厚生労働省が2022年12月に公表した最新データによると、国民年金を含む厚生年金の平均受給額は14万3965円でした。

しかし、年金受給額には個人差が大きく、月平均で10万円未満という方も男性で約11%、女性で約47.9%存在します。

老後の生活を考えると、年金は少しでも多いほうが安心しますよね。

もし年金の見込額が月平均10万円であっても、「繰下げ受給」という制度を利用すると、最大で18万4000円にアップさせることが可能です。

具体的な増額率に合わせ、繰下げ受給のデメリットについて見ていきましょう。

【注目記事】【年金】みんな「厚生年金と国民年金」は本当は月いくらもらっているのか

1. 「繰下げ受給」とは

繰下げ受給とは、年金の受給を65歳よりも後に遅らせることで、年金額を増額できる制度のことです。

遅くに繰り下げることで、年金の額面は1月あたり0.7%増額できます。

1.1 繰下げ加算額

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出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」

出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」

繰下げ受給をした場合、下記の計算式で受給額が増額します。

  • 増額率 (最大84%※1) = 0.7% × 65歳に達した月※2から繰下げ申出月の前月までの月数※3

※1 昭和27年4月1日以前生まれの方(または平成29年3月31日以前に老齢基礎(厚生)年金を受け取る権利が発生している方)は、繰下げの上限年齢が70歳(権利が発生してから5年後)までとなりますので、増額率は最大で42%となります。

※2 年齢の計算は「年齢計算に関する法律」に基づいて行われ、65歳に達した日は、65歳の誕生日の前日になります。
(例)4月1日生まれの方が65歳に達した日は、誕生日の前日の3月31日となります。

※3 65歳以降に年金を受け取る権利が発生した場合は、年金を受け取る権利が発生した月から繰下げ申出月の前月までの月数で計算します。

1.2 繰下げ増額率の早見表

66歳0ヵ月~75歳まで繰下げた場合の増額率も早見表で確認します。

繰下げ増額率早見表2/3

繰下げ増額率早見表

出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」

  • 66歳0ヵ月:8.4%
  • 67歳0ヵ月:16.8%
  • 68歳0ヵ月:25.2%
  • 69歳0ヵ月:33.6%
  • 70歳0ヵ月:42%
  • 71歳0ヵ月:50.4%
  • 72歳0ヵ月:58.8%
  • 73歳0ヵ月:67.2%
  • 74歳0ヵ月:75.6%
  • 75歳0ヵ月:84%

これまでは最大70歳まで繰り下げることができましたが、2022年4月からは、繰下げ受給の可能年齢が75歳まで拡大されました。

もし75歳まで年金の受給を遅らせれば、84%も増額できるということです。

見込額が10万円しかなくても、10万8400円に増額できるとなれば、利用したいと考える方もいるのではないでしょうか。

2. 在職老齢年金制度と繰下げ受給の関係

75歳まで繰り下げる代わりに、働き続けることで収入源を確保する必要があります。

ここで確認したいのが、在職老齢年金との兼ね合いです。

在職老齢年金とは、厚生年金に加入して働きながら受け取る年金のことです。収入と年金の合計額に応じ、支給調整や停止となる場合があります。

65歳以降に厚生年金保険に加入していた期間がある場合、もしくは70歳以降に厚生年金保険の適用事業所に勤務していた期間がある場合は、支給停止されていた額を除いて繰下げ加算額を計算します。

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出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」

出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」

  • 平均支給率=月単位での支給率の合計÷繰下げ待機期間

繰下げ受給には、他にも注意したいことが8つあります。具体的に見ていきましょう。

3. 繰下げ受給の注意点8選

日本年金機構が注意喚起する「繰下げ受給の注意点」は次のとおりです。

  1. 加給年金額や振替加算額は増額の対象にならない。また、繰下げ待機期間(年金を受け取っていない期間)中は、加給年金額や振替加算を受け取ることができない。
  2. 65歳に達した時点で老齢基礎年金を受け取る権利がある場合、75歳に達した月を過ぎて請求を行っても増額率は増えない。
  3. 日本年金機構と共済組合等から複数の老齢厚生年金(退職共済年金)を受け取ることができる場合は、すべての老齢厚生年金について同時に繰下げ受給の請求をしなくてはいけない。
  4. 65歳の誕生日の前日から66歳の誕生日の前日までの間に、障害給付や遺族給付を受け取る権利があるときは、繰下げ受給の申出ができない。
    ※ただし、「障害基礎年金」または「旧国民年金法による障害年金」のみ受け取る権利のある方は、老齢厚生年金の繰下げ受給の申出ができる
  5. 66歳に達した日以降の繰下げ待機期間中に、他の公的年金の受給権(配偶者が死亡して遺族年金が発生した場合など)を得た場合には、その時点で増額率が固定されるため、年金の請求の手続きを遅らせても増額率は増えない。
  6. 厚生年金基金または企業年金連合会(基金等)から年金を受け取っている方が、老齢厚生年金の繰下げを希望する場合は、基金等の年金もあわせて繰下げとなる。
  7. このほか、年金生活者支援給付金、医療保険・介護保険等の自己負担や保険料、税金に影響する場合がある。
  8. 繰下げ請求は、遺族が代わって行うことはできない。繰下げ待機中に亡くなった場合で、遺族の方からの未支給年金の請求が可能な場合は、65歳時点の年金額で決定したうえで、過去分の年金額が一括して未支給年金として支払われる。ただし、請求した時点から5年以上前の年金は時効により受け取れなくなる。

年金を増額できるメリットは大きいものの、上記のリスクには十分注意する必要があります。

4. 「年金」に加えて「貯蓄」も重要

老後の不安対策として、年金受給額を上げることはとても有効です。

しかし、繰下げ受給を利用するには注意点もあることがわかりました。こうしたデメリットをカバーするには、健康であることや働き口があること、さらにある程度の貯蓄があることも重要です。

一時は「老後2000万円問題」なども話題となりましたが、必要となる金額は個人によって異なるでしょう。

年金の見込額、家族構成、居住地に大きく左右されるものです。

いずれにしてもまとまったお金が必要となりますが、預貯金だけでカバーするのは難しいかもしれません。

現役世代にとっては、目の前の家計のやりくりや教育費など、目先のお金の優先順位が高くなるからです。

先のお金であることを逆手にとり、資産運用にてじっくりお金を増やすというのも一つの選択肢になるでしょう。

最近ではiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)やつみたてNISAなどが話題になりますね。税金面でも優遇され、初心者でも始めやすいとされています。

ただし、それぞれには元本割れ等のリスクがあったり、掛け金の上限が設けられたりします。始める際にはメリットデメリットの検証が必須です。

5. 老後対策の検討を

老後対策の一環として、年金の繰下げ受給を解説しました。

受給まで待つことで「10万円を18万4000円」に増やすことも可能です。

ただし、繰下げ受給を利用するにはデメリットをカバーできる準備を備えていることが条件です。

貯蓄ももちろんですが、健康づくりもしっかり意識していきたいですね。

参考資料

太田 彩子