭でもらえるところもありますし。
私は、使い勝手を重要視しています。今、メインで使っているのは楽天証券。アプリで四季報の優待情報も見られたりするので使いやすいです。
それから、「貸株(株を証券会社に貸して利息をもらえる)」というサービスもある会社だと、優待とは別におこづかいをもらえるのでありがたいです。ただ、権利落ち日に優待のある会社を自動返却をしてくれるかは注意したほうがいいですね。私の場合、伊藤園第1種優先株式(25935)を貸株に出していたのですが、これが優待株と認識されずに自動返却されなかったことがありました。
――では最後の質問です。たとえば投資可能な資金が50万円ある株式投資初心者は、まず何から始めるべきでしょうか? 野田さんからのアドバイスがあればお願いします。
野田:優待投資を始められるのであれば、ご自身の環境によってもかなり変わるのですが、たとえば住んでいる場所にゆかりがあるものにするというのはどうでしょう。たとえば地元の鉄道系やスーパーなどです。10%引きの割引券などは使い勝手がいいですし、地元であれば行くじゃないですか。最近調子がよくないとか、鮮度が落ちてるとか、ネガティブな情報も入ってきやすいでしょうし。
――割引を狙うならポイントカードや友の会などもありますよね。
野田:そうですね。でも株式投資のいいところは、単に割引になるだけではなくて配当金などのインカムゲイン、株価上昇によるキャピタルゲインも狙えることだと思います。
値下がりリスクもありますが、そもそもリスクとは振れ幅です。上がりもするし下がりもする。気が付いたら値上がりしていたということもあります。基本的に日常生活ではほったらかしにできるのが優待投資、長期投資のいいところですよ。
――参考になるお話をありがとうございました!
LIMO編集部