2. 繰上げ受給をする際の注意点
繰上げ受給の注意点は主に6点です。
- 原則として、老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰上げする必要がある
- 繰上げ請求をすると、繰上げする期間により年金額が減額される
- 繰上げ受給の請求後にできないことがある
- 繰上げ請求した年金以外に減額されるものがある
- 遺族年金を受給中の方は年金の選択が必要
- 繰上げ請求した日以降は各種権利がなくなる
特に受給額が減額される点については注意しましょう。
2.1. 到達年齢ごとの減額率一覧と計算式
【減額の計算式】
減額率 0.4% × 65歳になるまでの月数
※昭和37年4月1日以前生まれの方は0.5%減額
例えば、老齢基礎年金を75万円もらえる方が、60歳0ヶ月で繰上げ受給した場合、24.0%の減額のため、本来の75万円 × 76.0%で57万円の受取額となります。
繰上げ受給をすると一生涯、減額された年金額を受け取ることになります。
2.2. 繰上げした後にできないことがある
繰上げ受給をすると、後から以下のことができなくなります。この点にも注意しましょう。
- 繰上げ請求した日の翌月分から支給され、一度請求してしまうと取り消しができない
- 繰上げ請求後の国民年金の任意加入や、保険料の追納ができない
2.3. 繰上げ請求した年金以外に減額されるものがある
厚生年金や国民年金以外にも、繰上げ受給をすることにより連動して減額される年金があります。
- 厚生年金基金から支給される年金
- 65歳になるまで、雇用保険の基本手当や高年齢雇用継続給付が支給される場合は、厚生年金の一部または全部が支給停止になる
- 厚生年金に加入した場合や国会議員や地方議員になった場合、給与などの額によって、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止になる
2.4. 遺族年金を受給中の方は、年金の選択が必要
生計を維持する親族が亡くなったときに受給できる遺族年金。こちらを受給している場合、繰上げ請求した老齢年金は、65歳になるまで、遺族厚生年金や遺族共済年金と併給することができず、いずれかの年金を請求することになります。
2.5. 繰上げ請求した日以降は、下記の権利がなくなる
- 国民年金の寡婦年金は支給されず、寡婦年金を受け取っている方は、寡婦年金の権利がなくなります。
- 事後重症など障害厚生年金や障害厚生年金を請求することができません。
- 厚生年金の長期加入者や障害者の特例措置を受けることができなくなります。
- 該当する方は少ないのですが、老齢厚生年金や退職共済年金を受給中の方が繰上げ請求をすると、この年金の定額部分をもらえる方は、定額部分が支給停止となります。