2022年12月10日にログミーFinance主催で行われた、第46回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナーの第1部・株式会社ディジタルメディアプロフェッショナルの講演の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社ディジタルメディアプロフェッショナル 代表取締役会長CEO 山本達夫 氏
株式会社ディジタルメディアプロフェッショナル 代表取締役社長COO 大澤剛 氏
元・ファンドマネージャー/元・ディーラー 坂本慎太郎(Bコミ) 氏
経済アナリスト/経営コンサルタント 増井麻里子 氏

第46回 個人投資家向けIRセミナー

大澤剛氏(以下、大澤):株式会社ディジタルメディアプロフェッショナル、代表取締役社長の大澤でございます。社名が少し長いため、社内外ともに「DMP」と呼んでいます。本日は当社のIRセミナーにご参加いただき、誠にありがとうございます。

Agenda

本日のアジェンダです。まず「DMPについて」として、当社の概要や強み、そして事業内容と具体的な取り組みなどを一部動画を交えてご説明します。その後、中期経営計画について簡単にお話しします。

会社概要

大澤:当社は、2002年7月に大学発のベンチャー企業として発足以来、グラフィックス技術を核とした事業を行ってきました。任天堂のゲーム機である「ニンテンドー3DS」に採用されるなど、高度なグラフィックス技術をベースに、コンピュータビジョン・ビジュアルコンピューティング、AIの分野において、3つのビジネスを展開しています。

1つ目はIPコアライセンス事業です。当社は半導体の設計ノウハウの中でも、3Dグラフィックスを描画する際に必要となる計算処理を行うグラフィックス半導体、いわゆるGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)の機能に特化したIPコア開発とライセンス販売を行っています。この事業には、AIに関連するIPやソフトウエア開発・販売も含まれています。

2つ目の製品事業では、アミューズメント市場向け画像処理半導体や、AI FPGAモジュールなどの製品開発や販売を行っています。

そして、3つ目のプロフェッショナルサービス事業は、お客さまの開発、または独自のご要望に対応する受託サービス事業です。

以上の3つの事業において、当社の強みの1つであるアルゴリズム・ソフトウエア、そしてハードウエアの統合的な開発を提供し、お客さまや社会の課題解決に貢献しています。このような一貫した開発体制を有するAI企業はそれほど多くないと自負しています。さらに、お客さまの製品、サービスにおける調査・企画から量産までの開発ライフサイクル全体にわたって付加価値を提供し、LTV(顧客生涯価値)の最大化を図っています。

連結従業員数は70名程度です。ベトナムの開発子会社を含め、世界各国から50名以上のエンジニア、リサーチャーが集まっています。

詳細についてはのちほどご説明しますが、ここでは「アルゴリズム・ソフトウエアからハードウエア、さらにエッジからクラウドに亘る一貫したAI/ビジュアルコンピューティングサービスを提供している」というキーワードを覚えていただければと思います。

DMP沿革とテクノロジーの進化

大澤:当社の沿革とテクノロジーの進化についてご説明します。5ページの図は、横軸が時間軸、縦軸がテクノロジーの幅を表しています。

2002年7月の創業以来、省電力、小型、高いグラフィックス性能を誇るグラフィックスIPの開発を行い、2010年には任天堂の「ニンテンドー3DS」に採用され、当社のIPが累計約8,000万台出荷したゲーム機に搭載されました。当時、任天堂の社長だった岩田さまからは、DMPのIPを採用した理由として、「消費電力と表現力のバランスが良いと思ったからです」と言っていただきました。

続いて、当社のグラフィックスIP技術を組み込んだアミューズメント市場向けの高性能グラフィックスLSIを開発しました。2016年には、創業以来蓄積してきたGPU技術をベースに、AI・ディープラーニングに対する知見を融合したソフトウエア、ハードウエア、サービスで構成されるプラットフォーム「ZIA」を開発し、AI分野に進出しました。こちらについては、現在もポートフォリオを拡張し続けています。

また、2014年にはエレクトロニクス商社のUKCホールディングス(現レスターホールディングス)と、2019年にはヤマハ発動機と業務資本提携を行いました。筆頭株主として、ヤマハ発動機に約10パーセント、レスターホールディングスに約9パーセントの株式を持っていただいており、良好な関係のもとで業務提携を進めています。

さらに2021年には、協働ロボット向け画像認識システム(ビジョンシステム)の開発販売を行っているCambrian社に少数株主として参加し、同社製品の日本における独占販売権をもち、代理店として販売を行っています。なお、Cambrian社は本社をアメリカに、開発拠点をイギリスに構えています。

DMPの強み - ドメイン最適化を可能にする技術

大澤:当社の強みについてお話しします。1点目は、AIとコンピュータビジョン、画像処理を組み合わせることで最適解を提供できることです。お客さまが抱える特定の課題のうち、現在のAIで解決できる部分は全体の3分の1程度で、残りの3分の2は画像処理等の従来技術を使わなければならず、これらを最適に組み合わせないとソリューションは作れません。

これを実現できるベンダーはグローバルベースでも非常に少なく、この部分において当社は大きなアドバンテージを持っています。

2点目は、アルゴリズム、ソフトウエア、ハードウエアのフルスタック開発が可能なことです。非常に難しいGPUという技術に取り組んできたことや、段階的に画像処理やAIを手がけてきた過程の中で、アルゴリズム、ソフトウエア、ハードウエアと一貫して開発できる体制を取ってきたことが非常に強いベースとなっています。

実際にお客さまからも、他社とは違い、AIについて当社に相談するとアルゴリズムからハードウエアの話まで一度で済むと評価されています。

そして3点目に、エッジとクラウドによるリアルタイム性と処理能力のバランスが挙げられます。当社は早い時期からエッジコンピューティングに取り組んできました。例えば、安全運転支援システムにおけるエッジ、つまり車とそれに設置されたドライブレコーダーと、クラウド、つまり「Amazon Web Services」のようなユーザーがインターネットを経由してアクセスするWebサービスの両方において、さまざまな機能を最適に配置できる仕組みを採用しています。

正面衝突や車線逸脱などの事故に直結する事象へのウォーニング機能など、リアルタイム性が求められるものはエッジ側で推論・処理します。一方、膨大な教師データ・画像データの学習やヒヤリハット事象の解析等の機能は処理量が非常に多くなるため、クラウド側で行うなど、アプリケーションに合わせ、適材適所で機能を分散しています。

4点目は、省電力、高性能システム開発を可能にする各種ハードウエアIPの開発技術や、最適化技術を有していることです。

このように、GPUの開発に裏付けられ、段階的に積み上げてきたAIや画像処理に関するフルスタックな技術を、幅広い製品やサービスを通じ、提供しています。それによって、お客さま、あるいは我々がターゲットとするドメインの最適化を実現できることが、当社の強みだと考えています。

この強みは、当社が長年培ってきた経験や知見をベースにしているため、サステナブルな、いわゆる持続可能な競争優位性になると考えています。

DMP注力分野

大澤:当社の注力分野についてお話しします。注力すべき分野とは、第1に今までお話しした当社の強みを活かすことができる分野です。

スライドに示している4分野は、一見するとそれぞれ異なる分野のように見えるかもしれませんが、実は基盤となる技術が共通しています。具体的には、スライド下部に記載している「GPU」「省電力IP」「コンピュータビジョン」「エッジ&クラウドコンピューティング」「AI」が該当します。

第2に、市場成長が期待できること、あるいは絶対的な市場規模を持つ分野であることが挙げられます。

そして第3には、労働人口減少や安全安心社会の実現といったシリアスな社会環境課題や、お客さまの課題の解決に貢献できる分野であることが挙げられます。

以上の3点を考慮し、現在はセーフティ分野、ロボティクス分野、アミューズメント分野、そして創業以来の事業であるデジタル機器向けIP分野に注力しています。

注力分野の市場動向

大澤:当社の注力分野である、ロボティクス、セーフティ・安全運転支援の関連市場、そして遊技機市場の動向についてお話しします。

まず、スライド左上にグラフで示した「ロボティックビークル」とは、室内や屋外で使用される、時速20km以下の低速で自律走行するロボットのことです。この市場は、年率37パーセントの成長が予測されています。

さらにスライド右上のグラフで示しているように、安全柵なしで人と作業を行う協働ロボットの国内市場についても、年率27パーセントの拡大が見込まれるなど、ロボティクス分野の市場は高い成長が期待できます。

また、スライド左下のグラフに示しているとおり、セーフティ・安全運転支援分野におけるAI/通信機能搭載ドライブレコーダーの市場も、年率30パーセントを超える拡大が期待できます。

さらに、スライド右下のグラフをご覧ください。遊技機市場もここ数年は減少傾向の下げ止まりがみられ、依然として100万台以上の大きな市場規模となっています。

セーフティ分野

大澤:ここからは、注力分野の概要とトピックス、動画などをご紹介します。まず、セーフティ分野では、エッジデバイスとしてドライブレコーダーを活用し、エッジからクラウドに亘るシームレスな安全運転支援システム開発のプラットフォームを提供しています。

また、ランニングロイヤリティやサブスクリプションサービス等のリカーリングビジネスにより、お客さまのニーズへ柔軟に対応しています。

エッジでは、リアルタイムでの車線逸脱、居眠り運転などの重大な危険事象の検出、事故防止に「ZIA SAFE」が活用されます。

また、クラウドでは「ZIA Cloud SAFE」がヒヤリハット事象を自動判別・蓄積し、法人車両の安全運転教育などに活用されます。こちらは、JVCケンウッド、デンソーテンなどのドライブレコーダーメーカーや住友三井オートサービスなどのサービスを提供するお客さま、保険業界などのお客さまへサービスを提供しています。

また、スライド中央下部にあるように、スマート街路灯のAIカメラや監視カメラをエッジデバイスとして、より広範なセーフティ領域であるスマートシティ分野や公共安全分野へ事業を拡張しています。このスマートシティ分野では、車の交通量や人の流れ・属性調査等への応用が考えられます。

また、公共安全分野では、電車内の危険・傷害行為として2021年に発生した京王線刺傷事件、いわゆる「京王線ジョーカー事件」がみなさまの記憶にも新しいかと思いますが、あのような公共交通機関での危険行為に対する検知・予知への応用が考えられます。

これらの分野におけるビジネスは、当社ではまだPoC(プルーフ・オブ・コンセプト)段階にあり、小規模となっています。しかし、自治体や道路管理者向けのデータ販売など、スケールすると非常におもしろいビジネスになると考えています。

DMP Robot Safety

大澤:「ZIA SAFE」の活用例として、デジタル安全柵である「DMPロボットセーフティ」の動画をご覧ください。協働ロボットが人間と同じスペースで作業する際、AIカメラにおいて、骨格から人間とロボットを判断し、干渉・接触を防止するシステムとなっています。ご覧のとおり、人間とロボットの距離が近づくと、ロボットの動きが止まったり遅くなったりします。

物理的な安全柵と比較して、デジタル安全柵は圧倒的なコストパフォーマンスを発揮することが可能だと考えています。

ロボティクス分野

大澤:ロボティクス分野ではロボットの自律走行に必要な自己位置推定と周辺地図作成を同時に行う「ZIA SLAM」を包含する認知・判断・操作に関わるシームレスな開発プラットフォームである「ZIA MOVE」を提供しています。

また、協働ロボット等のロボットアームの「目」となる「Cambrian ビジョンシステム」は、精度、速度、ピッキング対象の広範さ、外乱光環境下における安定性等の強みが評価され、自動車業界を中心に製造業での採用や高確度の商談が拡大しています。お客さまには、他社製品で認識できないものを認識し、ピッキングできると、ポジティブな驚きとともに受け入れられています。

さらに、「ZIA MOVE」で動く自律走行ロボットにロボットアームを装備した、先端的なAMR(Autonomous Mobile Robot)を開発しています。これらの技術・製品・サービスや、それを組み合わせたものを、業務資本提携関係にあるヤマハ発動機をはじめ、労働人口不足やハードな労働環境を課題とする製造業、物流業、建設業、そして農業等のお客さまへ提供しています。

DMP技術の結集 - 先端AMR

大澤:当社では、先端AMRは次世代ロボットの姿であると考えており、当社の技術を結集することにより、ロボットが「見る」「走る」「つかむ」といった動作を行います。「見る」には、DMPの画像処理技術のほか、カメラやAIの技術を利用します。また、「走る」は「ZIA MOVE」を、「つかむ」は「Cambrian ビジョンシステム」を用います。

現在、「つながる」についてはソフトバンクと協業し、このロボットの環境を5Gでネットワークにつなぎ、クラウドからいろいろなことができるように取り組みを進めています。このようなロボットをさらに「安全に」使うため、当社の「ZIA SAFE」のセーフティ技術を使っています。

また、スライド左下にある「再現する」にはDMPの3D技術を使います。最近、バズワードして使われている「デジタルツイン」のように、このようなロボットや、ロボットを含めた環境を仮想空間上に構築します。これにより、仮想空間上でロボットシステムの開発、テスト、検証、あるいは問題発生時の対処ができるシステムを構築していきたいと考えています。

先端AMRデモ

大澤:2022年10月26日から28日に開催された「名古屋ロボデックス展」の当社ブースにて、実際に動くモデルのデモンストレーションを行いました。そちらの映像をご覧ください。

ここでは「ZIA MOVE」を搭載したロボットが自律走行して目的地に向かいます。「Cambrian ビジョンシステム」を装備したロボットアームがその上に乗っており、トレイに置かれているものの中からボルトをピッキングしています。

こちらを当社とCambrian社、ソフトバンクの3社と、iRooBOという団体で作り上げています。これにより、製造業で付加価値を生まない部品搬送の完全自動化などをサポートします。

Cambrianビジョンシステム

大澤:「Cambrian ビジョンシステム」はピッキングロボットの目となるビジョンシステムで、当社が昨年から独占販売権を持って販売しています。

製造業は従来の大量生産型の生産ラインから、現在は少量多品種のフレキシブルな生産ライン、あるいはセル生産ラインにシフトしました。そこで協働ロボットと人が一緒に作業しながら、ロボットに関しては24時間稼働し、さまざまな作業をこなしています。

この分野ではヨーロッパ系のロボットメーカーが圧倒的に強く、ユニバーサルロボットというデンマークのロボットメーカーが世界シェアNo.1です。同社の、これまでコンピュータ制御で動いていたロボットのアームにカメラを装着することにより、複雑な作業を非常に効率良くハイスピードで行うことができるようになっていますが、このシステムを当社が提供しています。

現在、ユニバーサルロボット以外の主要ロボットメーカーや日本の主要ロボットメーカーへのインテグレーションも進めています。

この「Cambrian ビジョンシステム」の特徴は、まず非常に多様な部品に対応していることです。透明や黒色の部品、光沢のある金属など、幅広い種類の部品をストラクチャードライトなしで扱うことができます。これはおそらく、Cambrian社以外のシステムではなかなか難しい状況だと認識しています。

また、従来のものと比べて5分の1の、2日から3日でセットアップが可能になりました。購入後すぐに稼働できることは、ユーザーにとって非常に大きいメリットだと思っています。認識時間も非常に短いサイクルで、作業がこなせるようになります。

そして、さまざまな外乱光の影響を受けず、いろいろな条件下で安定して動くことができます。正確性という観点では、1ミリ以下の精度で部品を検出し、ピックアップすることが可能です。

対応できるタスクとしては、ばら積みピッキング、ケーブルやコネクターの挿入、部品のキッティング、アセンブリーや溶接、検査など、広範囲にわたります。

ここでは、時間の都合上、2つの動画をご覧いただきます。1つ目は、ばら積みピッキングで、透明な部品や表面が黒い部品など、通常ならば非常に扱いにくいものをピッキングしている映像です。さらに、ライトでランダムな光を当てているため、ビジョンシステムにとっては大迷惑な条件となっていますが、安定してピッキングが行えています。これは非常に大きな競争優位性だと考えています。

2つ目は、アセンブリー・組み立ての動画です。動画の左側は全景で、細かい部品をピッキングし、製品を組み立てています。動画の右側は、その一部を拡大したものです。非常に細かいアセンブリー作業を正確に行っていることがわかると思います。

アミューズメント分野

大澤:アミューズメント分野では、主にパチスロに使用されるリアルタイム3Dエンジンと、主にパチンコに使用される高性能高圧縮動画エンジンを業界に先駆けてワンチップ化したグラフィックス半導体「RS1」をバンダイナムコセブンズと共同開発し、サミーとユニバーサルエンターテインメントの合弁会社であるジーグやその他のお客さまに提供しています。

美しい映像表現の実現と遊技機の筐体コストの削減を両立させることで、遊技機ユーザー、遊技機メーカーに付加価値を提供しています。

12月8日にプレスリリースを出しましたが、「RS1」を搭載したジーグの筐体の販売は、10種類10万台を突破しました。ジーグの代表取締役社長の星野さまからは「『HAYABUSA-ZEEG(RS1)』を搭載した各種筐体を主力商品として積極的に拡販することで、新たなエンターテインメント体験の創出にさまざまな方々と一緒に取り組んでいきたい」とのコメントをいただいています。

また、バンダイナムコセブンズの代表取締役社長の金子さまからは、「エンターテインメント分野で蓄積してきた技術力、ノウハウやIPを『RS1/HAYABUSA』とつなぎ合わせることで、新たなエンターテインメントの創造に貢献していきたい」とのコメントをいただいています。

その他分野(デジタル機器)

大澤:その他の分野として、デジタル機器向けのAI/GPU IP事業についてお話しします。スライドに記載のゲーム機、デジタルカメラ、OA機器、テレビなどのお客さまのデジタル機器のアプリケーション、搭載SoCに最適な小サイズ、省電力、高性能なIPの提供を行っています。

お客さまとしては、ルネサンスエレクトロニクス、富士フイルム、オリンパスOMシステム、TVS REGZAなど、多くのメーカーに提供しています。

当社AI/GPU IPを搭載した、お客さまのデジタル機器の累計出荷数は1億5,000万台に到達しています。その半分強は、任天堂の「ニンテンドー3DS」向けですが、デジカメ、監視カメラ、OA機器、テレビ等への搭載は続いており、今期は新規採用、ライセンス更新などで前年同期を上回る好調を維持しています。

AIがTVの表現力に新時代を切り開く

大澤:当社のAI/IPが実際に使われている例を1つ、ご紹介します。当社の「ZIA DV720」が「レグザ」の4Kテレビに搭載され、今年5月に発売開始になっています。インターネット接続が当たり前になった4Kテレビにおいて、テレビの番組のみではなく、インターネット上のあらゆるコンテンツの再生にAIを使うことにより、さまざまな新しいことができるようになります。

スライド中央の左上の画像で示しているのは、シーンの遠近の判別によるフォーカスです。AIがコンテンツの中身を判断し、それに合わせて、例えばこの場合では人物側にフォーカスを当て、背景側のフォーカスをぼかすことで非常に遠近感のある画像を作り出しています。

左下の画像では、映っているコンテンツに合わせて肌の表現を変えています。4Kや8Kの大画面テレビの普及は、テレビに出演されているタレント・俳優には受難の時代とも言えますが、美肌効果が補完してくれるかもしれません。

右上の画像では、ネット上のコンテンツにおいて、ネットのスピードや帯域によってノイズが出たりしますが、AIが判断して、自動的に超解像という技術を使って画像をスムーズにしています。

右下の画像では、さまざまなノイズ低減を行っています。

以上のように、表示デバイスの表現力に新時代を切り開くため、当社のAI技術が活用されています。

『テカナリエ』という業界レポートに、Hisense社とTVS REGZA社が共同開発したテレビ用イメージプロセッサ「HV8107」に「ZIA DV720」が採用されているという記事が掲載されました。世界シェア首位級のHisense社のテレビを含め、搭載機種の拡大の機会もあり、大いに期待しているところです。

AIチップ開発加速のためのイノベーション推進事業に協力

大澤:「ZIA DV720」のトピックスを、もう1つご紹介します。NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)、産業技術総合研究所、東京大学が共同で進めている「AIチップ開発加速のためのイノベーション推進事業」は、日本のベンチャー企業や中小企業などが世界に伍して、AIチップを開発するにあたって大きな障壁となる、高価な設計環境の整備を産学官でサポートすることを目的とし、東京大学キャンパス内にAIチップ設計拠点を設置し、整備を進めているものです。

その活動の一環である「AIアクセラレータ開発のための評価プラットフォームの構築」に当社は協力しています。具体的には、この評価プラットフォームの実証チップである「AI-One」に「DV720」を搭載し、「AI-One」を実装した評価ボード上でのAIアプリケーションの動作を確認しています。

当社はこのプロジェクトに今後も協力するとともに、そこで得た知見や評価結果を、今後のAIプロセッサの開発やビジネスに活かしていきたいと考えています。

ステレオビジョンIP「ZIA SV」の販売を開始

大澤:11月にプレスリリースを行ったステレオビジョンIP「ZIA SV」についてです。当社の小型IPコア技術を結集し、ステレオカメラでの距離推定に必要な機能をAMDザイリンクスの「Kria K26 SOM(システム・オン・モジュール)」にハードウエアとして実装しています。そのため、他社と比較して小型、高性能、高精度を誇ります。

スライドの画像では、デプス値を色の濃淡で示しており、近くは赤から黄色で、遠くになるにつれて青色が深くなっています。他社に比べて低ノイズで、物体のエッジも鮮明なため、自律走行ロボットや協働ロボットの高精度な距離推定に最適なIPであり、ロボティクス分野のビジネス拡大に貢献してくれるものと考えています。

注力分野重点施策

大澤:当社の中期経営計画についてです。これまでお話ししてきた注力分野における重点施策をご説明します。セーフティ分野では、既存顧客の深耕、新規顧客の獲得によりビジネスを拡大していきます。

また、エンドユーザー車両にすでに搭載されている何十万台ものドライブレコーダーに、当社のソフトウエアを無線で実装するOTA(Over the Air)も活用することで、リカーリングビジネスを成長させることによって、売上とともに利益率を上げていくことに取り組みます。加えて、安全運転支援から、より広範なセーフティ分野への事業拡張も着実に進めていきます。以上をもって、安全安心社会の実現に貢献していきます。

ロボティクス分野では、自律走行に必要な自社技術の磨き込みとフォーカスを行うとともに、他社との協業、エコシステム構築を推進していきます。また、「Cambrian ビジョンシステム」の競争優位性を活かしたビジネスの拡大とともに、先ほどご覧いただいた先端AMRのように、自律運転、「ZIA MOVE」、ピッキングなど、技術・製品・サービスを組み合わせ、新しい価値を生み出していきたいと考えています。以上をもって、製造業や運輸業における省力化、省人化など社会・顧客課題の解決に貢献していきます。

アミューズメント分野では、半導体や部材の不足が機器の生産に一定の影響を与えているものの、ゲーム性が向上したパチスロ6.5号機、スマートパチスロ、スマートパチンコなどの市場機会に的確に対応しています。そして、当社のユニークな2D・3D統合チップの優位性を発揮できる市場セグメントにおけるシェア拡大、新規顧客参入を進めていきます。

AI/GPU IP分野では、先ほどご紹介した「ZIA 720」の性能をはるかに超える新しいプロセッサを開発しています。それを使った新分野でのライセンス拡大とともに、既存IPからの安定的なランニングロイヤリティを獲得していきます。

連結業績実績・見込

大澤:最後に、連結業績についてです。2023年3月期は、アミューズメント分野における顧客内シェアの増加や、新規顧客獲得に伴う売上拡大と注力分野の着実な刈り取りにより、黒字化を計画しています。

2024年3月期は、注力分野事業の拡大や高付加価値化に加え、製品事業の原価低減により、売上高は25億円超、経常利益は2億円を目指します。

また、当社は2002年7月の創業から20周年を迎えた今年を「第2の創業期」の始まりと位置付けています。創業以来積み上げてきた強みを活かし、社会にインパクトを与える技術やイノベーションを創出し、成長を加速していきます。どうぞご期待ください。

以上で、当社の個人投資家向けIRセミナーのご説明を終わります。ご清聴いただき、誠にありがとうございました。

質疑応答:グラフィックスIP技術について

坂本慎太郎氏(以下、坂本):本日、初めて御社のIRセミナーを見た方や、技術的で難しい話だと思っている方もいると思います。そこで、まずはスライド5ページで示している、グラフィックIP技術とはどのようなものか教えていただきたいと思います。

グラフィックLSIを搭載すると、どのような効果が発現するかということを含めて、教えてください。

山本達夫氏(以下、山本):スライド25ページの「IPコアとは」に沿ってご説明します。まず、IPとはどのようなものかと言いますと、Intellectual Propertyの略で、非常に広範囲のものを意味します。一方、当社のIPは、お客さまが製品を作る上で必要なハードウエアの機能を、当社が開発して提供するものになります。

スライドの左上に記載しているカメラやテレビの他にもスマートフォンなどがありますが、そのすべての中に、LSIという半導体が搭載されています。スライドには「システムLSIチップ」と記載していますが、このチップはさまざまな機能を持っています。

当社の場合はグラフィックス、つまり画像を作る部分の回路図を設計し、それを動かすための駆動ソフトウエアを含めてIPとしてお客さまに提供しています。それを、お客さまが自社のLSIの中に焼きつけてチップを作り、そのチップが最終的にセット・メーカーに提供され、セットの中に実装されていきます。

例えば、ゲーム機やカメラなどは、だいたい1台につき1つのシステムLSIが入っており、その中に我々のIPが使用されています。そのIPをライセンス提供した際のライセンス料や、出荷数量に応じたロイヤリティをいただくというのが、我々のビジネスモデルになっています。

山本:「グラフィックスを搭載することで何ができるか」については、スライドの26ページに記載しています。デジタルカメラでは、メニューやサムネイルなどを表示できます。また、プリンターでは、操作メニューやメンテナンス、印刷画像の表示などが可能で、テレビでは、いろいろなメニューやグラフィカルなコンテンツを表示できます。ゲーム機では、まさにゲームの画像そのものを作り出すということを行います。

当社はこのようなグラフィックス以外にも、AIのプロセッサーも同様にIPとして提供しており、今はそれらもカメラやテレビに積み込まれています。そのため、グラフィックスに加えて、いろいろな人工知能の処理をこのようなデバイス上で実現することが可能になっています。

質疑応答:ドメイン最適化を可能にする技術について

坂本:スライドの6ページについてです。御社の強みとして「ドメイン最適化を可能にする技術」という記載がありますが、どのような技術優位性があるのか教えてください。

山本:先ほどもお話ししたように、当社は強みとして、アルゴリズム、ソフトウエア、そして最終的なハードウエアの設計も行うことが可能です。そのため、それぞれのお客さまのドメイン、アプリケーションに最適なかたちでハードウエアを提供できます。

一般的な手法では、汎用的なものを使うことによって、サイズが限定されるほか、消費電力やコストが非常に高くつきます。

しかし、当社の場合は、設計し直してスリム化するなど、製品の性質に合わせていろいろな最適化を行うことが可能です。つまり、最終的には、お客さまがビジネスを行っているセグメントに対して最適なかたちで、製品やソリューションを提供することができます。

このように、アルゴリズム、ソフトウエア、ハードウエアの一貫した開発に取り組んでいることが、競争優位性につながっています。

質疑応答:エッジのデータ処理について

増井麻里子氏(以下、増井):スライド9ページの「エッジからクラウドに亘る」というところについてです。エッジは、そもそもクラウドにデータを送らずにデータを処理するもので、近くにサーバーが設置されているわけではないと思います。どこでどのようにデータを処理しているのでしょうか?

また、このビジネスに関して、ハード面ではなくソフト面で関わっているのかということも教えてください。

山本:まず、「エッジはどこで?」というお話については、例として、スライドの26ページの左上のカメラがあります。このカメラの中に、そのエッジコンピューティングの機能が入っており、カメラに映った画像をそのままユーザーに届けるのではなく、画像に何が映っているのかをAIが判断します。

例えば、画像に人物が映っている場合、その性別や年代などのいろいろな属性をAIが判断します。そして、我々はメタデータと呼んでいますが、画像ではなく「このようなものが映っている」というテキスト情報だけを送ります。それによる大きなメリットは、送るデータのサイズが非常に小さくなり、通信回線に対する負荷が減るということです。

また、極めて大きいのはプライバシーの問題です。メタデータを送る場合、もとの画像は出ていかず、実際に出ていくのは画像の属性のみとなりますので、プライバシーが保護される等、いろいろなメリットがあります。

後段の質問ですが、我々はクラウド側のソフトウエアの開発だけではなく、エッジ側のソフトウエアの開発や、そこで動いているハードウエアそのものの設計も行います。そのため、エッジとクラウドの連携については、ハードとソフトの両面で取り組んでいることになります。

質疑応答:リアルタイム3Dエンジンと高性能・高圧縮動画エンジンのワンチップ化にについて

坂本:スライドの15ページについてです。ワンチップ化における優位性や利点のようなものがあれば教えてください。

山本:スライド15ページの左側に記載の「RS1」が、今、当社が量産してお客さまに提供しているチップになります。提供先のアミューズメント業界には、パチンコとパチスロという2つの大きな分野がありますが、実はそれぞれ求めているものが違います。

パチスロは非常にゲーム性が強く、我々は「インタラクティブ」と呼んでいますが、お客さまが実際に入力した操作に基づいて、いろいろとストーリーが変わります。こちらはゲームの世界に近く、3Dグラフィックスという技術が使われます。当社はもともと任天堂のゲーム機等に技術を提供してきているため、そのような技術を持っています。

一方でパチンコは、いわゆる「YouTube」のような画像を連続して流すため、お客さまの能動的な操作によって変化を与えることはありません。そのため、単純な動画処理が求められています。

従来、アミューズメント業界では、パチスロに求められているインタラクティブな3Dのものと、パチンコで求められている動画のものというのは、別々のハードウエアで動いていました。そのため、パチンコとパチスロの両方を手掛けているお客さまは、それぞれ別のLSIやハードウエアを準備しなければなりませんでした。

しかし当社は、この3Dと動画の機能を1つのチップに入れることによって、お客さまはDMPのチップを1つ使えば、パチンコもパチスロも両方できるようになります。それにより、ハードウエアの開発費、コストや在庫管理などの面で、非常に大きなメリットがあります。これはまさに、我々のドメイン最適化の大変良い例の1つです。

この市場は「今伸びている」「今後伸びる」とはあまり言われていません。そのため、非常に大きな課題は、遊技人口が減っている中でいかにハードウエアのコストを下げるかということです。そのような課題に、まさに初めて解決策を提供できたことが、我々の非常に大きな競争優位性になっています。また、このようなマーケットの中では、高い付加価値を提供できていると考えています。

質疑応答:今後のセーフティ分野の拡大について

坂本:「今後、セーフティ分野はどのくらい拡大すると思っていますか? 市場規模のようなイメージがあれば教えてください」というご質問です。

大澤:先ほどお話ししたとおり、安全運転支援分野では、年率30パーセントくらいの伸びが期待できると考えています。ただし、AIや通信機能を持ったドライブレコーダーの数は、あくまでインストールベースです。つまり、これまで販売されたドライブレコーダーにも、OTA技術を活用しAI認識機能が搭載されるという意味で、市場は30パーセントくらい伸びそうだと我々は試算しています。

一方、より広範なセーフティ市場では、公共安全もしくはスマートシティのような分野があります。このあたりに関しては、非常にさまざまな市場データがあるため、明確にはお伝えできませんが、大きく伸びることが考えられます。そちらに向けて、先ほどお話ししたような、エッジからクラウドまでの技術を使い、さまざまなところにチャレンジしていきたいと思っています。

また、集めたデータを販売するというビジネスもあるため、そちらは我々だけでは実行できませんが、いろいろな座組みを考えながら伸ばしていきたいと考えています。

質疑応答:省電力化について

坂本:「DMPにおける省電力化は、どのくらいまで可能になると考えていますか?」というご質問です。かなり抽象的な内容のため、回答がなかなか難しいと思いますが、現状と「どのような課題を解決すれば、もう少し省電力化できるのか」などを含めて、教えてください。

山本:省電力化について、例えば、半導体では微細化によって、必然的に電力は下がっていきます。そのような中で、汎用的に作られる半導体に対して我々が最適化したものが、何倍くらい電力を下げることができるかが1つの指標になっています。

ゲーム機を例にご説明します。我々が設計した携帯ゲーム向けのグラフィックスは、従来あったものに対して、およそ30倍から100倍くらいの電力性能比、効率化を達成しています。電力性能比とは、同じことを行うためにどのくらいの電力を要するかを比べたものです。どの世代においても、だいたいそのくらいの比率で下げていくことが当社の目標になっています。

質疑応答:中国での製造や開発の有無について

坂本:「製造や開発の拠点を中国に置いていますか? もし拠点が中国にある場合、リスクについての認識を教えてください」というご質問です。

山本:中国ではありませんが、例えば「RS1」という半導体は、台湾のファウンドリで作っているため、そのような意味では、台湾の半導体が使われています。ただし、一般的な最先端製品のほとんどがすでにそのようになっており、そこに対する依存性はあります。

質疑応答:2021年3月期に従業員数が急増した理由について

坂本:「2021年3月期に、従業員が急激に増えた理由を教えてください」というご質問です。

大澤:2021年3月期は、ベトナムの開発拠点を子会社化したことによって、そちらの人員が伸びました。現在、ベトナムには20名強のエンジニアがいますが、その人たちが我々の連結従業員数として入ってきたことで増えたとご理解ください。

質疑応答:他社と比べた優位性と参入障壁ついて

坂本:「IPについて、他社と比べた優位性や市場への参入障壁はありますか? シェアが可能であれば教えてください」というご質問です。

おそらく、いろいろなもののシェアは難しいと思います。また、主な質問は優位性や参入障壁のところだと思います。それも製品によって異なるかもしれませんが、イメージがあれば教えてください。

山本:やはり我々のIPは、汎用的なものに比べて「最適化」というところが1つの大きな強みになっています。例えば、複雑なアルゴリズムをハードウエアで実行することによって、スピードを上げ、電力を下げるというところを非常に得意としています。これは、グラフィックスとAIのどちらにおいても、同様のアプローチを行っています。

参入障壁に関しては、この世界は競争がかなり激しく、例えばArm社は世界で1番のIPのベンダーです。それに対し、我々はより特定の分野に最適化したものを作るということで競争しています。つまり、彼らと同じ土俵で勝負するのではなく、そのようなドメインを1つの土俵にして勝負することによって、参入障壁を越えていこうと取り組んでいます。

質疑応答:特許の内容について

坂本:「特許を35件持っているということですが、どのようなものが多いのでしょうか?」というご質問です。

山本:主にグラフィックス関連で、3Dグラフィックスに関する特許が多くあります。

質疑応答:ベトナム以外にグループを増やす方向性について

坂本:「ベトナム以外の海外にも、御社のグループを増やしていく方向性はありますか?」というご質問です。

山本:我々の場合は、かなり最先端の技術であるため、AI等の人材が確保できる場所や、良質でコストの安い労働力を常に探している状況です。現状は、まだベトナム以外で決まったところはありません。

坂本:ベトナムは、最先端の技術を持つ方が多くいる国なのでしょうか?

山本:良い大学がありますし、技術者もかなり確保しやすい状況になっています。

質疑応答:社名の由来について

増井:「御社の社名の由来と、会社の方針について、もう一度ご説明してください」というご質問です。

山本:「ディジタルメディアプロフェッショナル」と少し長い社名ですが、「ディジタルメディア」は我々が取り組んでいる、いわゆる画像のことを表しています。その画像を作る技術のプロフェッショナル集団という意味で付けた名前になります。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:過去10年程なかなか利益が出ていない時期がありますが、その理由を教えてください。(外部委託が多い等の理由があるのでしょうか?)

回答:次世代アミューズメントLSIの開発費が先行し、赤字の続く時期もありましたが、2018年3月期以降に量産を開始し以後の業績に貢献しており、現在では当社の主力製品に成長しています。

<質問2>

質問:ソフトバンクとの協業部分は、ソフトバンクのどの技術が活かされているのでしょうか?

回答:2022年10月開催の「名古屋ロボデックス展」においてデモンストレーションを行った当社の先端AMRは、ソフトバンクの5G技術を活用したAMRや「Cambrianビジョンシステム」の自律運転、操作が可能です。ローカル5Gは製造業との親和性が高いため、本分野におけるソフトバンクとの協業を今後も進めていきたいと考えています。

<質問3>

質問:孫さんが投資しているArm社との取引や協業はありますか?

回答:現在、Arm社との取引及び協業はありません。

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