首位を快走する広島カープ、ファンはお好み焼き屋で勝利の美酒に酔う?
3月末にプロ野球が開幕してから早2カ月半が過ぎました。セントラル・リーグでは連覇を狙う広島カープが首位を快走しており(6月11日現在)、昨年の優勝がフロック(fluke:まぐれ)ではないことを証明しています。
ここ数年は“カープ女子”と称される女性ファンも急増しており、昔からのファンを含め、勝利の美酒に酔う日が続いていることでしょう。同じセ・リーグでは、創設以来初の13連敗を喫した球団のファンである筆者には、まさしく、羨ましいの一言です。
勝利の美酒に酔うカープファンの多くが集う場所は、やはり、お好み焼き屋ではないでしょうか。広島と聞くと、牡蠣と同じくらい、いや、それ以上に有名な食べ物がお好み焼きです。
広島風お好み焼きの独特な美味しさは、一度食べたら癖になる人も多いはずです。
広島風お好み焼きの特徴とは
広島風お好み焼きは、小麦粉を水で溶いたものを薄く伸ばして焼いた生地の上に、キャベツなど野菜や肉、海鮮具材(海老、イカなど)を重ねてひっくり返し、そこに麺(中華ソバ、うどん)を加えて生地でふたをして「蒸し焼き」にするのが特徴です。
特に、麺類を入れるお好み焼きは、他の地方ではなかなか見ることができないのではないでしょうか。
そして、その焼き上がったお好み焼きの上にトッピングで牡蠣などを乗せ、ソースとマヨネーズを好みの量をかけて食べるのが“スペシャル・グレード”のようです。なお、広島県内では麺類の代わりにモヤシを入れるケースもあるようです。
広島市内を歩くと、街の至る所にお好み焼き屋(鉄板焼き屋を含む)を見つけることができます。仙台市内の牛タン焼き店、高松市内の讃岐うどん店などと同じ感覚と言えばイメージしやすいでしょうか?
オタフクソースのHPでお好み焼き屋の店舗数を見てみよう
しかしながら、こうしたお好み焼き屋は、全国レベルで見る限り必ずしも広島カープのように好調とは言えないようです。
大手ソース会社の1つで、お好み焼き用ソースではトップシェアを誇ると推察されるオタフクソース株式会社のホームページを見ると、国内のお好み焼き屋の店舗数の推移が掲載されています。そのデータを見てみましょう。
ただし、この店舗数の対象は、「お好み焼き・焼きそば・たこ焼き店」となっていますので、お好み焼きを扱っていない店も含まれます。ただ、多くの店は、この3つのうち2つ以上をメニューに掲載していると考えられるため、“お好み焼き屋”の実態を表していると見ていいでしょう。
なお、これらデータの出所は総務省統計局が行う「経済センサス 基礎調査」になっています。
厳しい減少トレンドが続くお好み焼き屋の店舗数
お好み焼き屋の店舗数は、平成18年:18,739店、平成21年:19,480店、平成24年:17,192店、平成26年:16,551店となっています(各年末)。
毎年調査が行われているわけではないこと、最新のデータが平成26年であることなどを勘案する必要がありますが、平成21年をピークに減少が続いていると見てよさそうです。
直近の店舗数は、ピーク推定の平成21年から約▲15%減です。5年間で▲15%減はかなり厳しい減少ですが、新規開店の店舗が一定数あることを考慮すると、この数字以上の店舗が閉店していると推測できます。
どうやら、お好み焼き業界は広島カープではなく、13連敗した球団に似ているようです。
意外に大きい初期投資とランニングコスト、売上減少は経営を直撃
減少の理由は様々あると思われますが、お好み焼き屋は鉄板や空調設備など初期投資が意外に大きく、店舗賃貸料に加えてガス・電気代などランニングコストも嵩むと言われています。
また、輸入に頼らざるを得ない小麦粉などは、円安時に価格上昇となり易いのが特徴です。
そのため、売上高が一度パタッと落ちると、こうしたコスト負担が一気に重くなり、店舗継続が難しくなる可能性は高いかもしれません。確かに、外食を控える節約志向の高まりに加え、リーマンショック、東日本大震災、消費増税などの売上減少をもたらす要因は数多くありました。
それでも高いプレゼンスを誇る広島県のお好み焼き
さて、そのような厳しい状況に置かれたお好み焼き業界ですが、広島県は大健闘しています。
広島県もピークから▲6%減となっていますが、全国平均(▲15%減)や関西地方の大幅減少(大阪府が▲17%減、兵庫県が▲19%減)に比べると小幅に止まっています。しかも、平成24年比では微増に転じた数少ない都道府県の1つです。
さらに、人口10,000人当たりの店舗数では堂々の全国トップを維持しています。厳しい環境下でも、広島のソウルフードであるお好み焼きは、その存在感を高めていると言えましょう。
なぜでしょうか? それを知るためには、兎にも角にも、広島風お好み焼きを食べてみることです。もし、可能ならば、熱いカープファンがいる広島でぜひ。
LIMO編集部