1. 厚生年金・国民年金が増える「繰下げ受給」とは
国民年金と厚生年金では、加入対象となる条件は異なりますが、いずれも受給開始年齢は原則65歳です。
なかには、「65歳時点での年金額では心もとない」「まだ就業しているから年金を受け取らなくても暮らしていける」という人もいるでしょう。
そこで、66歳~75歳までの間で受給を「後ろ倒しで」開始することで、繰下げた月数に応じた増額率が適用されるようになりました。
厚生年金の対象者については老齢基礎年金(国民年金部分)・老齢厚生年金のどちらが一方だけを繰下げることも可能です。増額率は「繰下げた月数×0.7%」。繰下げ上限年齢の75歳まで繰下げた場合は84%アップするわけです。
※1941年(昭和16年)4月1日以前生まれの人の老齢基礎年金については「年単位」の増額率となっています。
1.1 増額率は生涯続く
厚生労働省が2022年12月に公表した「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の平均月額は14万3965円。仮にこの年金月額が84%増額された場合、26万4895円となります。
また、この増額率は生涯続きます。もちろん繰下げ受給を申請するには、年金受給開始までの生活資金を確保できることが前提になりますが、かなりおトク度が高い制度にも見えますね。
働き続けるシニアが増えるこんにち。長生き時代を見据えて繰下げ受給を検討される人は増えるかもしれません。
そこで知っておきたいのが、「繰下げ受給」の盲点です。年金を増やすことで生じるいくつかのデメリットを、次で詳しく見ていきます。